Yahoo!ニュース

ついにヤーガも現役続行を断念!? <仕事にあぶれるアラフォーたち・NHLの場合>

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHL歴代2位のポイントを記録している45歳のヤロミール・ヤーガ(写真:ロイター/アフロ)

 明日から8月に入り、これから夏本番となりますが、2か月後にはNHLのレギュラーシーズンが開幕! 世界中のホッケーファンが、ワクワク感を高め始める頃を迎えます。

▼ヤーガへのオファーは未だにゼロ

 ファンがワクワクし始める一方で、気が気でないのは、まだ契約を結んでいない選手たち。なかでも注目されるのは、”氷上のレジェンド” こと、ヤロミール・ヤーガ(45歳・FW)

 NHL歴代2位のポイント(ゴール+アシスト)をマークし、スタンレーカップ(NHLのチャンピオントロフィー)を2度獲得。さらに、ハートトロフィー(レギュラーシーズンMVP)も受賞するなど、これまでの足跡を称えると、枚挙にいとまがありません。

 しかし、2月に45歳となったヤーガは、昨季終了をもってフロリダ パンサーズとの契約が満了したあと、NHLチームからのオファーが全く届かず。

 唯一、オファーがあったのは、NHLの二つ下のリーグに相当する ECHL のチームだけという現状です。

▼おらが街のスーパースター

 昨年10月に当サイトで紹介したように、ヤーガは自らも所属していた生まれ故郷のチームが、財政難に陥り続けている苦境を救おうと、チームの運営権を買い取ってオーナーに就任。

 オフの間は、小さい頃から過ごしていた故郷へ戻って、精力的にオーナー職を務めています。

 ヤーガが生まれ育ったチェコのクラドノは、人口7万人前後の小さな街とあって、ヤーガは掛け値なしに「おらが街のスーパースター!」

 ホッケースクールに参加して、サインをもらったり、一緒に写真を撮ってもらった子供たちが、本当にうれしそうな表情を浮かべています!!

▼NHLからリタイアする?

 しかし、微笑ましい光景とは裏腹に、前述のとおり、フロリダとの契約が満了し、フリージェント権を手にしたものの、本人が明言し続けてきた「NHL(のチーム)でプレーする」という言葉を叶えられるのか? 疑問視するメディアも増えてきました。

 実際にヤーガ自身も、これまで「NHLでプレーをする」と言い続け、一週間前にも「NHLでプレーできないほどの選手だと思っていない!」とチェコのメディアの前で口にしたそうですが、クラドノでのホッケースクールの合間には、一転して「いくつかの選択肢がある。クラドノもその一つだ」とも話していたとのこと。

 ヤーガの中で、「NHLでのプレーからはリタイアする」という気持ちが、大きくなり始めているのかもしれません。

▼仕事にあぶれるアラフォー選手

 もっとも「NHLチームでのプレーからはリタイアする」という気持ちを抱いている選手は、ヤーガに限ったことではありません。

 今月1日(現地時間)から、所属チーム以外とのFA移籍が解禁となりましたが、1か月経っても新しいチームが決まっていない中には、、、

シェーン・ドーン(40歳)=アリゾナコヨーテス一筋にプレーし、キャプテンを担ってきたFW

ジャローム・イギンラ(40歳)=カルガリー在籍時に長年キャプテンを担い、得点王に輝いた実績を誇るFW

ブライアン・キャンベル(38歳)=シカゴ49季ぶり優勝の立役者の一人で、オールスターゲームに4回出場したDF

などを筆頭に、「これまでNHLのトッププレーヤーとして活躍してきたアラフォー(40歳前後)の選手たちが、多く含まれているのです!

▼理由はサラリーキャップとスピード時代の到来

 このような傾向が強くなってきたのには、二つの理由が挙げられます。

 まず一つ目は「サラリーキャップ」(チーム年俸総額制限)

 輝かしい実績を残してきたベテラン選手だけに、当然の見返りとして年俸もアップし続けてきたことが、逆にチームの顔ぶれを決めていくGMにとっては足かせに。

 サラリーキャップの残り額を考えながら、「もうこれ以上、レベルアップする選手ではない」と判断し、年俸が高くない若手選手へスイッチするGMが多く見られます。

 そして、もう一つは、「スピード時代の到来」

 2000年代初頭までのNHLは、まさしく氷上の格闘技と呼ぶべき、激しい肉弾戦がNHLの魅力となっていました。

 しかし、激しいボディチェックが行き過ぎて、不当なヒット。それも、相手の頭部近くを狙う悪質なヒットが目立ち始め、ドラフト全体1位で指名され、次世代のスーパースター候補と目されながら、脳震盪に悩まされたエリック・リンドロス(元フィラデルフィア フライヤーズFW)のような選手も・・・。

 そのため、頭部を狙うヒットや、スティックを用いた不当なチェックを、レフェリーが厳格にジャッジするようになったことから、スピードを武器に台頭する選手が、増えてきたのです。

▼日本人にチャンス到来 !?

 このような傾向は、日本のアイスホッケーにとって大歓迎。

 身長や体格で勝負するのはシビアな日本人選手にとって、逆にスケーティングやプレーのスピードと精度を武器に、アピールすることができるからです。

 昨年10月18日に配信した 「今季最初のNHLスリースターの顔ぶれを見ると、日本人NHLプレーヤーの出現も夢ではないかもしれない」で紹介した ネイサン・ガービー(30歳・元バッファロー セイバーズFW)のように、「身長165cmのNHLプレーヤー」も!

身長165cmのNHL選手 #42ネイサン・ガービー(Photo:Jiro Kato))
身長165cmのNHL選手 #42ネイサン・ガービー(Photo:Jiro Kato))

この事実を目の当たりにすると、福藤豊に続く、「日本人二人目のNHLプレーヤー誕生」も、決して夢ではないのかもしれません?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

加藤じろうの最近の記事