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投げ銭はJリーグにマッチするのか?鹿島アントラーズで実施した企業の社長に聞く

柴村直弥プロサッカー選手
昨シーズンの天皇杯でも準優勝に輝いた鹿島アントラーズ(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 投げ銭をJリーグでも導入するのか?

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、試合の開催を見合わせているJリーグ。現在の様々な状況を踏まえると再開時期は6月末もしくは7月初旬が予想されるが、当面は無観客で試合が行われる可能性が高い。試合が開催されていないことですでに各クラブは打撃を受けている状況だが、無観客試合となると入場料収入や試合でのグッズ販売収入がなくなり、各試合のマッチデースポンサー収入も減額される恐れもある。人件費などすでに決まっている支出を減らすことはクラブにとっては至難の業で、今季赤字を計上するクラブが多くなることが予想される。そうした中で、少しでもクラブの収入を増やす施策として注目されているのが、投げ銭だ。

 投げ銭とは、文字通りお金を投げるという意味で、大道芸やストリートミュージシャンのような何らかのパフォーマンスをする人へ称賛の意味合いを込めた少額の金銭の投げ入れを行う行為のことを指していたが、2017年にYouTubeでも「Super Chat」という投げ銭システムが導入され、インターネット上でも投げ銭が行われるようになっている。

 4月23日の実行委員会後に「投げ銭」について村井チェアマンが導入の可能性を言及し、5月19日朝に一部報道でJリーグでも導入方針が固まったとの報道があった。それに対して同日夜に村井チェアマンが、決定は否定したものの可能性はあるようなコメントが報じられた。

 投げ銭をJリーグとして導入するか否かは現時点では不明だが、そもそも投げ銭とはどのようなものなのか。Jリーグにマッチするのか。

 じつはJリーグに先駆けて、クラブのイベントで鹿島アントラーズが5月16日に投げ銭を実施している。その際に、鹿島がプラットフォームとして採用したスポーツエンターテインメントアプリ「Player!」を運営する株式会社ookamiの尾形太陽社長に話を聞いた。

昨日オンラインでの取材に応じてくれた尾形太陽社長 (写真:株式会社ookami提供)
昨日オンラインでの取材に応じてくれた尾形太陽社長 (写真:株式会社ookami提供)

ーまず、Player!とはどのようなサービスですか?

「『第3のスポーツエンターテイメントをつくる』を、というのをキャッチコピーとして我々は活動しています。これまではスポーツ観戦の手法は、現地に観戦に行くかTVで観戦するか、大きくはこの2つの軸だったと思いますが、TVというプラットフォームでは掬えなかったスポーツ、例えば学生スポーツや、東京都社会人リーグなどの地域のスポーツがあります。さらに、多くのスポーツが地方でも実施されている中でなかなか現地に観戦に行くのが難しかったりしていて、そういった地方のスポーツやTVで観られないスポーツであっても、デジタルであればあらゆるスポーツを可視化して、誰でもどこからでも応援出来る、感動の瞬間にアクセス出来る、という世界が作れると思っています。

 新しい観戦スタイルを提案し、より多様な観戦の仕方やスポーツの在り方を提唱していき、最終的には日本中のあらゆるスポーツを可視化し、誰もが自分の好きなスポーツを楽しめる、スポーツダイバーシティを作りたいと思っています。そしてPlayer!を展開しています。」

ー投げ銭の機能については以前からサービスとして導入していたのでしょうか?

「機能自体は、すでに半年くらい前から大学スポーツのチームやアマチュアスポーツチームに対して実在していたPlayer!内の機能でして、Player!サポートと我々は呼んでいました。Player!サポートという名前は、チーム(player)をサポートする、という想いで作ったからです。

 当初は大学スポーツのOBOG会費の集金をデジタルで行うようなイメージで、開発を進めていました。なぜなら、アメリカの大学スポーツは個人の寄付だけで年間1400億円にもなっている中、すべてデジタルで完結していて、様々なサポートメリットも提示されていたりします。ですが、日本では未だに紙の払込用紙で毎年その都度払い込んだり、それを何に活用しているか見えづらいというケースが多い、という現状があります。これをデジタルにしていくことが出来ると、これまでは1口1万円や1万5千円だったりする会費を、1口500円などさらに単価も安くすることも出来ますし、例えば卒業間もない20代のOBOGも払いやすくなると思います。さらに、ただお金が集まるというだけではなく、大学OBOGと現役の接点も出来るのでは、と考えていました。」

ー今回鹿島アントラーズで実施された投げ銭企画についてはどのような経緯だったのでしょうか?

「今回コロナの影響で軒並みスポーツがストップしていき、入場料収入がない中で多くのクラブが危機的状況になってきており、プロスポーツチームからの投げ銭企画の需要が急増していました。そうした中で、Jリーグのクラブにとってチケットを買うことによってチームとファンは接点が生まれます。クラブにとってのチケット収入の代替えというようなイメージで、ファンとの接点も持てるクラブにとっての新しい収益ポイントになれば、という考えから、鹿島アントラーズさんに提案させていただきました。鹿島アントラーズさんはとても先進的なクラブで、スピード感もあり、新しい取り組みを先陣を切ってやっていくんだ、というような方向性も持たれているような感じで、実際にクラブ内の方々がとても積極的にやってくださって、大変有り難かったです。」

ー今回の投げ銭は500円からという設定でしたが、この金額設定には何か意図があるのですか?

「もともとのPlayer!の中での設定が500円だったので、そのままやらせていただきました。ただ、今後は金額設定なども変えていったり、その他にも実施してみた中で数多くの改善材料があったので、よりクラブの収益にもなり、より視聴者の方々にも使いやすいシステムになるように今後どんどん改善していきたいと思っています。」

ー他のクラブからの相談もありますか?

「そうですね。我々のキャパシティ的に今シーズンすべてのクラブに対応させていただくことは難しいのですが、多くのクラブが現在困っている中で、今シーズン『クラブの新しい収益の形が作れそうだね』というような、兆しの見えるシーズンを少しでも我々がご提供出来れば、と思っております。」

ー今後はどのような展開を考えていますか?

「歴史を振り返ってもスポーツがTVで観られるようになって観戦に来る人が減ったわけではなく増えていったと思います。より多くの人たちがスポーツと接点を持てるようなサービスを展開していければ、スポーツの市場もより広がると思うんですよね。いろんな人が接点を持つポイントを作ることによって、その人が、じゃあスタジアムに観戦に行ってみようか、となるかと思いますし、より多様な接点を持つことによって、そのコンテンツの価値がより上がっていくと考えています。

 そして、スポーツは地方で行われることも多いわけですし、例えばイギリスに出張に行っているお父さんは同じ時間に広島でやっている子供のサッカーの試合を観れないわけですよね。そういう場面でもデジタルで繋がることでリアルタイムで感動の瞬間を共有出来たり、いまはまだ速報だけですが、ゆくゆくは映像も配信していけるようにしていければと思っています。」

 今年、新型コロナウイルスの影響で、全国高校総体(インターハイ)が中止となり、高校野球も春夏共に中止となってしまい、大学スポーツ大会も中止が相次いでいる。そうした中で、株式会社ookamiでは少しでも学生たちに思い出を作ってもらおうと、Be a Player!という特設サイトも作り、エア選抜高校野球関西学生アメフト応援番付など、様々なユニークな企画を打ち出している。

「スポーツ界をもっとおもしろくしたいと思っていて、そのためには我々がもっと頑張らないといけないと思っていますし、サッカーに限らず日本のスポーツ界を大きく前進させるようなサービスを展開していければと思っています。」

 現状ではJリーグ側との投げ銭についてのやり取りはないという。

 Jリーグがリーグとして導入するかの可否に関わらず、この鹿島アントラーズのケースのように、クラブ単位で投げ銭を導入していくクラブが増えていき、「新しい観戦スタイル」が定着していくかもしれない。

株式会社ookami

2014年4月に設立され、スポーツエンターテインメントアプリ「Player!」を開発、運営しているスタートアップ企業。App Store Best of 2015、2016年度グッドデザイン賞、Forbes JAPAN SPORTS BUSINESS AWARD 2019受賞及びRuby biz グランプリ2019にて特別賞を受賞

プロサッカー選手

1982年広島市生まれ。中央大学卒業。アルビレックス新潟シンガポールを経てアビスパ福岡でプレーした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年ラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。同年のUEFAELでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。日本人初となるラトビアリーグ及びラトビアカップ優勝を成し遂げ、2冠を達成。翌年のUEFACL出場権を獲得した。リーグ最多優勝並びにアジアで唯一ACL全大会に出場していたウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍し、ACLにも出場。FKブハラでも主力として2シーズンに渡り公式戦全試合に出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へ移籍した

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