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バス免許保有者の81%が50代以上、「鉄道廃止」で地域交通崩壊の危険

鉄道乗蔵鉄道ライター

 JR北海道の経営危機問題に始まり、JR西日本やJR東日本も赤字路線の収支を公開したことで全国に危機感が広がっているローカル線の存続問題。これまで、鉄道路線の廃止が選択された場合は、バス路線で代替するケースが一般的であったが、昨今、バスドライバー不足と高齢化問題が深刻化しており、安易に鉄道路線を廃止してしまうと地域交通そのものを崩壊させかねない危険がある。

 警察庁では、毎年、運転免許の年齢別、種類別の保有者数など運転免許にかかわる数値データを1年分まとめた「運転免許統計」を毎年、発行している。2021年度の運転免許統計によると、路線バスを運転できる大型2種免許の保有者の81%が50代以上に上り、これから働き盛りを迎える30代以下の保有者はわずか5.1%しかいない。

2021年度「運転免許統計」より筆者作成
2021年度「運転免許統計」より筆者作成

 鉄道路線を廃止してバスに転換しようとしても、バスを運転できるドライバーが存在しなくなることから、強引に鉄道路線を廃止してしまうと地域の公共交通そのものを崩壊させかねない事態となる。

 2030年度末に予定されている北海道新幹線の札幌延伸開業に伴いJR北海道から経営が分離される函館本線の長万部―小樽間140.2kmについては、輸送密度が2000人を超えている余市―小樽間も含めて全線での廃止の方針が決定されている。

 しかし、受け皿となる北海道中央バスは、2017年よりバスドライバー不足を理由として小樽市内路線の減便に踏み切り、近隣路線の減便や廃止を進めている。さらにこの2022年から2023年の年末年始にかけては、小樽市内路線や余市―小樽線の終日運休や大幅な減便を実施した。それほどまでにバスドライバー不足の問題は深刻化しており、特に余市―小樽間の鉄道と同等の輸送力を本当にバスでカバーできるのかを危惧する声が上がっている。

 2022年7月、国土交通省は、全国で問題が表面化したJRのローカル線問題について「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」を取りまとめた。この提言では、「輸送密度が1000人未満の路線は見直し」という点ばかりが大きく報道されたが、実は地方交通の再構築の方向性として他に重要な点が盛り込まれている。

 鉄道として再生する場合には、地域戦略と利用者の視点に立った鉄道の徹底的な活用と競争力の回復に向け、鉄道輸送の高度化に取り組んでいくこと。BRTやバスに転換する場合には、運行コストを削減しつつ、増便、ルート変更、バス停の新設により鉄道と同等又はそれ以上の利便性を実現していくことが示され、地方交通の再構築の方向性についてはいずれも現状の鉄道よりも利便性向上を図ることが前提とされた。

 バスドライバーの人手不足と高齢化が進行する中で、地方交通の再構築を考えた場合、今ある鉄道を活かすことを考えることが最も現実的な選択肢になるのではないだろうか。

朝ラッシュ時の余市駅の様子
朝ラッシュ時の余市駅の様子

#鉄道 #ローカル線・公共交通

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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