ダルビッシュが受賞するかもしれない「サイ・ヤング賞」ってどんな賞!?
サイ・ヤング賞を手にするのは、そのシーズンにリーグで最も活躍した投手、とは限らない。趣旨としてはだいたいそうだが、正確に言うなら、受賞するのは、記者投票の合計ポイントが最も多かった投手だ。
賞の名前は、右投手のサイ・ヤングから来ている。ヤングが19世紀から20世紀にかけて挙げた511勝は、歴代2位と100勝近い差がある。本名は、デントン・トゥルー・ヤング。ニックネームのサイは、サイクロンを縮めたものだ。その投球の凄まじさが窺える。
賞が始まったのは1956年。ちなみに、日本プロ野球の沢村栄治賞(沢村賞)は、1947年からだ。サイ・ヤング賞よりも9年早い。ちなみに、サイ・ヤング賞はリリーフ投手も対象外ではなく、実際に受賞者も出ている。直近は2003年のナ・リーグ。受賞したエリック・ガニエは、ロサンゼルス・ドジャースのクローザーだった。
現在の選出方法はこうだ。30人の記者が、それぞれ1位から5位までの投手を挙げる。1位=7ポイント、2位=4ポイント、3位=3ポイント、4位=2ポイント、5位=1ポイントだ。全員の記者が同じ投手を1位とすれば、その合計は210ポイントとなる。
例えば、昨年のナ・リーグでは、ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)が207ポイントで受賞した。7ポイント(1位)×29人=203ポイント、4ポイント(2位)×1人=4ポイント。203ポイント+4ポイント=207ポイントだ。
従って、最も多くの記者から1位に挙げられても、合計ポイントで1位になれなければ、受賞はできない。こういった「逆転現象」は皆無ではなく、4年前のア・リーグもそうだった。これについては「2人の記者がバーランダーに投票していれば、サイ・ヤング賞の行方は変わっていたのか」で書いた。
複数の投手による同時受賞も、1度だけ起きている。1969年のア・リーグでは、マーク・クエイヤーとデニー・マクレインが、それぞれ10人から1位とされ、サイ・ヤング賞を分け合った。ただ、当時は記者1人につき、投手1人を挙げていた。それと比べると、現在の選出方法は同じポイントになりにくい。
最多受賞は、ロジャー・クレメンスの7度。現役投手では、クレイトン・カーショウ(ドジャース)とマックス・シャーザー(現ワシントン・ナショナルズ)の3度が最も多い。ちなみに、日本人投手だけでなく、アジア出身の受賞者も皆無。こちらについては「サイ・ヤング賞投票でランクインした日本人投手たち。最高位はダルビッシュの2位。岩隈は3位、野茂は4位」に書いた。
なお、近年の選考において、勝ち星はあまり重視されていない。過去2年とも、ア・リーグの受賞者は21勝を挙げているが、ナ・リーグで2年続けて受賞したデグロームは、この2年の合計が21勝だ(2018年が10勝、2019年は11勝)。今シーズンも、デグロームの勝ち星は少ない。防御率は1点台ながら、3勝しか挙げていない。