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子どもは新型コロナワクチンを接種した方が良い? 接種するメリットとデメリット

忽那賢志感染症専門医
(写真:ロイター/アフロ)

新学期が始まることで学校内での新型コロナ感染拡大が懸念されています。

現在、日本国内では12歳以上であればワクチン接種は可能ですが、中学生や高校生はワクチン接種した方が良いのでしょうか?

小児は成人と比べて重症化しにくい

年齢ごとの重症化する割合と、30代と比較した場合の各年代の重症化率(厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識)
年齢ごとの重症化する割合と、30代と比較した場合の各年代の重症化率(厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識)

子どもは大人と比べて重症化しにくいことも分かっています。

厚生労働省の発表資料によれば子どもの重症化リスクは、30代を基準とすると、10歳未満は重症化リスクは0.5倍、10代は0.2倍とされます。

ただし、成人と比べて明らかに重症化はしにくいものの、重症化しないわけではありません。

日本国内では20歳未満の新型コロナ感染者で亡くなった方はいませんが、より感染者の規模が大きいアメリカでは0〜17歳の新型コロナ患者122万例のうち178例(0.014%)が亡くなっています。

また、

・肥満

・遺伝性疾患

・神経障害

・遺伝性代謝障害

・鎌状赤血球症

・先天性心疾患

・糖尿病

・慢性腎臓病

・慢性肺疾患

・悪性腫瘍や免疫抑制薬による免疫抑制状態

Coronavirus disease 2019 (COVID-19): Clinical manifestations and diagnosis in children(UpToDate)より

などの持病のある子どもでは重症化リスクが高いとされており、特に注意が必要です。

もちろん持病のない子どもであっても感染しないに越したことはありません。

感染すれば発症から最低10日は自宅療養が必要になりますし、大人よりも頻度は低いものの子どもでも後遺症に悩まされることはあります。

また稀ではありますが、小学校高学年〜高校生くらいの年齢では新型コロナから回復した後に川崎病の病態に似た多系統炎症性症候群(MIS-C)という重症の病態が見られることがあります。

子どもがワクチン接種をする意義は周りに広げにくくなること

このように、子ども自身にとってはワクチン接種する意義は大人と比べて相対的に低いと言えます。

では他に子どもが接種する意義にはどのようなものがあるのでしょうか。

最大の意義は、周りに感染を広げにくくなることでしょう。

当初、mRNAワクチンは「発症を防ぐ」のであって感染そのものを防ぐかどうかは分かっていない、と言われていましたが、感染を防ぐ効果も分かってきました。

感染しにくくなるということは、接種者がその周りの人に感染を広げる可能性が低くなります。

分かりやすく忽那家の例で考えてみましょう。

私には中学生の娘が2人いますが、特に持病があるわけでもないので、感染したとしても学校を休む必要はありますが、重症化する可能性はかなり低いです。

2人の娘が接種するメリットは、男性で高血圧の持病を持ち肥満でもある(最近ちょっとやせました)私が感染して重症化するのを防ぐという意義があるわけです。

持病のない子どもにとっては、接種する自身よりも利他的な意義が大きいということを子どもにも理解してもらった上で接種を検討しなければなりません。

まあ私がコロナに感染して死んだら娘たちも困るわけですから、そういう意味では回り回って自身のためと言えなくもないかもしれません。

実際のワクチン接種の効果と副反応については、12歳から15歳への新型コロナワクチン接種の第3相試験では、ワクチンの発症予防効果は非常に高い一方で、成人と同程度にだるさや発熱などの副反応がみられたと報告されています。

さらに、ワクチン接種後の心筋炎や心膜炎が報告されていますが、10代・20代の特に男性で頻度が高い(100万人当たり41人)ことが分かっています。

子どものワクチン接種は、周りの大人が接種していることが前提

というわけで、子どもが新型コロナワクチンの接種を検討する場合、その周りの大人がワクチン接種を完了していることが前提となります。

海外でもデルタ株が広がって以降に学校の教室内でのクラスター事例が報告されていますが、この事例はときどきマスクを外していた教師が発端となって、生徒12人に感染が広がったというものです。

デルタ株が広がり子どもが感染しやすくなったと言えど、今も「子ども→子ども」「子ども→大人」への感染よりも「大人→子ども」への感染の方が起こりやすいことは変わりありません。

学校の再開に当たっての感染リスクを考慮した場合、子どもよりもまずは先に学校職員など子どもに接する大人のワクチン接種を優先すべきでしょう。

その上で、接種するメリットとデメリットを子ども自身とその親が十分理解した上で接種を検討するようにしましょう。

参考:日本小児科学会「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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