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ハリポタ「炎のゴブレット」今夜放送。間もなく公開の映画で、ロン役ルパート・グリントの変貌に備えよ!

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『ノック 終末の訪問者』より

3/17、TBS系列で放映される『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』。シリーズ4作目で、ちょうど中間点に位置することから、メインキャストたちの初々しさと大人っぽさの境界線を感じられる作品になっている。

物語としても、ホグワーツなど三大魔法学校の対抗試合がメインになり、水中シーンやドラゴンとの対決などスペクタクル感が満載で、シリーズの中でも映像は屈指の仕上がり。

今年のアカデミー賞で『イニシェリン島の精霊』で助演男優賞にノミネートされたブレンダン・グリーソンが、マッド・アイ・ムーディ先生役で登場していたし、ハリーのライバル選手で壮絶な運命をとげるセドリック役に、まだ無名だったロバート・パティンソンを大抜擢。パティンソンはその後、「トワイライト」シリーズ、バットマン役などで演技派トップスターの地位へと上り詰めることになる。

もちろんメインキャストの3人も、シリーズの後、それぞれ活躍しているが、いま注目したいのは、ロン役のルパート・グリントだ。

『炎のゴブレット』では舞踏会のシーンでちょっとダサめの衣装で現れたりと、笑いのパートを担っていたロン。撮影現場ではルパートも「あのローブを初めて見た時は、こんなもの着られるか!と思ったよ」と告白していた。そんな同作から18年。今年の4/7に日本で公開される『ノック 終末の訪問者』では、とぼけた味も魅力だったロンとはまったく違うルパート・グリントに、「ハリポタ」ファンも多大な衝撃を受けることは間違いない。ルパートは現在、34歳。年齢を考えれば当然の変化ではあり、役になりきるのが俳優の仕事ではあるが、それにしてもロン役とのギャップがあまりにも大きい。

『ノック 終末の訪問者』はM.ナイト・シャマラン監督の新作。『シックス・センス』から近作の『オールド』まで、つねに大胆奇抜なシチュエーションを仕掛けてくる鬼才で、今回もその才能がいかんなく発揮される。

森の奥のキャビンで休暇を過ごす3人家族の前に、謎めいた訪問者が現れ、「いま世界は滅亡に向かっている。阻止するには、3人家族の誰かの命を犠牲にしなければならない」と通告してくる。究極の選択。さて、どうなるかーー。シャマラン映画なので、ここから先の展開、絶対に明かせないのは、いつものこと。

ここでルパートが演じるのは、訪問者グループの一人、レドモンド。この記事のタイトル写真からわかるとおり、肉体全体が大きくなり、どこか目も虚ろ。怪しい中年男性という印象で、ロン役の面影は一切消えている。「ハリポタ」ファンにとっては、こうした俳優の成長を確認するうえで『ノック』は必見の一作だろう。

『炎のゴブレット』が完成し、取材イベントでのルパート・グリント(左)
『炎のゴブレット』が完成し、取材イベントでのルパート・グリント(左)写真:ロイター/アフロ

ハリー役のダニエル・ラドクリフ、ハーマイオニー役のエマ・ワトソンに比べると、ルパート・グリントは「ハリポタ」卒業後、俳優としての活躍があまり日本に伝わってこなかった。しかしブロードウェイの舞台に立ったり、母国イギリスを中心に映画やドラマ、またアニメの声優などで地道に俳優業を継続。2019年にはシャマランがプロデュースしたTVシリーズ「サーヴァント ターナー家の子守」にメインキャストとして出演。その縁で今回の『ノック』にも呼ばれたのだろう。

『炎のゴブレット』の後、一時は俳優を辞めようと考えたこともあるというルパート・グリント。『炎のゴブレット』で取材した際も「役者業がダメになったら、昔からの夢だったアイスクリーム屋をやる」と本気で話していた彼は、その後、実際にアイスクリーム販売用のトラックを購入し、夢をかなえた。そんなエピソードを聞くだけで彼のキャラが伝わってきて微笑ましい。そして2020年に娘が誕生し、私生活も順調であることをルパートはインスタグラムなどで報告するようになった。

子役時代に注目が集まりすぎることで、その後の人生に失敗するケースも多いなか、こうして話題作で顔をみせ、俳優としての成長を示しているルパート・グリント。「ハリポタ」のファンは、これからも彼のことを応援し続けてほしいと心から願う。

娘を抱くルパート・グリント。2022年、ニューヨークにて
娘を抱くルパート・グリント。2022年、ニューヨークにて写真:Splash/アフロ

『ノック 終末の訪問者』

4月7日(金)より全国ロードショー

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映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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