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ツイートでエリザベス女王の“耐え難い痛み”を願った米名門大准教授に非難殺到 アマゾンのベゾス氏も批判

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 エリザベス女王が逝去され、世界が深い悲しみに包まれる中、米国の名門カーネギー・メロン大学の准教授がしたツイートが大きな非難を浴びている。

ベゾス氏も批判

 同大学で応用言語学を教えるウジュ・アーニャ准教授は、8日、エリザベス女王が主治医の観察下に置かれたことを知った時、こうツイートした。

「泥棒で性的暴行をした大量虐殺帝国の君主がついに死にかけていると聞いた。彼女の痛みが耐え難いものでありますように」

 数時間で1万回以上リツイートされたというこのツイートには「これはひどい。よくもそんなに冒涜できるわね」「悪以外の何ものでもない」「彼女がクビになりますように」「これは“言論の自由”ではなく、ヘイトスピーチだ」などの非難が殺到。

 アマゾンのジェフ・ベゾス氏も「こちらは、世界をより良くしようと取り組んでいると考えられている人なのか? 僕はそうは思わない。ワオ」とツイートして批判した。

 アーニャ氏はその批判に対し、ベゾス氏に「あなたとあなたの無慈悲な欲望が傷つけてきた世界のみんなが、私が私の国を植民地化した人々のことを記憶に留めているのと同じくらい懐かしく、あなたのことを記憶に留めますように」と皮肉なお返しのツイートをしている。

 また、アーニャ氏は「なぜあなたは、かけがえのないエリザベス女王の死を願っているのか?」というツイッターでの問いに対し、こう答えていた。

「私は彼女の死を願ってはいない。彼女はすでに死にかけている。私は、彼女が何百万人もの人々に対して引き起こした死のような苦痛に満ちた死を彼女が迎えることを願っている」

 カーネギー・メロン大学は、アーニャ氏のツイートに対し「我々は攻撃的で不愉快なメッセージを容赦しない。自由な表現は高等教育の使命の核となっているが、彼女がシェアした見解は、大学の価値観や我々が育成しようとしている言説の基準を全然代表するものではない」と声明を出して非難した。

議論はイギリスの植民地主義に

 アーニャ氏の問題のツイートは、「ルール違反」という理由でツイッター側からすでに削除されたが、以下のツイートは今も掲載されている。

「虐殺し、私のファミリーの半数の住処を奪ったジェノサイドを支持した政府を監督した君主と、こんにち生存している人々が今も克服しようとしているジェノサイドの結果に対し、軽蔑以外の言葉を私に期待しているなら、星に願い続けるといいわ」

 ちなみに同氏は、1960年までイギリスの植民地だったナイジェリア生まれで、10歳の時に米国に移住している。

 ツイッターではイギリスの植民地主義のことも盛んに議論されている。

「私はイギリスの植民地主義の産物だ。私の先祖は、イギリスのサトウキビ・プランテーションで働くためにインドから連れてこられた。誰もが自分の見解を表明する権利はあるが、私は彼女がしたような発言はしない」

と“言論の自由”を尊重しつつも、アーニャ氏の発言を否定する声や、

「今は植民地主義のことを議論する時ではない」

と今は喪に服すべき時とする声や、それに対し、

「“今は植民地主義のネガティブなインパクトを話す適切な時ではない”ということに対する質問。だったらいつ話すのが適切なんだ?」

と今植民地主義のことを話すことも適切だとアーニャ氏の発言を擁護する声もある。

NYタイムズの意見記事も批判される

 米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、カレン・アティアー氏はツイッターで以下の見方を示している。

「イギリスの植民地主義の下で、恐ろしい残虐行為と経済的剥奪を被った世界中の黒人やブラウンの人々は、エリザベス女王について感情を持つことは許されている。結局のところ、彼らも彼女の支配を受けていた」

 また、米紙ニューヨーク・タイムズは「我々は彼女の時代を美化すべきではない。女王は脱植民地化の血まみれの歴史を曖昧にした」とするハーバード大学の歴史学教授の意見記事を掲載し、「逝去された日に出すべき記事ではない」と攻撃を受けている。

 著名人の逝去に際し、アメリカの大学の教授がしたツイートがバッシングされる騒動はこれまでも起きている。2018年に、バーバラ・ブッシュ元大統領夫人が逝去した際には、カリフォルニア州立大学の教授が「あの鬼婆が死んで嬉しいわ。150万人のイラクの人々が死んだように(2003年のイラク侵攻以降、亡くなったイラク人の数は少なくとも150万人と推定されている)、彼女の残りの家族が死ぬのが待ち遠しいわ」とツイートして批判された。

 この時は、この教授の即刻解雇を呼びかけるオンライン・キャンペーンも立ち上げられたが、米国自由人権協会をはじめとする個人の権利と自由を守る7団体は教授を擁護、大学側は当初「“言論の自由”で済まされることではない」と非難したものの、結局「言論の自由」という理由からこの教授は懲戒解雇になることはなかった。

 アーニャ氏のツイートに関しては、個人の権利と表現のための財団が、カーネギー・メロン大学あての手紙の中で、世論の圧力に耐え、「言論の自由」にコミットしてアーニャ氏を罰しないよう訴えている。

 大学側がアーニャ氏にどう対処するか注目されるところだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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