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コロナ禍で最も有効だった感染対策はどれか 複数の新型コロナの研究を解析

倉原優呼吸器内科医
(提供:Hisa_Nishiya/イメージマート)

どの感染対策が最も有効か

新型コロナに対しては、複数の感染対策が合わせ技一本で効果を発揮することが分かっていて、①新型コロナワクチン接種②個々の感染対策(手洗いなどの手指衛生、マスク着用、ソーシャルディスタンス・「3密回避」)③社会的な接触制限(自粛要請・緊急事態宣言・ロックダウンなど)が相加・相乗的に作用します。現在このすべてをうまく舵取りできている国の1つが日本です。

新型コロナを減少させる公衆衛生対策の有効性を検証した研究が、BMJというトップジャーナルに掲載されています(1)。72件の研究が比較対象に組み入れられ、35件は個々の感染対策について、37件は複数の公衆衛生対策として評価されました。

「ぼくのかんがえた、さいきょうのコロナたいさく」のような、研究者個人の見解が存分に反映されたような研究は、質が低いと判断され、こういう解析には組み込まれません。

解析の結果、新型コロナの発生率に対して、マスクの着用が53%減少、ソーシャルディスタンスが25%減少という効果をもたらすことが分かりました。統計学的に有意ではありませんでしたが、手洗いも有効と考えられました。意外とマスク着用の効果は大きいのですね。

ただ、結果にばらつきがあり、ロックダウンなどのような大規模な政策に関しては解析できませんでした。

最後にガードを下げるのはマスク

BMJのウェブサイトには、感染者と非感染者がどのくらい接触したかによって、非感染者が受ける感染リスクを色で分かりやすく表示できるツールがあります(図1)(2)。マスク着用の効果が如実に示される形となっており、アクリル板や手指衛生をはるかに上回る効果があることが分かりますので、みなさんも一度試してみてください。

図1. 各感染対策の組み合わせによる感染リスク推定ツール(参考資料2より)
図1. 各感染対策の組み合わせによる感染リスク推定ツール(参考資料2より)

これまでの研究結果を踏まえると、新型コロナの感染対策で最後にガードを下げるならおそらくマスクと思われます。「マスクなんていらない」という見解もよく耳にしますが、現時点では最重要の感染対策というコンセンサスがあると言えます。

個人的には、夏場や屋外にいる場合はマスク着用はそこまで必要ないと感じていますし、今後感染者が抑制され続けている局面ならばマスク着用の緩和も検討されるべきと思っています。ただ、少なくとも現時点では、屋内や至近距離で人と会話する場面では、マスクを着用することが勧められています(図2)(3)。

図2. 現時点での新型コロナウイルス感染症対策(参考資料3より)
図2. 現時点での新型コロナウイルス感染症対策(参考資料3より)

軽症例が多い可能性があるとはいえ、今後オミクロン株が国内で広がっていくリスクがあることから、「第5波が収束したからもうマスクは不要」という考えは時期尚早かもしれません。

これまで、欧米ではマスクはそこまで普及していませんでした。ワクチンを2回接種して街中でお酒を飲むようになった国では、多くの人がマスクを外しています。もともとマスクを着用する文化が根付いていないので、外すのも早いのかもしれません。それを見透かしたように、制限を緩和した国では新規感染者が増えているところもあります。

写真:ロイター/アフロ

マスク着用・ソーシャルディスタンスが公衆衛生対策として推奨され、手指衛生も重要であるというのは、まさに日本が普段からとっている感染対策そのものです。

これまでの呼吸器系ウイルスとは何か違うニオイを感じ取り、パンデミック当初から「3密」という最適解を提示していた政府分科会には、脱帽しかありません。

(参考)

(1) Talic S et al. BMJ 2021;375:e068302

(2) Rutter H, et al. BMJ 2021;375:e065312(URL:https://www.bmj.com/content/375/bmj-2021-065312

(3) 新型コロナウイルス感染症対策. 内閣官房. (URL:https://corona.go.jp/

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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