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WBA/WBC/IBF統一ウエルター級チャンプは、次戦でWBO王者との4冠戦か?

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 テキサス州アーリントンに建つAT&Tスタディアムには、WBA/WBC/IBF統一ウエルター級タイトルマッチを観戦するために、3万9946人のファンが詰めかけた。

 観客動員数だけで見れば、マディソン・スクエア・ガーデンで行われたモハメド・アリvs.ジョー・フレージャー戦、MGMグランドガーデン・アリーナで組まれたマイク・タイソンvs.イベンダー・ホリフィールド戦、同フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.マニー・パッキャオ戦を遥かに凌ぐ数字である。

 WBC/IBF統一チャンピオン、エロール・スペンス・ジュニアにとっては、家族、隣人、知人に見守られながら、故郷でのファイトであった。

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 立ち上がりのジャブの刺し合いは互角。WBA王者、ヨルデニス・ウガスの右ボディが効果的だった。あのマニー・パッキャオを引退に追い込んだファイトでは、ウガスの右ストレート、右フックが再三パックマンを捉えたが、スペンスに対しては右ボディが上手くハマりそうな気配だった。

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 しかし、2冠チャンプは相手の出方を窺っていたに過ぎなかった。

 昨年8月に網膜剥離の手術を受けたスペンスだが、その影響は感じさせず、ウガスの固いガードの隙間からジャブを当てて流れを掴む。そして、シャープな左ストレートでWBA王者にダメージを与えた。

 ラウンドが進むにつれ、ウガスの右目が腫れ上がっていく。6回にはWBAチャンプのアッパーカットでスペンスのマウスピースが飛んだが、決定打とはならなかった。

 時折打ち返しはしたが、7回以降、右目の視界を奪われ防戦一方になるウガスは、第10ラウンド1分44秒、ドクターストップによりTKO負けを告げられる。

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 試合後、3冠王者となったスペンスは言った。

 「色々と自分は試されたんだと思う。困難を乗り越えられるか、己に勝てるか、とね。幼い頃から両親に『物事をやめるな、諦めるな。自分と家族を信じて進んでいくんだ』と教わったが、今回テストをパスしたように感じる。引退すべきだという意見もあったが、彼らの考えが間違っていたと証明できたな。

 誰もが、俺が次に戦いたい相手を知っているはずだ。WBO王者のテレンス・クロフォードだよ。皆が望むファイトだろう。WBOのベルトも奪ってみせるぜ!」

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 27勝(12KO)5敗となったウガスも話した。

 「とにかく哀しいです。この試合に向け、本当にハードに練習しました。エロール・スペンスを心から尊敬します。ドクターの判断で止められましたが、もっと戦いたかった。6ラウンドは、私にチャンスがあったように感じます。彼は見事に回復しましたが。

 今は、スペンスと彼のチームに『おめでとう』と言いたいです」

 28戦全勝22KOのエロール・スペンス・ジュニアと、38戦全勝29KOでライトから3階級を制しているテレンス・クロフォード。両者による4冠ウエルター級統一戦が決まれば、今回以上の盛り上がりを見せる事は間違いない。

 近い将来、是非とも実現してほしいメガ・ファイトである。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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