オールトの雲から史上最大の彗星が地球方面へ接近中!詳細な新画像も公開
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「オールトの雲から過去最大の彗星が襲来中」というテーマで動画をお送りしていきます。
●超巨大な彗星を発見!
去年2021年6月、宇宙の膨張を司るとされるダークエネルギーの正体を解き明かすことを目的とした「ダークエネルギーサーベイ(DES)」による過去6年分の観測データから、新たに巨大な彗星が発見されたと話題になりました。
元々DESの任務は遠方の銀河を観測し、その分布図を作成することでしたが、非常に小さい光源を観測しているため、これまでも副産物として非常に小さく見つけにくい彗星や小惑星などの天体を新たに多数発見してきました。
今回の主題である巨大彗星もそうした観測の副産物として発見され、C/2014 UN271と命名されています。
または発見者の名前からBernardinelli-Bernstein彗星とも呼ばれます。
実はこの彗星は2014年に撮影された画像データの中にすでに映り込んでいましたが、詳細は後述しますが地球からの距離が遠いために当初は動きを確認できず、遠くの恒星の1つであると考えられていました。
その後太陽を公転する天体であると判明した後も当初は岩石から成る小惑星であると考えられていました。
ですがここ数年の観測データにはその周囲にもやもやした構造が写っており、これは太陽に接近するにつれて表面の氷が蒸発して形成された尾であると考えられ、現在では正式に彗星として認められています。
●公転軌道
観測された時点での位置と速度から、C/2014 UN271はとてつもなく巨大な公転軌道を持っており、その公転周期は数百万年にもなると考えられています。
ただし現在は公転軌道の中でも太陽に非常に近い位置にあります。具体的には最初に撮影された2014年時点では29天文単位、2022年4月現在では19天文単位と、大体天王星くらいの距離にあります。
そして最も太陽に近づく点=近日点には2031年に到達し、その時の太陽からの距離は11天文単位と、土星よりもわずかに遠い程度の距離まで接近します。
現在も時速35000kmという猛スピードで地球に向かって来ていますが、11天文単位より近くまで接近してくることはないので、太陽に接近しすぎて物凄い明るさで輝く大彗星になることはないと考えられています。
ただしこれほどまでに巨大な彗星が太陽に接近した際にどのように振る舞うのかという点には、科学者の間でも大きな注目が集まっているようです。
●大きさの最新推定
C/2014 UN271は直径が100-200kmと、近年発見された彗星の中でも最大級のものであると推定されていました。
そんな中、今年2022年1月8日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した最新の実写画像から、コンピュータシミュレーションと地上の望遠鏡による過去の撮影データを用いて彗星本体から放たれる氷と塵の部分を取り除き、正確な彗星本体の姿を明らかにすることに成功しました。
この画像から、彗星核の直径は137kmにもなるという最新の推定値が得られています。
これはこれまで発見された彗星の中で最大であり、既知の一般的な彗星核の50倍にもなる大きさとのことです。
左から2番目のハレー彗星と比べると圧倒的で、これまで最大だった右から2番目の彗星と比べてもかなり大きいです。
質量についても、太陽付近にある一般的な彗星の実に10万倍もあるとのことです。
●今後わかること
C/2014 UN271のように非常に周期の長い彗星や小惑星の公転軌道をたくさん調べていくと、太陽から1000-100000天文単位程度の領域では、太陽系全体を球殻状で包み込むように彗星や小惑星が分布していると推定できます。
このような巨大な構造はオールトの雲と呼ばれています。
今回の彗星はオールトの雲の中でもかなり外側の領域からやってきた彗星であると考えられています。
もしかするとオールトの雲内には今回の彗星のような巨大な天体が無数に存在しているのかもしれません。
C/2014 UN271の存在は、オールトの雲に含まれる彗星の大きさや、総質量などについて重要な手掛かりを与えてくれます。
さらにC/2014 UN271のような遠方の天体は、太陽系が形成された初期に木星・土星・天王星・海王星のガス惑星が太陽系内を移動した結果、その重力の変化の影響で太陽系の彼方に追いやられてしまったと考えられています。
そしてこの彗星は、大きい分地球からの見た目も明るいため、近日点に差し掛かる10年前とかなり早い段階でその存在に気付くことができました。
これを調べる機会はまだまだ残されています。
太陽系の歴史やオールトの雲の構造など、太陽系に残る大きな謎を解明するために今後この彗星の存在は鍵となってくるかもしれませんね!