ペットフードは人間が食べても大丈夫?
食べ始めたら止まらない、舐めている時の目つきが普通じゃない・・・ペーストタイプのペット用おやつに我が家の猫さんも夢中なのですが、最近のおやつの進歩って本当にすごいですね。あまりに美味しそうなので、私も少し味見をしてみたことがあります。考える事はみな同じようで、人気商品を人間が食べ比べ品評をしたツイートが話題になっておりました。
調べてみると、おやつやウエットタイプ(主に猫缶)の食事だけでなく、ドライフード(いわゆるカリカリ)の食味レポートをしている人もいらっしゃるようで、家族であるペットに与えるものだから自分もどんな味かしっておきたい、という心理なのだと思います。味見ではなく、普段の食事として習慣的にペットフードを食べているという人もいるようです。
ペットに人間用の食事を与えると代謝機能の違いから病気や中毒になるケースもありますが、ペット用の食事を人間が食べても体に害はないのでしょうか。ペットフード(今回の記事では猫、犬用飼料)を人間が食べることについて、私の見解を述べてみます。
■ペットフードは食品ではない
結論から先に述べますと、ペットフードは食品ではないため、人間が食べることについて全くすすめられません。ペットフードの安全性については、10年前に公布された「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律」により法的にもある程度担保されるようになりましたが、流通経路や販売店での商品管理については生活用品扱いであるため、食品ほど高いレベルの品質管理は期待できない、ということもあります。
メーカーのQ&Aでも、誤食程度であれば問題はないものの、継続的な摂取は害になるおそれがあると回答しています。
試食程度であれば健康への影響はあまりなさそうといえますが、食品ではないため、万が一何かが起こったときに誰も補償してくれないことが懸念されます。人間用の食品を食べても食中毒やアレルギーなどの被害は毎日のように起きています。ペットフードが食品と同じぐらいの安全性としても、何かが起こった時の個人のリスクは食品に比べて格段に高いといえます。
また、通常の食品はアレルギーに対する表示を丁寧に行っていますが、ペットフードは人間のアレルギーに配慮した表示は行っておらず、工場でのアレルゲン混入のリスクも高いと考えられます。人間が食べても大丈夫なクオリティのペットフードとして「ヒューマングレード」と表示しているフードもありますが、子どもや食物アレルギーのある人については、試食程度でもペットフードは口にしない方が良いと私は考えます。
■ペットフードの栄養価は?
やはりペットフードは食べない方が良い、という私の見解ですが、ペットフードを人間が食べ続けるとどうなるのでしょう。犬用猫用の食事と人間の食事の違いを栄養学的に考察をしてみます。
私たち日本人の望ましい栄養摂取量を示したものが「日本人の食事摂取基準」ですが、ペットの望ましい栄養量は、いくつかの団体が栄養ガイドラインを示しております。比較的新しいものとして、FEDIAF(欧州ペットフード工業連合)のガイドラインを参考に、ペットフード(総合栄養食ドライフード)だけで2000kcal摂取した場合にどれぐらいの栄養量を確保できるのか表にまとめてみました。
犬用と猫用の大きな違いとして、猫はたんぱく質が多く栄養価の高い食事を少量食べ、犬は脂質、たんぱく質、炭水化物をバランス良く含む食事を多めに食べる、という特徴があります。人間がもし非常時にペットフードしか食べる物がなかったとしたら、栄養バランス的には犬用のものを選んだ方が良さそうです。
赤字で表示したものは、過剰や不足が心配される栄養素です。キャットフードだけで長期間生活すれば、カルシウムの過剰、マグネシウムの欠乏のおそれがありそうです。ビタミンCについては、犬や猫は体内で他の栄養素から合成できるため、食事から摂る必要がないため、ペットフードに含んでいなくても問題のない栄養素です。人間がペットフードを食べ続けた場合には生命の危険もある壊血病になる可能性があります。
猫や犬は大切な家族ではありますが、人間と違う体の構造を持っています。家族だから同じモノを・・・ではなく、それぞれが自分の特徴にあった食事をするのが大切ですね。
■今回のまとめ
・ペットフードは食品ではない
・食品ではないので食品を食べて危害が生じた時の補償は期待できない
・試食であっても子どもやアレルギーのある人はやめた方が良い
・犬、猫、人間、それぞれ必要な栄養バランスは異なる
・人間がペットフードを長期間食べ続けた場合、特定の栄養素の欠乏や過剰の心配がある