金をかけずに収入アップ! AHL(アメリカンホッケーリーグ)の戦略
昨日 紹介した「コロラドアバランチの盟友決別 !? パトリック・ロワヘッドコーチが突然の辞任発表」の中で、今季のNHL開幕まで、あと2ヶ月と紹介しましたが、AHL(アメリカンホッケーリーグ)も、開幕まであと2ヶ月を切りました。
MLBと3A(トリプルエー)の位置づけと同じく、NHLの一つ下のリーグに相当するAHLも、全30チームが、いずれもNHLのチームとアフィリエイト関係にあり、アメリカとカナダの各都市を拠点に、トップマイナーチームの役割を担っています。
例年であれば、NHLの開幕ロースターに残れなかった選手が合流してから始まるため、NHLより少し遅れて開幕するのですが、今季は「ワールドカップ」が開催され、NHLの開幕が昨年と比べて5日遅いことから、AHLもNHLと同じ10月12日(現地時間)から、レギュラーシーズンがスタートします。
【筆者追記】AHLは8月23日に今季の日程を発表し、当初の発表よりも二日遅い「10月14日開幕」となりました。
▼AHLチームの運営は左うちわではない
AHLにはトップマイナーチームが集まっているだけに、アフィリエイト関係にあるNHLチームにドラフト指名された未来のスター候補や、キャリアを重ねてベテランの域に差し掛かった元NHL選手たちが、プレーをしています。
そうは言っても、NHL並みのチケット収入やスポンサー獲得を望むのは困難で、チームの経営は左うちわではありません。それだけに、チームはもちろんのこと、リーグとしても様々な試みを続けています。
オールスターゲームやアウトドアゲームといった、イベント要素の強い試合を行うのはもちろん、レギュレーションタイムよりプレーヤーが2人少ない3on3による延長戦を導入するなど、NHLのルール改定への試行も含め、積極的に新たなルールを導入してきました。
▼クリスマスのあとに選手が “お色直し”
今季へ向けても、先月に開催されたAHLの年次総会終了後、いくつかのルール改正点が発表されました。しかし、最も興味深いのは、ルール改正とともに発表された、選手たちが試合の際に着用するジャージの変更です。
昨季までAHLでは、NHLとは反対に「ホームチームが白。ビジターチームが(チームカラーに合わせた)色の濃いカラージャージ」を着て試合に臨んでいましたが、今季からは、、、
クリスマスブレイク以降の試合では、ホームチームがカラージャージを着る
ように変更。いわば選手が ”お色直し”をすることになりました。
もっとも、このような変更が実施されても、チームは従来どおりに、白がベースのジャージと、カラージャージを用意するのに変わりはない一方で、ホームチームのファンは、2種類のジャージでプレーする試合を、観戦できるようになります。
たとえて言えば、セントラルリーグで首位を走る広島カープのファンの中には、地元の広島に住んでいて、いつもマツダスタジアムへ応援に行くけれど、「ビジターゲームで選手たちが来ている赤いユニフォーム姿のほうが、力強そうで好き!」という方も、いらっしゃるのでは?
このような熱心なファンからすると、慣れ親しんだホームアリーナで、お気に入り選手たちが2種類のジャージでプレーする姿が見られるのです。
▼チームの支出は増えず、グッズの売り上げはアップ
そうは言っても、もちろんファンサービスのためだけに、このような変更を決めたのではありません。
ホッケーシーズンたけなわの冬から、プレーオフ進出を争う白熱したレギュラーシーズンの終盤戦に、これまでと違うカラージャージを着て試合をすれば、「もう一着、カラージャージも買って応援しようか」というファン心理を、くすぐる目的であるのは明らかです。
もう一度、プロ野球を例に挙げると、近年は普段と違う色やデザインのユニフォームを着て試合をし、入場者のアップや、イベント用のユニフォームを販売して収入を見込むチームが、多く見られるようになってきました。
AHLでも同様に、これまで試合ごとにスポンサーをみつけ、限定のジャージを作って、収入を見込んだチームは珍しくありませんでした。しかし、今季からの変更によって、スポンサーを見つけられなくても、新たなチームの支出はゼロ。それにもかかわらず、ジャージをはじめとするチームグッズの売り上げが増える要素が増え、「金をかけずに収入アップ」が目論めます。
マイナーリーグのチームであるが故の・・・、もとい、マイナーリーグのチームであるからこその戦略は、日本のスポーツチームでも参考にする点がありそうです。