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「捕手のランニング本塁打」はポストシーズン史上初だが、この選手が記録したのは偶然ではない!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
J.T.リアルミュート(左)とトラビス・ダーノー Oct 15, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ディビジョン・シリーズの第4戦に、J.T.リアルミュート(フィラデルフィア・フィリーズ)は、ランニング本塁打を記録した。3回裏に打ち返したボールは、センターのフェンス下部に当たり、右へ跳ねていった。その間に、リアルミュートはベースを一周した。

 リアルミュートは捕手だ。この試合を含め、ポストシーズンの6試合とも「3番・捕手」として先発出場。フィリーズの守備イニングでマスクをかぶっているのは、リアルミュートだけだ。

 ポストシーズンのランニング本塁打は、ベースボール・リファレンスによると、リアルミュートの前に16人が記録しているが、捕手による一打はなかった。ちなみに、16本目は、2017年のディビジョン・シリーズ第4戦にラファエル・デバース(ボストン・レッドソックス)が打った。デバースは三塁手だ。

 ランニング本塁打には、偶然という要素が絡む。すべてではないかもしれないが、ほぼすべてがそうだ。リアルミュートの場合も、打球の跳ね返った方向が違っていれば、二塁打か三塁打になっていた可能性もある。

 ただ、捕手ではポストシーズン史上初のランニング本塁打を記録したのがリアルミュートだったことは、偶然とは言いきれない。今シーズン、リアルミュートは、22本のホームランを打ち、21盗塁を決めた。主に捕手として出場して20-20を達成したのは、他には、1999年に35本塁打と25盗塁のイバン・ロドリゲスしかいない。

 ちなみに、23年前のロドリゲスは盗塁死12度、今シーズンのリアルミュートは1度だ。10月3日に二盗を試みて刺されるまでは、成功率100%だった。また、シーズン最後の3盗塁は、9月30日のダブルヘッダー1試合目に決めている。1試合3盗塁だ。

 もちろん、と言うべきか、リアルミュートは、過去にもランニング本塁打を記録している。2015年9月8日と2017年8月24日だ。2本目の球場は、今回と同じシチズンズバンク・パークだが、マイアミ・マーリンズ時代の1本目はマーリンズ・パーク(現ローンデポ・パーク)だった。

 なお、フィリーズは、ディビジョン・シリーズ第4戦に勝ち、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ進出を決めた。リアルミュートのランニング本塁打は、2点差に縮められたリードを3点差に戻した。

 このディビジョン・シリーズ第4戦については、こちらでも書いた。

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ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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