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「アナと雪の女王」ハンス王子役の津田英佑が見据える“目的地”

中西正男芸能記者
30年以上キャリアを積み重ね、今の思いを語る津田英佑さん

 映画「アナと雪の女王」のハンス王子役で一世を風靡した俳優・声優の津田英佑さん(53)。7月3日から大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演されるミュージカル「ロミオ&ジュリエット」にもロレンス神父役で出演します。役者として幅広く存在感を示し続ける津田さんですが、見据える“目的地”とは。

「アナと雪の女王」からの学び

 この仕事をして30年以上経ったので、ありがたいことに数多の作品に出していただきました。もちろん全て大切ですし、一つ一つに全力投球しているのですが、その中でも大きかったのが「アナと雪の女王」だったとは考えています。

 ミュージカルがお好きな方が、自分が出た舞台を見て感想をくださる。アニメ好きな方が、声優として出た作品を見て感想をくださる。

 当然、どちらもありがたいんですけど「アナと雪の女王」の場合は特定のジャンルが好きな方だけでなく、広く一般の方が見てくださいました。なので、とにかく「見ました」と言ってくださる母数がけた違いで、そこに驚きました。

 ちょうどYouTubeなど動画を配信するサービスが広まっていった時期とも合致していて、僕が歌っていた曲を皆さんがそれぞれ歌って動画をアップされる。そんな流れも加わって、本当に多くの反響をいただきました。

 ただ、そこに至る過程からも、改めて学びを得たというか、仕事で大切なことを再認識する機会にもなりました。

 全ては積み重ねで、たまたま「アナと雪の女王」という作品にたどり着いたのではない。その前からディズニー作品の声優のお仕事をいただき、一つ一つ思いを込めてやらせていただいていたら、その先にあったのが「アナと雪の女王」。一つ一つお仕事で結果を重ねていく。それが実績になり、信頼につながり、思いもよらない大きなお仕事につながる。

 文字にすると普通に見えることかもしれませんけど、本当にそれしかないんだなと。自分のことながら、そこを痛感する流れでした。全てに文脈があり、いきなり何かがポンと来ることはない。ただただそう思います。

 積み重ねて信頼を得ていく。あと、この年齢になってくると、そこで考えるのが「役のどこかに自分を入れる」ということなんです。

 その役になり切ることも大切なんですけど、ただただ役になりきるだけだったら、究極的には誰がやっても同じになってしまう。ただ、実際には津田英佑がやっているわけですから、そこに少し津田英佑を入れる。

 変に我を出すということではなく、リアルな自分を入れるというか、今生きている自分を入れないと命を吹き込んだことにならないんんだろうなと。

 特に声の仕事だと、セリフが浮き上がってこないんです。「この作品に、この人あり」という部分を出さないと、自分がやる意味がない。これも最近になって思ってきたことなんです。

 言ってしまえば、どこまでいってもお芝居はウソなんです。僕はハンス王子でもないし、ロレンス神父でもないし、アメリカ人でもない。

 でも、そこに何かしらの真実、自分の本当の部分を入れることによって、初めて役が生きる。若い頃からその考え方自体は聞いてきたんですけど、30年経って、その意味を噛みしめています。

肩書にとらわれない自分

 役者の仕事ももちろん大変ですし、難しいところがたくさんあります。ただ、声の場合はさらに繊細というか、当たり前ですけど声しか材料がないので、全ての要素をピタッとリアルに合わせないと映像から声が剥がれてしまうんです。

 声の仕事をやり始めた頃、ここの難しさに直面して愕然とするくらい悩みもしました。でも、それがあったからこそ役者の仕事で伸びたところも確実にあったし、両方やっているからこそ、今の自分がいるんだと思っています。

 なので、自分の肩書的に、役者なのか、声優なのか、はたまたミュージカル俳優なのか。それを一言で表すのは難しくもあるんですよね。

 ただね、日本ではどうしても肩書を聞きたがるんです(笑)。そのほうが分かりやすいというのも理解できるんですよ。でも、これが本当に難しいので、向こうの都合が良いようにお任せすることもありますけど、なかなかしっくりいかないのも事実です。

 結局は、細かい肩書を求められない存在。そこに自分が行くしかないんだとも思うんですけどね。

 今さら福山雅治さんに「福山さんは歌手ですかね?もしくは役者?あるいはラジオパーソナリティーですかね?」と聞くこともない。そういった領域にこちらが行くしか、この問題は解決できないんだとも思います。ものすごくハードルが高いですけど(笑)。

 でも、まだまだ先かもしれませんけど、その領域があるのは事実。なので、そこに近づけるよう、自分として積み重ねを続けていければと思っています。

(撮影・中西正男)

■津田英佑(つだ・えいすけ)

1970年10月27日生まれ。東京都出身。山口馬木也、宮原奨伍、イルファらを擁するSHIN ENTERTAINMENT所属。身長174センチ。92年、ミュージカル「大草原の小さな家」でデビュー。俳優のみならず声優としても活動し、映画「アナと雪の女王」でのハンス王子役、映画「劇場版テニスの王子様 英国式庭球城決戦!」での柳生比呂士役で注目を集める。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月3日~15日)にロレンス神父役で出演。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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