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統一教会の実態を徹底的に暴く~教団との35年の闘い。ジャーナリスト、弁護士が集った圧巻のシンポジウム

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影

「統一教会の実態を徹底的に暴く」~統一教会との闘い――35年、そしてこれから(旬報社)の刊行記念として、12月2日、ジャーナリストの佐高信氏、井筒大輔弁護士をコーディネーターとして、山口広弁護士、鈴木エイト氏、郷路征記弁護士、川井康雄弁護士らによる、緊急シンポジウムが行われました。

弁護士、ジャーナリスト、宗教2世、政治家、一堂にかいしての集まりは圧巻であり、これまでにないものとなりました。

統一教会と35年間、先頭にたって戦ってきた弁護士

佐高信氏から「統一教会問題の空白の30年といわれますが、まさに統一教会と35年間、先頭にたって闘ってきた、山口広先生から口火を切って頂きます」との紹介があり、会合は始まりました。

「1987年から霊感商法の問題に取り組んできまして、今のように注目される事態になるとは、思っていませんでした。しかも長年、希望していた統一教会の献金行為に対する実効性のある新法ができるかもしれない状況です。しかし与党の法案をみると、重大な問題があって、新法ができてもあまり役にたたないものになりかねず、事態は非常に切迫しています。来週には(国会で)結論が出るという緊迫した情勢のなかで、今日の会合が設定されたことは、時期的に重要なものとなりました」と山口広弁護士は話します。

「統一教会は単なる宗教法人ではなく、様々な舞台を持っている特殊な集合体です。献金などの資金を集める事業を行い、霊感商法を行う会社組織をもっており、様々な政治家につながる舞台を持っている。ワシントンタイムズという新聞社もあり、共和党に影響を与えています。それらを統括しているのが、文鮮明であり、統一教会です」

そうしたなかで、「100億、300億円といった、文鮮明から信者らに与えられる数字は、どこかの社長が話すようなスローガンとは違い、絶対に実現しなければならない神の言葉であり、ノルマです。そのために信者らは死ぬ気で頑張る」と指摘します。

また、信者らは死んだら、霊界で霊人体となって永遠に暮らすことや、自分自身が罪にまみれた人間であるとの意識も植え付けられている点をあげながら「その結果、先祖らは殺傷因縁、財産、色情因縁を抱え地獄で苦しんでいて(地上の私たちに)救いを求めており、その救済として自分のもっている1000万円を神のもとに捧げなければならないといわれます。また霊界の人たちを救うために、目の前の人から1000万を献金させることは、その人を救うことにもつながると、信じこまされて行動させられています」

そのうえで「統一教会は総合的に悪質な団体である」と指摘します。

首相官邸が統一教会と何かしらの取引をしていた形跡があり、取材スタート

続いて、教団の問題にかかわって20年になる鈴木エイト氏は「路上での偽装勧誘をみかけたのをきっかけに、阻止活動を始めたのがきっかけ」と話します。

「政治と統一教会との癒着を追及し始めたのは、2013年参議院選挙からです。安倍晋三氏、当時の菅義偉官房長官との統一教会との裏取引や、首相官邸が統一教会と何かしらの取引をしていた形跡があって、それを追い続けて今に至ります。しかしながら当時、それを雑誌に書いても反響がなく、世の中に広がらなかった。2000年代半ばまでは統一教会の問題をマスコミも取り上げていたけれども、その後、取り上げなくなっていた。政治家もまた統一教会と関係と持っていても大したことはないと高をくくっていた」

昨年の安倍さんのビデオメッセージに関しても、同じだと指摘します。

「ビデオメッセージを公開されても、自分の政治生命に何も関係がないと思っていた。まさにその通りで、この件について、取り上げたのは赤旗やマイナーな雑誌だけで、一般紙は取りあげなかった。しかし、そうした中で被害が見逃されてきた。今も安倍さんとの関係について明らかになっていない。ビデオメッセージの際には、莫大な謝礼が払われていると思われるが、それも取り上げられていない」

そして、マスコミの政治家への追及が疎かになっていて「このまま幕引きになる」ことへの懸念も訴えます。

違法な教化手法を使う教団と35年間、闘ってきた

郷路征記弁護士は「統一教会は、半年から1年の長い時間をかけて教化します。そこでは、信教の自由という自主的な判断で宗教を選択することができる権利が侵害されている。その違法な手法を使う教団と35年間戦ってきた」と話し、教団の行う教化システムの悪質性、違法性についての説明をします。

「(教団を)やめて相談に来られる方の話を聞く中で、正体を隠した伝道で勧誘をされて、神やメシヤを信じさせられて、その結果、統一教会を信じることになっている。信じさせるまでに、時間をかけてじっくりと、その人の意識や考え方を変えていく。さらに(伝道などの)実践をさせて、自己研鑽しなくてはと思わせる。正体隠しの伝道を通じて、文鮮明を再臨主として受け入れる方法をシステム化した」それが今の高額献金などの問題につながっているとする。

「こうした統一教会の教えとして信じさせる手口が解明されてきた。それが35年の闘いの成果の一つ」といいます。

救済法の「配慮義務」これを禁止行為にするべき

全国霊感商法対策弁護士連絡会の事務局長である川井康雄弁護士からは、今回の政府法案の問題点などの話がありました。

「寄付は被害の一側面に過ぎない。信仰がその人の人生に大きな価値観を与える。教団の正体を隠して、宗教教義を本人に埋め込む。いつの間にか信教の自由が侵害されている。その結果、信者になってしまう。この「正体を隠した伝道」の問題を言い続けてきた。しかし、今回、寄付に限定されてしまっている」ここに大枠としての問題があるといいます。

次に指摘したのは、救済法案の第4条です。

「寄付の勧誘に際し、不当勧誘行為で寄付者を困惑させることの禁止を謳い、寄付の意思表示の取り消しができるとされています。しかしここにある、『不退去』などの困惑類型では、信者らはすでに(教義を)植え付けられての使命感などから、喜んでお金を出している。(困惑類型だけの)規制では足りない。もっとマインドコントロールという内心に着目するべき。そうした主張を我々がするなかで、政府案ではその規制に踏み込みました。そこで、第3条には寄付の勧誘を行うに当たっての配慮義務を掲げています」

①自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないようにする。

②寄付者やその配偶者・親族の生活維持を困難にすることがないようにする。

③勧誘する法人等を明らかにし、寄付される財産の使途を誤認させるおそれがないようにする。

「この3つは重要です。確かに近づいてきている。しかし、いまだこれは配慮義務となっていて、これを禁止行為に入れてほしい」この点についての問題点も訴えます。

その他の弁護士からも様々な重要な問題点なども指摘されています。それについては、改めてお伝えできればと思います。

一番、聴衆の頷きが多かった宗教2世からの話

旧統一教会の宗教2世である、もるすこちゃん・田村さん・デビルさん(いずれも仮名・活動名)からも話がありました。そのなかで、献金のために、母親に闇金を紹介した教団信者の存在や、家庭連合ではなく天の父母様聖会に名称を変えてきている現状など、宗教2世からの赤裸々な話は、かなり聴衆の心に響いていたようで、頷きとメモが一番、多かったように感じています。

最後に、立憲民主党の山井議員からも、今後の法案審議の流れについての説明がありました。

「今週火曜日(6日)から衆議院本会議で審議入りして、政府与党は4~5日で審議を終えて、12月10日に土曜日の会期内に成立させようと考えている。それに対して野党からは、衆議院で30時間の審議をしてください。必要があれば、その問題のある団体への視察や調査も行ってくださいと、じっくりと審議をしましょうとの提案をしました。主役は被害者の方です。本当の意味で救済できる法案になるように全力で取り組みたい」

野党側の内容をどれだけ、与党が反映させるのか、いまだ平行線であり、まさに時間との戦いになっています。

20年経って、山口弁護士とともに闘った裁判がよもや一助になるとは

シンポジウムの途中で、筆者も元信者としての立場から、少しだけ話をさせて頂く機会を頂きました。

「山口広先生は、統一教会と35年間闘ってこられました。その一部になりますが、私自身も原告の一人として1999年に教団に対して『違法伝道訴訟』を起こしました。その時、私を担当して頂いたのが山口広先生になります」

この裁判での焦点は、正体を隠して伝道されたことで、その結果、合同結婚式にまで参加させられることになったというところです。

「違法性を問うこの裁判は、2002年に東京地方裁判所で勝訴判決を得て、2004年には最高裁にて判決が確定しました。当時、振り上げた拳が、地裁の勝訴判決から20年経って、今の状況の一助になるとは、よもや思いませんでした」

また自分が教団を辞めて、詐欺や悪質商法のジャーナリストとして活動して現場に潜入取材するなかで、驚いたことも話しました。

「教団内で(お金集めや伝道に)使われている手口が、まさに悪質商法で使われていたダマしの手口と同じだったことです。どれだけ教団が悪質な手法を使っているのかを実感した瞬間でもありました」

筆者は統一教会の問題を30年以上、内と外から見てきていおり、いかに弁護士先生の力によって、元信者らが支えられてきたかを知っています。その歩みの上に、ようやく、救済法案が成立しようとしています。法律というものが、被害者を救う、もう一つの支えになろうとしています。しかし、決して誰も救えないようなものにしてはなりません。

山上徹也容疑者による安倍首相の銃撃事件もそうですが、二度と多額の献金被害による悲しい事件が起こらないようにするためにも、国民全体の目で、この法案の議論の行方をしっかりと見つめていく必要があります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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