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【動画アリ】NYショーに登場した、スバル新型フォレスターは何が新しいのか?

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

 3月28日(日本時間3月29日)にニューヨークショーで発表されたスバルの新型フォレスターが様々な話題を呼んでいる。フォレスターはスバルの中では世界全体で見てもっとも売れている人気ナンバー1モデル。そのモデルの5代目にあたる新型が、スバルにとっての最大市場であるアメリカの、しかもスバル・ユーザーが多い東海岸で発表されたこともあって、プレスカンファレンスはかなりの人混みとなるほどだった。

 実際、フォレスターはこの10年間における、スバルの北米での急成長のきっかけとなったモデル。2008年のリーマンショックからの10年で、スバルの北米販売は2008年の約18万台から、2017年の約64万台へと、実に3倍以上の急成長を果たした。そんな時代の始まりともいえた2008年に、3代目となるフォレスターがアメリカに投入されたのだった。

 3代目フォレスターは、アメリカのユーザーにフィットするようボディサイズを拡大するなどした結果受け入れられ、その後他のモデルとともに同社の成長を牽引。そして4代目ではスバルでもっとも売れる車種へと成長を果たしたのだ。

 それだけに5代目となる今回の新型に対する期待は大きい。そしてスバルもこれに応えるべく、スバルの新世代アーキテクチャであるスバル・グローバル・プラットフォーム(以下SGP)を採用した第3弾モデルとして、このモデルを送り出したのだ。SGPは、2016年のインプレッサで初めて用い、2017年のXVを経て、今回フォレスターに採用された。この結果、ボディサイズは全長4625×全幅1815×全高1730(ルーフレールで1715)mmと、ひとまわり拡大された。そしてクラストップの快適性と安全性を両立したという。 

 今回のデザインは、スバルがここ数年展開している、ダイナミック&ソリッドというデザイン・テーマを具現化した最新版である。基本的には先代のイメージを受け継ぎつつ、よりたくましさや機能性の高さが表現される。特に写真のフォレスター・スポーツでは、ボディの下回りやルーフレールなどにオレンジの差し色を用いて、これまで以上にフォレスターのアクティブなキャラクターを印象付ける演出が図られた。

 一方インテリアでは、インプレッサやXVで展開されるダッシュボード中央に大きな画面を据えたタイプを継承しながらも、よりSUVらしい骨太な感覚と、スイッチ類の機能的な配置がなされる。またフォレスター・スポーツでは、エアコンの吹き出し口やシフトレバー周りにオレンジの差し色を配した。

 メカニズムでトピックは搭載される2.5L水平対向4気筒エンジンが直噴化されたこと。これまでの2.5Lから部品を約90%刷新した上に直噴化されたことで、環境性能を向上させつつも動力性能の向上も図ったものとなっている。

 またスバル初となる乗員認識技術を用いた「ドライバーモニタリングシステム」を備えたこともトピック。これはドライバーの運転状況などをクルマの側で判断する機構で、ダッシュボード上に備えたモニターがドライバーを常に監視する。そしてドライバーが居眠りや脇見などをした際に、注意を促すことで安全運転をサポートする。また顔認識技術を用いているため、誰が乗車したかを判別してシートポジション、ドアミラー角度、空調設定を自動調整する機能で5人分が登録できるという。さらにこのシステムは今後、アイサイトとの連携を視野に入れた発展性も考えられているという。

 今回のフォレスターにおけるトピックはザッとこんな具合。2.5Lの新直噴エンジンやドライバーモニタリングシステムは新しいが、その一方でデザインに関しては既にウェブ上で意見が分かれている。

 デザイン的には先代との共通性を感じさせるキープコンセプトであるため、見た目の新しさに関しては、「保守的」と感じる人も少なくない。しかし一方で、よく見るとやはり新型は「あらゆる部分で進化している」と感じる人に分かれている状況だ。実は今回のデザインは、ここがキモともいえる。

確かに大枠でみると、先代との共通性を感じるものがあるものの、じっくりと見ていくと先代とは比べものにならないほど、ディテールは煮詰められており、確かにたくましさや機能性を感じる仕上がりとなっている。具体的には、車の内側から外に向かって筋肉が浮き上がるような感覚がある。これが新世代のスバル・デザインの特徴でもある。

 また2.5Lの新直噴エンジンが自然吸気式であることを受け、ターボの消滅を嘆く声がある一方で、既に日本の販売店では新型に関するアナウンスが流れており、ここに2.0Lのマイルドハイブリッドが加わるという話がチラホラと聞こえているようで、こちらに対する噂も盛り上がっているようだ。

 そしてここから察するに、発表こそ最大市場のアメリカで行われたものの、市場投入は生まれ故郷の日本が一番となる可能性が濃厚である。つまりそう遠くない時期に日本で発表されることは間違いないだろう。

 ウェブを始め、様々な話が聞こえてくる新型フォレスターだが、筆者としては今回SGPを採用したことがフォレスターを大きく変化させているだろうと予測する。というのもSGPを採用したインプレッサ、XVともに、その走りや品質は大きく向上した。それからすると、このフォレスターは、さらに上をいくものになっていると考えておかしくない。すると見た目や搭載エンジンの云々もあるが、実はその走りは激変しているのではないか? と想像できるし、この点こそが先代との差を目に見えるもの以上に大きく変わっている部分と考えられる。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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