スタバが“トイレ解放宣言” コーヒーを購入しなくてもトイレを使用できる方針に!
スターバックス会長のハワード・シュルツ氏が、コーヒーの購入いかんにかかわらず、スタバにいる人々がトイレを使用できるようにすると発言して話題を呼んでいる。
シュルツ氏は、米国時間5月10日、ワシントンで行われたイベントで、
「トイレの使用方針とフィラデルフィアの店長の判断は非常に間違っていた」
として、
「当店は公衆トイレにはなりたくはないが、常に正しい判断をして、トイレの鍵を渡すつもりだ。スタバにいる人々に“歓迎されていないからトイレを使わせてくれないのだ”と感じさせたくないからだ」
と“トイレ解放宣言”をしたのだ。
シュルツ氏は「何かを買えばトイレを使うことができるが、使用させるかどうかの判断は各店の店長に委ねるという緩い方針をこれまで採用してきた」という。つまり、店長の判断次第では、購入しなくてもトイレを使用できるところもあれば、購入しなければトイレの使用ができないところもあるわけだ。同社は、客のトイレ使用については明確な方針を持っていなかったと言える。
しかし、先月、フィラデルフィアで、何も注文せずにビジネスパートナーが来るのを待っていた黒人男性がトイレを使わせてもらえなかった上、警察に通報されて逮捕されるという事件が発生、人種差別だと批判を浴びた。
その後、カリフォルニア州トーランスのスタバでも、今年1月、白人の男性にはトイレの使用が許可されたものの、黒人の男性は許可されなかったという人種差別が起きていたことが発覚した。ちなみに、どちらの男性も何も購入していなかった。
シュルツ氏の“トイレ解放宣言”は、これらの事件を受けたものといえる。
同社スポークスマンによると、新たなトイレの使用方針はまだ検討中とのことだが、従業員には“トイレを使用したい人には使わせるようにして下さい。しかし、その客や他の客、パートナーの安全が危険にさらされている場合は、911簡易参照ガイドを使って行動してください”とアドバイスしているという。
スタバは、5月29日、アメリカの8000店の店を閉め、175000人の従業員たちに人種的偏見に関する研修を施すことにしている。
しかし、人種的偏見というのは対処が難しい問題だ。実際、2015年、スタバは“Race Together”(人種は違ってもみな共にあろう)という人種差別をなくすためのキャンペーンを行なって失敗している。これは、バリスタが“Race Together”というメッセージを書いたカップを客に渡す際に、客と人種問題を話し合うことを推奨するキャンペーンだった。
しかし、このキャンペーンが発表されるや否や、SNS上で、「コーヒーを買いに行って、なぜ人種問題の話をしなければならないのか」、「コーヒーを飲む前に人種問題の議論を始めたら、終わらなくなる」、「列ができているスタバで人種問題の話をされたらもっと待たされることになる」、「人種問題のような繊細な問題をよく知らないバリスタと話し合いたくない」、「バリスタと客の間でトラブルが起き訴訟になる」など多数の批判が起きて炎上、キャンペーンは1日も経たぬうちに終了に追い込まれてしまった。
2015年時、客とは話し合いができなかった人種的偏見という問題を、今回、従業員研修をする中で、従業員たちがまず話し合うことになるわけだ。しかし、エキスパートらは人種的偏見という根深い問題は、一朝一夕には解決できないと指摘している。
「脳の中には“潜在的偏見”というものがあるため、人はある特定の人々を無意識のうちに否定的に捉えてしまう。自分の中にある潜在的偏見を知り、脳に偏見の対象に対する見方を変えさせることは可能ではあるが、短期間でできるものではない」(知覚研究所エグゼクティブ・ディレクター、アレクシス・ジョンソン氏)
確かに、各々の従業員が自分の中の人種的偏見に気づいたとしても、それを変えるには長い時間がかかることだろう。同性婚支持を表明したり、銃所持反対を訴えたりするなど社会問題の解決に声をあげてきたシュルツ氏の新たなチャレンジは始まったばかりだ。