捨てられる豆腐をどうすれば減らせるか
10月2日は、語呂合わせで「豆腐の日」(10=とお、2=ふ)ということをご存知だろうか。スーパーマーケットの見切り販売のワゴンでは、豆腐や油揚げ、納豆など、大豆製品が入っていることが多く、割引シールを貼っても、売れ残ってしまっていることも多い。消費期限や賞味期限が来れば、捨てられてしまう。どうすれば、豆腐の廃棄を減らせるのだろうか。
気象データを活用し年間ロスを30%削減できた相模屋食料
画期的な一つの取り組みとして、日本気象協会とタッグを組んだ相模屋食料(群馬県前橋市)が挙げられる。大豆を水に浸けてから豆腐が出来上がるまでは2日間かかる上、豆腐の売上は天候に左右されやすい。そこで、日本気象協会のデータを活用し、夏は「寄せ豆腐指数」、冬は「焼き豆腐指数」といったオリジナルの指標を設定した。
夏は、前日との気温差が大きいほど体感温度で「暑くなった」と感じやすく、寄せ豆腐が売れやすい。もちろん、販売を左右する要素は天候だけでなく、スーパーが入れる折り込みチラシや曜日もあるが、年間のロスが30%削減されることになった。さらに小売業者とも取り組みを進めており、需要予測の誤差が軽減し、ロス削減率が以前よりも上がってきている。
多めに製造する背景にある「欠品ペナルティ」
相模屋食料と日本気象協会のロス削減は理想的な事例だが、すべての豆腐製造業者がこれを実践できるわけではないだろう。スーパーやコンビニなどの小売側は、製造業者に対して、欠品による「販売機会ロス」の損失を防ぐため、欠品ペナルティ(欠品粗利補償金)の制度を設けていることがある。
参考記事
食品ロスを生み出す「欠品ペナルティ」は必要? 商売の原点を大切にするスーパーの事例
この「欠品ペナルティ」があると、製造業者としては、今後の販売契約を失わないため、競合メーカーに販売機会を取られないため、欠品を防止するための製造数を確保するということになりやすい。「売り切れ御免」というわけには、なかなかいかない。
食品ロスになりやすい「日配品(にっぱいひん)」
農林水産省や食品関連事業者の調査(出典:農林水産省食料産業局 平成29年4月発表資料)によると、いわゆる「日配品(にっぱいひん)」と言われる日持ちしにくい食品の廃棄は、年間あたり25,200トン(101億円)と多い。調査対象となった、豆腐を含む、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、パン、洋菓子類、ハム・ソーセージ、魚肉加工品などの廃棄量は6,500トン(25億円)、小売店での廃棄は18,000トン(76億円)。そのうち、メーカーでの豆腐の廃棄率は0.4%、小売店での廃棄率は0.75%である。スーパーで、どのようなものが見切り販売されやすいかを見てみると、やはり、これら「日配品」が多い。これらを減らすため、賞味期限の延長や、3分の1ルールの納品期限の緩和(3分の1ルールの納品期限とは=賞味期間全体のうち、最初の3分の1の期間を納品期限とし、それを過ぎると小売が納品を拒否するというルール)、新商品の発注数量をメーカーと小売が早めに共有すること、日にち単位でなく週単位で発注して効率化をはかることなどの削減対策がなされている。実際、前述の相模屋食料も、製造方法を工夫することで、賞味期限を15日間まで延長することを実現できている。
食品ロス削減の要(かなめ)とは
食品製造業や小売業では、2012年(平成24年度)に始まった食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチームにより、前述のような検討や改善がじわじわと進められてきている。では、われわれ消費者としてできることは何だろう。無理のない範囲で、割引となっている豆腐を買うこともそうだが、買ってきた豆腐を、だめにしないで冷蔵庫で保管しておく方法がある。買ってきた豆腐を長持ちさせるには、豆腐を浸けておく水を毎日取り替えてきれいに保っておくとよい。保存容器に移し替え、毎日、水を取り替えるだけでもずいぶん違ってくる。
食品ロスを減らすことに取り組んでいると、結局は、「面倒くさいと思えることを面倒がらずにやる」「ひと手間加える」ことがロス削減につながるように感じる。効率化することは、ロスを増やすことにもつながる。言うはやすし、おこなうは難しだが、家計を助ける上でも、できるところから始めたい。