【こんなに沢山!】端午の節句を鮮やかに彩る上生菓子で、お茶の時間を華やかに。
こどもの日といえば、大きくて立派な柏の葉で包まれた柏餅。関西の方は、香り豊かな笹の葉で包まれた甘い粽を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
子供たち、とくに男児の健やかな成長を願う端午の節句は丁度大型連休にあたりますので、家族揃って柏餅や粽を召し上がるという方も多くいらっしゃるかと思います。
関東では和菓子屋さんだけではなく、スーパーやコンビニでも柏餅を見かけることが多くなりましたね。それだけ日本人にとって身近な行事でもあり、大切な節句なのだと、この時期になると毎年実感致します。
とはいえ、和菓子屋さんに並ぶのは柏餅や粽だけではありません。職人さん達がその手腕と表現力を駆使した、美しく、そして可愛らしい端午の節句を象徴するような意匠(意匠=練り切りなどのデザイン)の上生菓子も店頭に並びます。
今回は、3つの和菓子屋さんが誂えた和菓子3種類をご紹介。
まずは福井県小浜市の老舗、葛饅頭でも有名な「伊勢屋」さんの<唐衣>。
こちらの唐衣という意匠は5月の定番ともいえる意匠。外郎生地やこなし生地を紫色に染め上げ、中に餡子を包み込んだお菓子。この佇まい、床に広がる平安貴族の召し物のような印象を受けませんか?その謂れは、古くは伊勢物語に登場する「からころも きつつなれにしつましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ」という在原業平が詠んだ句に由来しております。
その所以は割愛致しますが、それぞれの句の頭文字をとってみてください。
そう、『かきつば(は)た』になるのです。端午の節句には欠かせない菖蒲同様、5中旬ごろから先始めるあの深い紫色の花。
それゆえに、唐衣という和菓子は今の時期にも相応しい和菓子としてお茶席に花を添えてくれます。
伊勢屋さんの中餡は、濃厚な卵黄の風味と円やかさがぐぐっと前面に押し出されているのですが、外郎生地が優しくつつみこんで唐衣という作品に。個人的には白餡をもう少し味わいたかったのですが、このくらい大胆な黄身餡もありですね。
お次は香川県丸亀市の和菓子屋さん「寶月堂」さんの<こいのぼり>。
こちらを誂えた若女将にお会いしたことがあるのですが、とても可愛らしく、職人さんながらもお洋服のショップ店員さんのようにお洒落な雰囲気の方なのです。ですので、今回の和菓子もそのセンスがきらりと光る逸品です。
鯉の鱗、こちらは鱗ではなく「青海波(せいがいは)」という波の模様を横向きにしたもの。なんて素敵な着眼点!
青海波はとても縁起の良い模様とされており、さざめく波のように未来永劫続いてほしいいう意味合いが込められています。子孫繁栄を願うこどもの日にも相応しい模様ですね。
さらりとしながらも白餡の美味しさをしっかりと味わえる練り切り餡。楚々とした練り切り餡に対するは、しゃきしゃきっとした大胆かつ仄かに野趣すら感じられる皮の食感が楽しい粒餡です。
最後は、広島県広島市にお店を構える「旬月神楽」さんの<吹き流し>。
吹き流しとは、風にはためく鯉たちと一緒にひらひらと舞う五色の短冊のようなもの。てっぺんに風車のようなくるくる回るわっかがついているのを見たことがありませんか?吹き流しは、いわば魔除けのお守りのようなもの。
そちらを桃色・黄色二色の浮島とレモン羊羹と合わせた優しい色合いの和菓子。しかも、こちらの焼き印は今回のために新調なさった焼きごてなのだとか。
しっとりと蒸しあがった浮島の優しくじんわりしみていくような甘みにほっとひと息。
レモンの羊羹は香り高く、羊羹としての甘みと果皮のほろ苦さが調和した絶妙なバランス。
白餡と卵のまろやかな風味がふわふわと漂い、それを引き締めるほろ苦さがどこか洋風な香り漂う、上品な逸品に仕上げています。
あくまでこちらはほんの一例。
柏餅や粽もお店によって味わいも様々ですが、同じ意匠でも表情が異なる上生菓子もこどもの日の候補に加えてみてはいかがでしょうか。
尚、こちらは5月5日まで、日本橋や新宿の高島屋さんをはじめ、関東を中心とする高島屋さんにて主に販売されております。
身近な和菓子屋さんでも、ぜひこの季節ならではの意匠を探してみてくださいね。