高速はこだて号、大幅減便の衝撃 北海道のドル箱路線にいったい何が!?
北海道中央バスなど4社が共同運行する札幌―函館間の都市間高速バス「高速はこだて号」が、2023年10月1日以降、1日8往復から4往復に減便される。これまで、北海道中央バス、北都交通、函館バス、道南バスの4社よる運行が行なわれてきたが、各社のドライバー不足が原因で、道南バスは共同運行から撤退する。
夜行便も廃止に
各社が発表したプレスリリースによると、現在、札幌―函館間には同区間を5時間40~50分で結ぶ直行便4往復と6時間~6時間5分で結ぶ八雲経由が3.5往復運行されている。現在は、昼の八雲経由便は隔日運行に減便されているほか、夜行便は運休中となっている。
10月1日からは、札幌―函館間の都市間高速バスは、直行便がなくなり八雲経由便の日中4往復のみに減便。運休中の夜行便はそのまま廃止となる見込みだ。全ての便が八雲経由便に変更されることから、直行便に比べて所要時間は20~25分程度増加となる。
バスドライバー事情は年々悪化
筆者はこれまで2023年2月2日付記事(バス免許保有者の81%が50代以上、「鉄道廃止」で地域交通崩壊の危険)を皮切りに、北海道でこのまま「攻めの廃線」を続ければ、鉄道廃止後の代替交通の確保もままならず、北海道の交通崩壊が加速すると警鐘を鳴らし続けてきた。
例えば、北海道中央バスでは2017年頃からドライバー不足が表面化し札幌市内や小樽市内の路線バスの減便を続けてきた。さらに、2022年4月現在のバスドライバーの67%が50代以上で定年は65歳であることから、あと10年もすれば札幌都市圏と都市間高速バス以外の路線は維持できなくなるのではないかと筆者は予想していたが、この10月から都市間高速バスにも減便のメスが入ることからバスドライバー事情は予想以上に深刻化していると考えるべきだろう。
実際に高速はこだて号の運行に携わっているという関係者は「コロナ禍で受けたバス会社のダメージは大きく、営業所の閉鎖などで泣く泣く退職した乗務員も多い」といい「乗務員数はコロナ前の3分の2までに減ってしまった」「現在は、需要の回復で貸切バスが足りなくなっているが、そのような中で路線バスに乗務員を回せない状況になってしまっている」と証言する。また、「需要の多い札幌―函館間についてはむしろJR北海道の特急北斗号に頑張ってもらったほうが適材適所なのでは」とも付け加えた。
警察庁では、毎年発行している運転免許統計で各免許の年代別保有者比率を公開しており、最新版となる令和4年(2022年)度版が2023年4月6日に公開されている。最新版では路線バスを運転できる大型2種免許保有者の83.3%が50代以上となり、前年の80.9%よりも2.4ポイントも高齢化が進行していることが判明した。
こういう話を北海道ですると、「バスと同様に鉄道も深刻な人手不足で維持できない」と主張する方がいる。確かにJR北海道は年間200人の離職者を出しており人手不足が深刻化しているのは事実であるが、それはJR北海道という会社の体質の問題であって、JR北海道が人手不足だから鉄道も人手不足であると結論付けるのは考えが安直だ。今月、開業する宇都宮ライトレールでは運転士の募集に応募が殺到しており、鉄道という仕事に魅力を感じる人が多いのは間違いない事実である。
深刻化する北海道の路線バス
北海道内のバス会社は、ドライバー不足を理由に札幌市や小樽市などの都市部での減便を進めているが、それ以上に深刻なのが北海道の鉄道路線の「攻めの廃線」によりバス転換されたバス路線の持続可能性だ。
2023年3月末限りで廃止となった留萌本線では、鉄道の代替バス路線とされた沿岸バスの留萌旭川線の路線バスについて翌4月に関係自治体とバス路線の存廃協議を行っていることを公表。「攻めの廃線」の流れを作った夕張市においてもこの10月に、夕張市から札幌方面を結ぶ夕鉄バスの広域バス路線が全廃される。廃止の方針を決めた北海道新幹線「並行在来線」の長万部―小樽間についても鉄道代替バスの引き受けについてバス会社との交渉は進んでいない。
欧州では鉄道政策を強化
一方で、欧州はこうした状況とは対極的な状態にあり、脱炭素対策から鉄道の利用促進を図る取り組みが拡大している。特にドイツでは、道路の維持は安価ではないとして、連邦予算では鉄道には道路を上回る予算額が配分され、今後は廃止路線を復活させる計画も進められている。
自動運転についても、鉄道のほうが線路によって進路を固定されていることから、自動車の自動運転より実現のための技術的なハードルは低く、「ゆりかもめ」や「つくばエクスプレス」などではすでに自動運転が実現している。
こうしたことから、バスドライバー不足を発端とした交通崩壊だけではなく、トラックドライバーの労働規制が強化される2024年問題による物流危機を防ぐためにも、再び北海道でも新しい形での鉄道整備が見直されてもよいのではないだろうか。
(了)