暑い夜のお供に!赤ワインの色香に見惚れる「みくまり ぶだう」で大人の魅力漂う葡萄の涼菓
和菓子の魅力のひとつに、菓銘に使用される日本語の美しい響きがあると私は思っています。聞きなれない言葉でも、いざ意味を調べてみると良く知っている言葉を言い換えたものだったり、全く知らない言葉や方言だったり。職人さん達の知見の深さを知り、より和菓子を好きになっていく私。
さて、そんな日本語のひとつとして例に挙げたいのが「みくまり」です。皆さんぜひキーボートで変換してみてください。おそらくすぐに「水分」とでてくるはずです。
え?水分(すいぶん)のこと?と思うかもしれませんが、実はこちらは地形を示す言葉なんです。地図上で山脈から流れてきた一本の川が別れ、そこからそれぞれ別な河川の名前になっているところをみたことはありませんか?みくまりのことを分水嶺ともいうのですが、こちらを検索してみると日本海と太平洋の境目の石碑などがでてきます。水資源に恵まれた国だからこその言葉かもしれませんね。
今回はそんな日本語の美しい響きを銘に宿した仙太郎さんの涼菓「みくまり ぶだう」をご紹介。
どっしりとした青竹の容器は、きちんと整えられており見た目や食べる方の手元への配慮をも感じられます。若々しい竹の青さと、どこか優雅で妖艶葡萄ゼリーの取り合わせに惹かれるのは私だけでしょうか。
口に入れた瞬間の、ほろり。とした食感。ゼリーではなく寒天なので、もしかしたら馴染みの少ない方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろこの味わいにはこの食感があってこそ。というのも、口の中でゼリーが割れる瞬間にふんわりと花咲く大輪の花のような芳しい葡萄の香り。そしてひんやりとした甘味。その甘味の中には、凝縮された赤ワインの旨味が閉じ込められているので、さっぱりしているのに充実感のある奥行きも感じられます。おそらくそれは、しっかりと最後に存在感を出す赤ワインならではの馥郁たる芳香。
いくら大人の方におすめといえども、お菓子ですので甘みはほしころ。こちらのお菓子は、葡萄と赤ワインならではの甘酸っぱさと大人っぽさ双方を兼ね備えた素晴らしいバランスの寒天ゼリー。食べてしまうのが惜しくなるほどの美味しさでした。
立秋を過ぎ、ショーウィンドウや雑誌には秋物のお洋服が姿を現し始めるまさに今の季節に相応しい涼菓です。
ほんのり色づいてきた木々や草花に縁取られたみくまりを思い浮かべながら、残暑を乗り切ろうと思います。