まさに香魚。三原堂本店さんの「あゆ」はとろりとした青海苔入り求肥がたっぷりな、ほっと和む清流菓
日本橋人形町は、石を投げると老舗に当たるといわれるほど、創業100年以上の飲食店が軒を連ねる、東京都中央区屈指の老舗エリア。町を歩いていると、建物や記念碑、寺社仏閣から、街の変遷などを学べるスポットも沢山。
しかし、外観からはその月日がわかりづらいお店もちらほら。水天宮前の角地にお店を構える「三原堂本店」さんもそのひとつ。
創業1877年という老舗でありながら、お店の半分は和菓子、もう半分は洋菓子といった街のお菓子屋さんといった風貌。とはいえ、長年愛されるにはそれ相応の理由があるということ。お土産用の和菓子を購入したついでに、自宅用のケーキを購入なさるなど利用する方法も様々。
今回は先月中旬から姿をあらわしはじめた初夏の和菓子、「あゆ」をご紹介。
清流菓、とパッケージに記載されているように、笹船を模したトレーにのせられた涼し気な包装。
開封した瞬間に鼻をくすぐる香りに思わず笑みが。卵やお砂糖、味醂といったなじみ深いカステラ生地の芳香と重なる青海苔。
それもそのはず。二つ折りの焼き皮からはみ出んばかりのたっぷり挟まれたほのかに緑色に染まった求肥には、緑のコントラストがよく映える青海苔がちらちらと。とろりと滑らかでさらっと喉へ流れていく求肥の青々しい旨味と、カステラのほっとする味わいに、思わずうっとりと目を閉じてしまうほど。青海苔が心地よいと感じられるのは、しっかりと甘味がついた、やや歯ごたえのある目の詰まったカステラ生地だからでしょうか。
甘いお菓子に青海苔…?という意見もあるかと思いますが、日本人特有の感覚とでもいいますか、「あまじょっぱい」という味わいに馴染みのある方はお好きなのではないでしょうか。
極端な話、厚焼き玉子に海苔が巻いてあるお寿司を想像していただければわかりやすいかと思います。
天然の鮎は川の岩に付着した藻を糧とし、その水位が下がってきたところを狙って鮎釣りを嗜むといわれています。私たち人間は清流といえども藻を食べることはなかなか難しいかと思いますが、その味わいを身に湛えた鮎を、こうしてお菓子で楽しむというのも風流なのではないでしょうか。
三原堂本店さんでは、5月下旬あたりから8月中の販売を予定なさっているそうです。(公式サイトより)