オートバイのあれこれ『ありそうで無かったアイデア・油冷エンジン!』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『ありそうで無かったアイデア・油冷エンジン!』をテーマにお話ししようと思います。
1970年代から80年代にかけ、日本のバイクメーカーは急成長を遂げるなか様々な技術を生み出してきました。
とくに当時は日本メーカー同士においても開発競争が熾烈で、各社はオリジナリティ・独自性を打ち出そうと「発明」とも言えそうなユニークな技術開発に傾倒していました。
そのユニークな技術の一つが、スズキが編み出した油冷エンジンでしょう。
オートバイ(やクルマ)のエンジンといえば、基本的に空気で排熱する空冷エンジンか、冷却水で排熱する水冷エンジンのどちらかになりますが、スズキは第三の冷却方式としてエンジンオイルを使い排熱する油冷を考案。
もともとエンジンに入っているオイルを活用するので、水冷エンジンのように水路もラジエターも要らず、油冷エンジンは空冷エンジン並のコンパクトさを保つことができました。
またその一方、エンジンオイルの循環経路の途中にエンジンヘッド周りへオイルを噴射するノズルを設け、これによって空冷エンジン以上の冷却性能を持たせることも達成します。
油冷エンジンは、水冷式のような冷却性能の高さと、空冷式のような軽量コンパクトさを兼ね備えたパワーユニットだったのです。
そして、それを搭載して登場したのが『GSX-R750』でした。
GSX-R750は「日本のバイク史上、初の大型スーパースポーツ」ともいえるディテールが特徴で、フルパワー100ps以上を発揮しながら、車重が乾燥重量で179kgと、当時の他の大型バイクより2割ほども軽くなっていました。
もちろんこの軽さには、油冷エンジンのコンパクトさが大きく貢献しています。
当時、大型バイクは“どっしり乗る”どちらかというとツアラーっぽいモデルが大半でしたが、スズキはGSX-R750へ250ccや400ccクラスのモデルにも引けを取らない運動性を与えることに成功したのでした。
そしてGSX-R750は、その大型車らしからぬ軽いボディを武器にレースシーンを席巻。
初めて出場したル・マン24時間耐久レースや全日本ロードレースなどでチャンピオンを獲得し、一躍時代を代表するオートバイとなりました。
GSX-R750は「市販の大型バイクでも、こんなに軽快に走れるんだ!」と、世のバイクファンたちに新たな気づきを与えた1台だったといえるでしょう。