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粛清の嵐が吹くか!? 金総書記が現地視察で怒りを爆発!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
李順哲国家建設監督相(別枠写真)と朴勲副総理(朝鮮中央放送から筆者キャプチャー)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記が地方視察でまたまた怒りを爆発させた。

 朝鮮中央通信の報道によると、金総書記は7月11日から12日にかけて平壌を離れ、最北部の両江道の三池淵市を視察していた。

 金総書記の地方視察は2月7日の江原道金化郡視察以来約5か月ぶりで、三池淵市の視察は2021年11月以来2年8か月ぶりのことである。

 金総書記は三池淵では新たに建てられた観光ホテルなどを見て回ったが、「発展する時代の要求に根本的に反して古くて立ち後れた基準でいい加減に施工した」と酷評し、「(建設監督機関は)深刻な欠陥を竣工検査でそのまま通過させて運営単位に引き渡す無責任な行為を働いた」として現場の責任者らを批判していた。

 金総書記は「建設監督機関は党中央と政府の要求と指示、警告を聞き流した」ばかりか「国家建設監督省の責任幹部という者が最も重視されている三池淵市の公共施設の竣工検査に一切関与しなかった」と憤慨し、「思想的弛緩と職務怠慢がどの程度に至ったのかがよく分かる」と、名指して叱責していた。

 槍玉に挙げられたのは李順哲(リ・スンチョル)国家建設監督相(大臣)と前副相(副大臣)の2人で、金総書記は「李順哲は竣工検査が始まった昨年12月から現在までたった一度も三池淵市に出かけず現地指揮部の活動家だけに放任した」と叱り飛ばし、また前副相についても「この者も現地に居座って無責任な態度で無為徒食した」と罵倒していた。

 そのうえで「彼らは国家と人民に奉仕しようとする観点が全くなく、国家公務員としての初歩的な道徳や資格もないけしからぬ連中である」と断じ、「両人の権利を停止させ、直ちに法機関に引き渡して調査せよ」と命じていた。

 建設畑を歩んできた李順哲氏は2015年8月に北部鉄道改修工事で偉勲を立てたことで金総書記から表彰され、昨年9月に大臣に任命され、年末には党中央委員候補に補選されるなど国家建設を率いる優秀なテクノクラートであった。

 金総書記に叱責され、処罰の対象にされたのは何も国家建設監督相と副相の2人だけではない。

 金総書記はこの件との関連で「建設部門政治グループの責任者を務めている党中央委員会組織指導部の副部長を降職させること」と「建設全般を指導すべき職責上の任務遂行を怠った副総理と国家設計期間の責任幹部らの事業能力も必ず再検討すせよ」と指示し、これら幹部も連座して責任を取らせるよう現地指導に随行していた党政治局常務委員の金徳訓(キム・ドクフン)総理や趙甬元(チョ・ヨンウォン)党組織指導部部長らに厳命していた。

 降職を命じられた組織指導部の副部長は不明だが、副総理については今年3月25日に平壌の人民文化宮殿で行われた朝鮮建築家同盟創立70周年の式典に李順哲氏と共に出席していた朴勲(パク・フン)副総理の可能性が高い。

 朴副総理は2017年まで建設建材工業相だった。副総理に起用されたのは2021年からで、この時に李順哲氏よりもワンランクうえの党中央委員に選出されていた。

 今後、どのような処分が下されるか定かではないが、金総書記が現地視察で怒り狂ったのは昨年8月以来のことである。

 台風6号による豪雨と津波で日本海に面した江原道の安辺郡梧渓里で堤防が破壊し、農地に冠水被害を被ったことを知った金総書記は現地に乗り込み「水害被害を受けたのはこの地域の農業指導機関と党組織が国家的措置に鈍感で、いかなる対策も立てなかったからである」と、この時も現場の幹部らを激しく責め立てていた。

 確か、この時も「なぜ内閣と省、中央機関の責任活動家らが現場に顔を出さなかったのか分からない。内閣総理は傍観的な態度で現場を一度や二度見て回って帰り、副総理を派遣するのにとどまり、現場に出向いた副総理という者は燃油供給員の役しかせず、主人として工事を直接指揮すべき干拓地建設局長は自分は何もする事がないので帰ると党委員会に提起し、批判を受けてからもほとんど企業所の事務室に居ながら無為徒食し、排水門工事用として国家から供給された多くの燃油を別に取っておいてひそかに隠匿する行為まで働いた。本当になっていない連中らだ」と憤慨し、「党中央(金総書記を指す)の呼び掛けに呼吸を合わせることを知らない政治的未熟児、警鐘を受け止めることを知らない知的障害児、人民の生命・財産の安全に顔を背ける官僚の輩、党と革命に対して担った責務に不誠実な者らを絶対に許すことができない」と毒突いていた。

 驚いたことにNo.2の金徳訓総理を直接名指して批判し「内閣総理の無責任な活動態度と思想観点を党的に深く検討する必要がある」と、査問を示唆する発言まで行っていた。

 また、金総書記が「内閣が指令を下すことしか知らない指令部署、通報部署のようになったのは国家経済事業と経済機関に対する党政策的および党的指導を受け持った党中央委員会の責任も大きい」と発言していたことから処罰リストには当然、労働党の書紀、部長、副部長ら担当幹部らも相当数含まれるものと予想されていた。

 誰もが、金総理と行動を共にしていた朱哲圭(チュ・チョルギュ)副総理や李鉄万(リ・チョルマン)党農業部長、それに平安南道の金頭日(キム・ドイル)党書記と南浦市の李在南(リ・ジェナム)党書記の首も飛ぶのではないかとみていたが、結果は金頭日書記だけが更迭され、その他の人物は全員健在だった。

 今回は、タガを締めるためにも、また見せしめのためにも最低でも2~3人は粛清するのではないだろうか。

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ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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