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台風10号が熱帯低気圧に変わっても風が弱くなるだけで雨の危険性は同じ

饒村曜気象予報士
鹿児島県上陸後中心付近の雲の形が崩れた台風10号(8月30日15時)

台風10号の上陸と熱帯低気圧化

 非常に強い台風10号が、8月29日8時頃、鹿児島県薩摩川内市付近に上陸し、九州を縦断し、現在は四国を横断中です。

図1 台風10号の進路予報と海面水温(8月30日21時)
図1 台風10号の進路予報と海面水温(8月30日21時)

 台風10号は、台風を動かす上空の風が弱いために動きは遅く、8月31日になっても、まだ近畿です。台風に関する情報は最新のものをお使いください

 台風10号が薩摩川内市付近に上陸した頃は、中心気圧が935ヘクトパスカル、最大風速50メートル(最大瞬間風速70メートル)で、九州南部では、暴風・波浪・高潮の各特別警報が発表となりました。

 しかし、台風10号は上陸後に暴風域はなくなり、8月30日21時の段階では、中心気圧996ヘクトパスカル、最大風速18メートル(最大瞬間風速25メートル)まで衰えています。

 台風の定義が、「北西太平洋で最大風速が17.2メートル以上」ですので、この風速基準をわずかに上回る、ギリギリの台風で、台風10号の雲の形は、中心を取り巻く渦巻きから崩れています(タイトル画像)。

 そして、9月1日21時までに、最大風速が17.2メートル未満に衰え、三重県に達する頃には熱帯低気圧に変わる見込みです。

 ただ、衰えるといっても風の話であり、雨は全く別の話です。

台風10号と台風周辺の大雨に警戒

 台風10号の動きが遅いため、台風周辺の雨雲により強い雨が長時間続き、九州や四国では線状降水帯が発生するなどして大雨になっています。

 加えて、台風周辺の暖かくて湿った空気が北上したため、近畿から東北まで局地的な大雨になりました。

 記録的短時間大雨情報が14回も発表となっていますが、その多くは台風から離れた場所でした。

【記録的短時間大雨情報(8月27日以降)】
8月27日19時10分 岩手県・盛岡市北部付近で約100ミリ
8月27日19時20分 岩手県・盛岡市南部付近で約100ミリ
8月27日20時20分 岩手県・盛岡市北部付近で約100ミリ
8月27日20時20分 岩手県・盛岡市薮川で100ミリ
8月27日20時40分 兵庫県・佐用町付近で約110ミリ
8月28日15時00分 鹿児島県・屋久島町北部付近で約120ミリ
8月28日18時00分 岩手県・北上市付近で約110ミリ
8月29日02時00分 宮崎県・美郷町付近で約120ミリ
8月29日18時10分 香川県・東かがわ市付近で約90ミリ
8月29日18時30分 香川県・東かがわ市付近で約110ミリ
8月29日18時30分 徳島県・上板町付近で約110ミリ
8月29日18時50分 徳島県・鳴門市付近で約120ミリ
8月29日19時20分 香川県・小豆島町付近で約90ミリ
8月29日20時10分 兵庫県・南あわじ市付近で約110ミリ

 8月27日0時から30日24時までの96時間降水量は、宮崎県・えびの高原で911.0ミリ、宮崎県・神門で820.5ミリ、静岡県・天城山の650.0ミリなど、西日本から東日本の太平洋側では400ミリを超えています(図2)。

図2 96時間降水量(8月27日0時から30日24時までの96時間)
図2 96時間降水量(8月27日0時から30日24時までの96時間)

 予報天気図をみると、台風10号周辺の暖かくて湿った空気の北上に対応している熱帯低気圧が関東の東海上から北海道に進む予想となっています(図3)。

図3 地上天気図(左:8月30日21時)と予想天気図(右:8月31日9時の予想)
図3 地上天気図(左:8月30日21時)と予想天気図(右:8月31日9時の予想)

 雨の中心は台風10号周辺から台風10号にともなって暖かくて湿った空気が流入している東海から関東南岸、北日本の太平洋側に移りそうです(図4)。

図4 72時間予想降水量(8月31日3時から9月3日3時までの72時間予想)
図4 72時間予想降水量(8月31日3時から9月3日3時までの72時間予想)

 特に東海地方では、これまでにかなりの大雨が降っているところに300ミリから500ミリの雨が降る見込みですので、土砂災害等には厳重な警戒が必要です。

 また、台風から遠く離れている北海道東部も200ミリ以上の雨が予想されており、油断することなく警戒してください。

タイトル画像、図1、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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