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都会にもたくさんいる身近な「うんこ芸術家」、ツツジコブハムシ(ツツジムシクソ=虫糞=ハムシ)

天野和利時事通信社・昆虫記者
ツツジコブハムシ成虫(左)と糞の家から顔を出した幼虫。

 コブハムシの仲間は、ムシクソ(虫糞)ハムシとも呼ばれる。成虫の姿がイモムシの糞(ふん)そっくりだからだ。鳥の糞に擬態する虫は多いが、イモムシの糞に擬態する虫は、ムシクソぐらいかもしれない。そんなあだ名を付けられたら、人間なら憤慨するだろうが、ムシクソの仲間は、案外その名を誇りに思っているかもしれない。

 なにせ、ムシクソの仲間は、卵の時には母親の糞に包まれ、幼虫の時には自分の糞で作った家の中で暮らしているのだ。

 本家「ムシクソハムシ」は、クヌギ、コナラなど大木になる木にいるが、本家にそっくりのツツジコブハムシ(ツツジムシクソハムシ)は、昆虫記者の職場に近い東京・銀座や築地のツツジ、サツキの植え込みにもたくさんいる。超身近な「うんこ芸術作家」なのだ。興味のある人(ほぼ皆無と思われるが)は、是非探してみよう(探していると変な人と思われることもあるので要注意。昆虫記者も経験あり)。

ツツジのつぼみの横にいるのが、ツツジコブハムシ成虫。まるでイモムシの糞。
ツツジのつぼみの横にいるのが、ツツジコブハムシ成虫。まるでイモムシの糞。

ツツジコブハムシ幼虫の糞の家は、段階的に拡張されていく。
ツツジコブハムシ幼虫の糞の家は、段階的に拡張されていく。

交尾中のツツジコブハムシのカップル。イモムシの糞が2つつながったようにしか見えない。
交尾中のツツジコブハムシのカップル。イモムシの糞が2つつながったようにしか見えない。

 ◆糞で作った家の住み心地は?

 糞で作られたムシクソの仲間の幼虫の家は、なかなか見事な芸術作品だ。母親の糞の中で孵化した幼虫は、すぐに自分で糞の家を増改築する。英国の近衛兵の帽子のような形の糞の家は居心地がいいようで、幼虫はヤドカリのように住み替えることはなく、ずっとこの家を背負って移動しながら葉を食べ進む。幼虫がじっとしている時は、この糞の家もイモムシの糞のように見える。

 体が大きくなって、家が狭くなると、幼虫は自分の糞を使って段階的に家を拡張していくので、糞の家にはきれいな縞模様ができることもある。糞の家を出た成虫も、糞にこだわり続け、またもイモムシの糞に擬態するのだ。

きれいな縞模様が入ったツツジコブハムシ幼虫の糞の家。中で蛹になっているかもしれない。
きれいな縞模様が入ったツツジコブハムシ幼虫の糞の家。中で蛹になっているかもしれない。

糞で包んだ卵を産んでいるツツジコブハムシ成虫。
糞で包んだ卵を産んでいるツツジコブハムシ成虫。

 糞尽くしの一生を送るコブハムシの仲間は、よほど糞まみれの生活が気に入っているのだろう。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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