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アイスホッケーの男子マイナーリーグでプレーする元カナダ女子代表金メダリストを知っていますか?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
バンクーバーとソチオリンピックで金メダルを手にしたシャノン・ザバドス(写真:ロイター/アフロ)

12年ぶりに開催されるアイスホッケーのワールドカップは、今週末(現地時間17日)の開幕を控え、プレマッチが行われています。

その一方で、来月中旬には、NHLをはじめとする北米のプロリーグがスタートするのに備え、ワールドカップに出場しない選手たちは、各チームのトレーニングキャンプへ向けて始動しています。

▼北米三部リーグ挑戦を見据える元金メダリスト

北米のプロリーグで、NHL(ナショナルホッケーリーグ)、AHL(アメリカンホッケーリーグ)に続く三部リーグに相当するECHL(かつてのイーストコーストホッケーリーグ)は、丁度一か月後に開幕を迎えます。

ECHLには、北はアラスカ州から、南はフロリダ州まで、アメリカ各地にホームタウンを置く26チームと、カナダの1チームの合計27チームが加盟。

三部リーグとはいえ、27チームのうち26チームが、NHLのチームとアフィリエイト関係を結び、決して数は多くないものの、二部リーグに相当するAHLへ昇格して活躍し、NHLでデビューを飾る選手もいます。

そんなECHLで、新たな一歩を踏み出そうとしているのが、元カナダ女子代表のGKシャノン・ザバドス(30歳)です!

▼金メダルだけでは満足できない

2010年のバンクーバーオリンピックに続いて、2014年のソチでもカナダ女子代表のGKとして、二大会続けて金メダルを獲得したザバドスは、故郷のエドモントン(アルバータ州)へ戻ると、大喝采を浴びました。

なかでも、NHLのエドモントン オイラーズに至っては、ナント! チームの公式練習に招待。

ザバドスは金メダルのご褒美に、NHLの現役選手と同じ氷に乗って、シュートを受けたのです。

しかしザバドスは、「これだけでは満足できない」とばかりに、次のステージを模索。その視線の先にあったのは、男子のプロチームでした。

▼独立マイナーリーグでプロデビュー

ソチオリンピックが終わって間もない2014年3月に、ザバドスはSPHL(サウザンプロフェッショナルホッケーリーグ)のコロンバス コットンマウスと契約。

SPHLは、アメリカの中部、南部の都市をホームタウンとする10チーム(=ザバドス選手が契約した年。年度によって異なる)が加盟し、56試合のレギュラシーズンを戦い、プレーオフでチャンピオンを決します。

2004年に(現在の)SPHLが創設して以来、初めての女子選手となったザバドスは、チームの二番手GKながら、リーグの週間ベストプレーヤーに選出されたほどのプレーを披露。

さらに昨季には、

プロアイスホッケーリーグの公式戦(女子リーグを除く)で、史上初めての女子選手による完封勝利を達成!

ザバドスは自らのプレーで、「プロ契約をしたと言っても、どうせ客寄せパンダだろ!」と揶揄する周囲の声を、封印してみせました。

★【参照記事:筆者オフィシャルサイト】

「Women Goalie Marked First Shutout in Men's League」

▼ザバドスは新たなステージに挑む

ザバドスの地元であるエドモントンのメディアなどの報道によれば、今季は北米三部リーグのECHLに所属するアトランタ グラディエータース(NHL ボストン ブルーインズのアフィリエイトチーム)のキャンプに参加し、トライアウトを受ける見込みとのこと。

北米アイスホッケーの頂点に位置する NHL から AHL。さらにその下の ECHL へと、キャンプで振るい落とされた選手がやって来るだけに、トライアウトに合格して開幕を迎えられる可能性は、ひいき目にも高いとは言えません。

しかしながら、オリンピックで勝ち取った栄光と、独立リーグで体感した様々な経験を財産に、ザバドスは新たなステージに挑む決意を固めたようです!

~筆者より~

ご興味のある方は、カナダのテレビ局 CBC が制作したドキュメンタリー(一昨季に放送 12分16秒)も、併せてご覧ください。

ザバドスが昨季まで所属していたローカル独立リーグのタフな環境と、ホームタウンのファンとの親密度を垣間見ることができます。

【9月21日追記】

ザボドスは、昨季までプレーしていたSPHLに所属するピオリア リバーメンと、プロフェッショナルトライアウト契約を結んだことが、ピオリアのオフィシャルサイトを通じて発表されました。

これまでより上のレベルへの挑戦は断念した模様で、昨季のファイナルまで進んだチームのキャンプに参加し、開幕ロースター入りを目指すようです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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