全米ヒットだけではない。オスカーに向けた賞レースでも「ゴジラ」が思わぬ躍進?
12月に入り、アカデミー賞に向けて数々の映画賞のノミネート、結果が発表され始めたが、思わぬ作品のタイトルが目にとびこんできた。『ゴジラ-1.0』だ。
同作が12/1の北米公開以来、大ヒットを続けている事実は、日本のニュースでもたびたび取り上げられてきたが、作品のジャンルや内容を考えれば、あくまでも商業的な“ヒット作”という印象。年間の賞レースとは無縁だと思われていたが、12/13(現地時間)に発表された放送映画批評家協会賞(クリティックス・チョイス・アワード=CCA)の外国語映画部門に『ゴジラ-1.0』はノミネート入りを果たしたのである。
同賞は今年度で29回の歴史を誇り、北米のジャーナリストや映画評論家を中心とした組織の投票によって決まる(筆者も投票するメンバーである)。今回のノミネートがなぜ意外かといえば、『ゴジラ』に関しては、賞の投票者に対するキャンペーンがほとんど行われていなかったから。最終目標であるアカデミー賞の栄誉にあずかるためには、そこへ行くまでの各映画賞の結果が重要になる。その結果をアカデミー会員も参考にするからだ。
それゆえに、映画のスタジオや賞のキャンペーンを担当する会社は、アカデミー会員はもちろん、他の賞の投票者にも向けて、何度も試写を行ったり、記者会見を開くなど、様々なキャンペーンを続ける。しかし『ゴジラ』に関してその動きはほとんどなく、しかも公開からまだそんなに時間が経っていないにもかかわらず、今回のCCAにノミネートされている。つまりアメリカのジャーナリストや批評家の評価が、われわれが思っている以上に高いということ。
他の賞も含め、外国語映画賞部門に『ゴジラ』のようなアクション娯楽作が入ることは極めて希なケースでもあり、その点もちょっと意外。
また今年は、外国語映画部門には秀作がじつに多く、「狭き門」でもあった。そこに『ゴジラ』が入ってきたのも、大きなサプライズだった。
ちなみに今年度のCCAの外国語映画部門ノミネート6作は以下のとおり。
『Anatomy of a Fall』(フランス)
『ゴジラ-1.0』(日本)
『PERFECT DAYS』(日本)
『雪山の絆』(スペイン)
『ポトフ 美食家と料理人』(フランス)
『The Zone of Interest』(イギリス/アメリカ)
『ゴジラ』と『雪山の絆』以外は、カンヌやヴェネチアといった国際映画祭で受賞した、ざっくり言えば“芸術系”の作品が並んでいる。いかにも賞レース的なラインナップであり、なおさら『ゴジラ』の存在感が際立つ。
そして日本から『PERFECT DAYS』も含めて2作ノミネートというのも快挙である。
CCAの少し前に発表されたゴールデングローブ賞ノミネートでは、同じ賞に当たる非英語作品賞の6本は以下のとおり。
『Anatomy of a Fall』(フランス)
『枯れ葉』(フィンランド)
『Io Capitano』(イタリア)
『PAST LIVES』(アメリカ)※韓国語がメイン
『雪山の絆』(スペイン)
『The Zone of Interest』(イギリス/アメリカ)
こちらでは残念ながら日本作品は入らなかった。この2つの賞のノミネートと映画祭の評価から、『Anatomy of a Fall』と『The Zone of Interest』が、やや抜きん出ている印象はあるが……。
では、この勢いで『ゴジラ』はアカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートの可能性があるのでは? 残念ながら、その資格はない。というのも同部門は各国から1本の作品という応募制で、今年の日本代表は『PERFECT DAYS』に決まっているから。
ただし、このCCAのノミネートのように、賞レースでも『ゴジラ』が認知されたことで、アカデミー賞の技術部門、つまり音響賞や視覚効果賞ではノミネートの可能性が高まりつつあるのも事実だろう。
CCAでは長編アニメーション賞に『君たちはどう生きるか』もノミネートされた。CCAの授賞式は2024年の1月14日(現地時間)。『ゴジラ-1.0』『PERFECT DAYS』『君たちはどう生きるか』が受賞なるか、日本の映画ファンも見守ってほしい。
CCAのノミネート一覧はこちら(英語)