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3Dプリンターのこれからの可能性に興味津々

前屋毅フリージャーナリスト

■自分だけのiPhoneのケースが簡単にできる

3Dプリンター‥‥この名称がよろしくない。最近とかく話題になっているが、この名称を聞いただけでは、わたしのようなテクノロジー音痴には何物なのか想像しにくい。3Dに見えるように紙に印刷されてくるのか、と想像力の乏しさをさらけだすことになる。

そこで、ちょいと調べてみて、驚いた。紙に印刷されてくるわけではなく、3Dの物そのものが飛び出してくるらしい。つまり、ペットボトルをプリントすると、ペットボトルそのものの形をしたものが出てくるというのだ。

そうなるとプリント(印刷する)という範疇を飛び越えているので、いっそのこと「製造機」と名付けてくれたほうがわかりやすい。3D製造機‥‥おかしいですか?

ともかく、この3Dプリンターがモノづくりにもたらす変化の大きさだけは理解できる。モノがあふれているといわれていても、いざ欲しいモノを探そうとすると、なかなかめぐりあえないものだ。そんなとき、パソコンで図面をつくり3Dプリンターで出力すれば簡単に手に入れることができる。なんとも便利だ。

実際、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスのメディアセンターには同大学の学生であれば誰でも使うことのできる3Dプリンターが設置され、学生に利用されている。なかでも人気なのがiPhoneのケースだそうで、ネットでモデルを見つけてダウンロードしているそうだ。ちょっとソフトをいじれる学生なら、どこにもない自分だけのケースをプリントアウト(というのだろうか?)することも可能なのだろう。

■個別の注文に応え、さらに自分のものは自分でつくる時代へ

この3Dプリンターを使えば、個別の注文に応えることが可能になる。iPhoneのケースにしても従来の製造方法であれば金型をおこさないとつくれなかったので大量生産するしかなかったが、3Dプリンターなら個人の注文に応えたものをつくることが可能になる。

大量生産のものがあふれている世の中で、そうしたものに満足しない人たちも多くいる。そうした需要に応えていくビジネスが可能になるのだ。

すでに、世界に1体だけのフィギュアを請け負うビジネスなどもネット上には現れている。どんどん広がっていけば、「自分だけのもの」が普通の世の中がやってくるかもしれない。

それ以上に、「欲しいものは買うのではなく、自分でつくる時代」が到来する可能性すらある。前述の慶応湘南藤沢キャンパスのプリンターの価格は1台40万円ほどで、個人が所有できないほど高価なわけではない。

これから需要が高まれば、どんどん価格は下がっていくはずだから、いま家庭でプリンターが使われるように、3Dプリンターが普通に家庭で使われる日も遠くないかもしれないのだ。

そうなれば、モノを売るビジネスは大きく衰退してしまうのかもしれない。3Dプリンターが、これから人々の生活、ビジネスの形態を大きく変えていくことはまちがいないことで、どう変えていくのか注目していきたい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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