Yahoo!ニュース

子育て卒業世代にも考えてほしい、お母さんが働くことって本当に子供に悪影響?

ねんねママ(和氣春花)乳幼児育児アドバイザー

いまや当たり前になった働くお母さん。しかし私が小さい頃はクラスのほとんどのお母さんが専業主婦でした。

そのこともあり、

「私たちの頃はみんな家庭で子供を見たものよ?」

「保育園に預けてまでやらなくちゃいけない仕事なの?」

「親といたいだろうに、かわいそう」

と、おじいちゃんおばあちゃんになる先輩たちに責められてしまうと母親は自分を責めて傷つきますよね。

周囲に反対されながら、それでも仕事を頑張るってかなり精神をすり減らすことだと思います。

さらに、最近では「子持ち様」というワードが取り沙汰されたこともありました。社内の同僚からも、子どもがいる人と一緒に働くことを疎ましく思われる…なんて働きづらい、厳しい世の中なのだろうかと悲しくなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の記事では今育児をしているお母さんやお父さんだけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんにあたる子育て卒業世代の方にも今一度考えていただきたい「お母さんが働くことは子どもに悪影響なのか?」を、保育園で得られるものや海外の研究結果を交えて2児の母親でもある乳幼児育児アドバイザーねんねママが解説します。

お母さんが働いていると悪い子になる?

20年ほど前、私が小学生の時、クラスの中にちょっと変わった男の子がいました。不登校・保健室登校を繰り返し、クラスに来たと思ったら持参したゲームを手放さず、机の上に足を上げて大声で叫ぶ、休み時間は女子のスカートめくり…などかなり自由奔放に生きている子でした。

その子のことを親たちは“問題児”と話題にし、その原因を「あの家はお母さんが働いているから…」と言っていたのを覚えています。「お母さんが働いていると、悪い子になってしまうのだろうか?」と、当時の私は小学生ながらに疑問に思っていました。

当時は「鍵っ子」などとも呼ばれていましたが、その少年は毎日学童に通っている鍵っ子でした。そんな鍵っ子たちは親たちにとって「家に帰ってもおかえりを言ってもらえなくて可哀想な子」というイメージのようでした。

当時の私はむしろ、学童の子たちを「放課後もお友達といられてうらやましいな〜」と思っていたくらいでしたが、それが問題行動を起こす原因と親たちは考えていたようでした。

お母さんが働くことはいけないことなのでしょうか?お母さんが働いているから、その子は“問題児”になってしまったのでしょうか?

いま実際に働きながら子供を育てている私にとって、いまだにひっかかっているこの出来事。

上記は私自身が経験した一例なのですが、Xなどを見ていると

「3歳までは手元に置いておくものよ」

「0歳から保育園にいれるなんてかわいそう」

「育児を人に任せて自分は働くの?子どもが大事じゃないのね」

などという言葉に傷ついている人たちの悲痛な声が見られます。

子育て卒業世代を中心に、母親が働くことは子供に悪影響だという考えがまだ根強く残っているのだと感じます。

保育園に通うことで得られるもの

お母さんが働いていることが子どもの気持ちに影響していないかといえば、それはしているでしょう。さみしい思いをさせていることもあるでしょう。

しかし一方で、保育園で学べることもたくさんあります。

  • 集団生活のルール
  • お友達とのやりとり
  • 少し年上のお兄さんお姉さんへの憧れ
  • 親以外の大人との信頼関係

…など、子どもにとっての学びや成長が保育園にはあると考えられます。

何よりも母親自身にとって、「XXちゃんのお母さん」ではなく「△△さん」という一人の人として生きられる時間があることで、いきいきと暮らせることが、結果的には素敵なお母さんでいられることにつながると思います。

そんな輝いている背中を見せられるのだから、お母さんが働くことは子どもにとって良い影響を与える側面だってあるのではないでしょうか。

海外の研究でわかる保育園が子供に与える影響

ドイツの研究では、育休が半年から1年に延長された前後の子ども達の、学歴・就業状況・所得が調べられ、その結果「母親と一緒に過ごした期間の長さは、子どもの進学状況や所得などにはほぼ影響を与えていない」とわかったそうです。

フランスでは、育休を最長3年間取得できる法律が制定された後に、法改正前後の子どもを比較した調査が実施されました。その結果、早期に保育園に入園した方が6歳時点での言語能力が高いことがわかりました。

このため、フランスでは教育を目的に早期に保育園に入園させたがる傾向もあるそうです。

小さいうちから子どもを保育園に預けたからといって子どもの将来に悪影響が出ることはなく、言語能力に関してはむしろ高くなる結果も出ている、とわかると少し安心できますよね。

フランスの育児には考えさせられる部分が多くあります。フランスで子育てをされている日本人の方にヒアリングを行い、動画にまとめたものもありますので、子育てへの気持ちを軽くするためにもお役立ていただければと思います。

おわりに

働きながら子供を育てるのは、とても大変なことです。

私は夜泣きや寝かしつけに困っているお母さんたちのお話をよく聞きますが、子どもが寝てくれないと自分も寝られない。そして睡眠不足のまま仕事に行かなくてはならない。家事も炊事もしなきゃいけない。

忙しくて睡眠不足で、タスクがてんこもりで…そんな中で保育園を利用することに対して否定的なことを言われてしまうとどんどんネガティブになってしまうのは当たり前ですよね。

共働きをしなきゃと思わされる経済状況も、女性が社会の中で求められるポジションも、2~30年前からは大きく変わっています。

おじいちゃんおばあちゃんになる世代の方にも、母となった女性が働くことを責めず、働きながら子供を大切に育てる方法を模索することにぜひ協力してもらえたら嬉しいです。

お父さんやお母さんは自分たちが働くことで生まれるポジティブな側面もみながら、自信をもって仕事と育児に向き合ってもらえたらと思います。

参考文献)Shintaro Yamaguchi, Yukiko Asai, Ryo Kambayashi (2018),How Does Early Childcare Enrollment Affect Children, Parents, and Their Interactions?, Labour Economics, 55: Pages 56-71
Nabanita Datta Gupta, Marianne Simonsen, Non-cognitive child outcomes and universal high quality child care, Journal of Public Economics, Volume 94, Issues 1–2, 2010, Pages 30-43

乳幼児育児アドバイザー

乳幼児育児アドバイザー。小児スリープコンサルタント。0-3歳モンテッソーリ教師。株式会社mominess代表。YouTube「ねんねママのもっとラクする子育て情報局」やInstagramなどで乳幼児の育児に関する発信を続け、2024年現在、SNSの総フォロワーは19万人超。運営する「寝かしつけ強化クラス」では月間200問以上の睡眠に関する質問回答を行っている。著書に『すぐ寝る、よく寝る 赤ちゃんの本』『〇✕ですぐわかる!ねんねのお悩み消えちゃう本』がある。

ねんねママ(和氣春花)の最近の記事