アップルがiPhoneのアプリ業者に新たな一撃、利用離れ必至か
米アップルは先ごろ、スマートフォン「iPhone」やタブレット端末「iPad」、パソコン「Mac」用のアプリが収集する個人情報の詳細を開示した。
アプリストアで収集情報を開示
OS(基本ソフト)の刷新版に導入した新ルールで、収集される個人情報の種類や利用法、その最終的な目的といった情報を利用者に開示している。
これに先立つ2020年6月、同社は開発者会議で新たなポリシーを発表。「App Store」でアプリを新規に公開したり、更新したりする際、承認手続きの一環としてアップルが求める質問に回答するようアプリ事業者に義務付けた。その新ルールがこのほど導入された。
具体的には、質問の回答を基にアップルが収集情報を「連絡先情報」や「財務情報」「ID」「位置情報」「検索履歴」「閲覧履歴」「ユーザーコンテンツ」などに分類する。これをApp Store内の各アプリのページにアイコンとともに表示する。
例えば、連絡先情報には、住所やメールアドレス、名前、電話番号などが含まれる場合がある。ユーザーコンテンツには、写真や動画が含まれる場合がある。
詳細な利用目的も表示
また、個人情報がどのように扱われるかを示す以下のラベルも付ける。
「ユーザーのトラッキングに使用されるデータ」
収集された情報は他社アプリやウェブサイト間で利用者を追跡する目的で使用される場合がある
「ユーザーに関連付けられたデータ」
収集された情報が利用者の識別情報に関連付けられる場合がある
「ユーザーに関連付けられないデータ」
情報収集されることはあるものの、利用者の識別情報に関連付けられることはない
「データの収集なし」
アプリが情報を収集することはない
こうしてアプリごとの情報収集の有無や、その大まかな利用法を示したうえで、具体的に何に使われるかといった情報も開示する。例えば、「サードパーティー広告」や「自社の広告とマーケティング」「製品のパーソナライズ」「アプリの機能」「分析」といった具合だ。
アップルは「利用者自身のプライバシーを守るために、アプリ事業者によってデータがどのように取り扱われているのかを確認してほしい」と述べている。
アプリ事業者、「広告収入が著しく減少」と批判
米CNBCによると、アップルはプライバシー保護を強化することで、iPhoneなどの自社製品と米グーグルの「Android」搭載端末の差異化を図っている。
ただ、アプリ内広告によって収益を得ている企業は反発しているという。そうした企業のアプリは前述した「ユーザーのトラッキングに使用されるデータ」のラベルを付けられる可能性があり、利用離れにつながると危惧しているという。
米フェイスブック傘下の対話アプリ「ワッツアップ」は、「アップルのプライバシー・ラベルは、当社の個人情報利用方法を十分に説明していない」と反発しているという。
アップルは、アプリのプライバシー保護に関し、もう1つ新たなルールをまもなく導入する計画だ。ターゲティング広告を導入するアプリ事業者に対し、個々のアプリごとに情報提供の同意を利用者に求めるよう義務付ける。
これにより、多くの利用者が情報提供を拒否すると予想され、アプリ事業者の広告収入が著しく減少するとの批判の声が上がっている。
- (このコラムは「JBpress」2020年12月16日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)