2024年に見るべきレース五選 〜モータースポーツの新時代ここにあり〜
北陸の大地震、羽田空港での飛行機事故と悲しいニュースの連続という幕開けとなった2024年だが、お正月休みが終わりモータースポーツ界も徐々に動き出し始めた。今年のモータースポーツ界では年末年始からビッグニュースが続いている。どのニュースもちょっと前では現実的では無い類のものだったが、モータースポーツ界はいとも簡単にそのハードルを超え、新時代を迎えようとしている。
今回はモータースポーツ界のホットな話題を盛り込みつつ「2024年に見ておくべきレース五選」と題して、今年注目したいレースイベントをご紹介しよう。
いよいよ東京へ!フォーミュラeが初の公道レースを開催!
2024年最初の注目レースは日本初開催となる「フォーミュラe世界選手権」の東京開催だ。3月30日(土)に東京都・お台場の市街地コースを使って行われる、国内史上初の本格的な国際レースだ。行動を使ったモータースポーツはすでにWRC(世界ラリー選手権)がメジャーであり、レースでは島根県でレーシングカートの公道レースが開催されたため、史上初という表現には語弊があるが、世界選手権クラスの自動車レースという意味では初であるため歴史的意味は大きい。
しかも電気自動車レースの最高峰「フォーミュラe」ということで、この春はこの話題で持ちきりになるだろう。同レースは今年で10年目のシーズンを迎え、日本のメーカーとしては電気自動車を多数リリースしている日産自動車がワークス参戦している。今季も日本人ドライバーの参戦はないのが残念だが、かつてSUPER GTなどで活躍したニック・キャシディ(ジャガー)やサッシャ・フェネストラズ(ニッサン)らが優勝を狙える体制で参戦することもあり、国内モータースポーツファンからの関心も高い。
近年、お台場では様々なモータースポーツイベントが開催されているが、首都・東京で開催される世界選手権レースのインパクトは絶大。大成功に導けば、今後さらなる市街地レース開催の機運が高まっていくに違いない。まさに歴史の転換点となるレースになりそうだ。
F1は日本グランプリが初の春開催に
フォーミュラe・東京大会の翌週、4月5日〜7日には「F1世界選手権」の日本グランプリレースが鈴鹿サーキット(三重県)で開催される。
これまで秋〜冬のシーズン終盤戦に設定されてきた日本グランプリだが、今年は初めての春開催。4月の年度初めというイベント開催には不向きな時期だが、春開催に移った背景には世界を転戦するF1の移動スケジュールに大きな理由がある。F1はCO2排出量の削減などSDGsの取り組みを重要視しており、オーストラリア→日本→中国という、効率の良い転戦スケジュールにプライオリティを置いた。
今年は第4戦としての開催となり、これまでのようなチャンピオン決定の場となる楽しみが無くなったものの、ちょうど桜の咲く時期であり、インバウンドの集客も期待できる。
レースの注目は4年目のシーズンを迎える角田裕毅の活躍だ。角田にとって今季はトップチームの「レッドブル」入りをかけた正念場となるシーズン。母国グランプリで好成績を残し、波に乗っていく角田の活躍に期待したい。
また、今年は日本人がF1チームのチーム代表者になることが先日発表された。アメリカ国籍チーム「ハース」のチーム代表に就任したのは、F1を代表するエンジニアの小松礼雄(こまつ・あやお)。厳しいF1の世界で実績を残し、チームを統率する立場まで上り詰めた小松が迎える特別な母国グランプリになる。
初の女性ドライバー、Jujuも参戦のスーパーフォーミュラ
今年最初の大きなニュースとなったのは、やはり17歳の女子高生ドライバー、Jujuのスーパーフォーミュラ参戦だ。元F1ドライバーの野田英樹を父に持ち、9歳からフォーミュラカーをドライブしてきたJujuは開幕時点で18歳という若さで、国内最高峰の「スーパーフォーミュラ」に参戦する。異例の若さで、しかも前例が少ない女性ドライバーの参戦ということで早くも多数のテレビ番組で参戦決定のニュースが取り上げられている。モータースポーツの一般層への訴求という意味では非常に大きなトピックスだ
とはいえ、今のスーパーフォーミュラのレベルは簡単に上位を走れるものではない。今年は角田の次にF1候補生として控える岩佐歩夢、F2チャンピオンのテオ・プルシエールら注目のルーキーが参戦する。彼らを迎え撃つライバルたちはほとんどがトヨタ、ホンダの育成ドライバーとして非凡な才能を発揮してきた逸材揃いだ。かつてないほどの実力派揃いとなったスーパーフォーミュラはそのレースが生み出すドラマでも大いなる注目を浴びるだろう。
鈴鹿8耐に黒舟来襲!ドゥカティの参戦で潮目が変わる?
2輪レースでは昨年末に衝撃的なニュースが届けられた。国内最高峰の全日本ロードレース・JSB1000クラス、そして夏の鈴鹿8時間耐久ロードレースに、イタリアの「ドゥカティ」で参戦するチームが現れた。鈴鹿8耐ウイナーの加賀山修臣(かがやま・ゆきお)が率いる「Team KAGAYAMA」がドゥカティ・パニガーレV4Rで参戦することを発表したの
詳細の発表はこれからだが、ファクトリーマシン(ワークスマシン)での参戦という。現状、優勝争いは国内メーカーのトップチームが独占してきた全日本JSB1000、鈴鹿8耐に、「スーパーバイク世界選手権」を2連覇したドゥカティが参戦する。この挑戦は国内2輪レース界に新たな魅力をもたらすことになるだろう。
エースライダーは昨年JSB1000で2勝した水野涼。鈴鹿8耐への参戦も表明しているので、気になるのはそのチームメイト。今年の鈴鹿8耐は7月21日(日)に決勝を予定しており、その週末は「MotoGP」と日程がバッティングしていないため、ドゥカティと契約する現役MotoGPライダーの参戦も期待したいところだ。
14ものメーカーが参戦するFIA WEC、ル・マン24時間
今年、とんでもない規模に成長を遂げたレースといえば、6月のル・マン24時間レースを中心とする「FIA WEC(世界耐久選手権)」だ。
総合優勝を争う「Hyper Car」クラスにはトヨタ、フェラーリ、ポルシェ、プジョー、キャデラックに加えて、アルピーヌ、ランボルギーニ、BMW、イソッタフラスキーニが参戦。さらに再編されたGTカークラス「LMGT3」クラスにはアストンマーティン、BMW、ポルシェ、フェラーリ、フォード、シボレー、マクラーレン、ランボルギーニ、レクサスが参戦を表明。まさに世界の自動車メーカー、スポーツカーの大競演になる。
豪華なのはメーカーの参戦だけではない。潤沢な投資に反映される形で、ドライバーラインナップもすごいのだ。ジェンソン・バトン(ポルシェ)、ダニール・クビアト(ランボルギーニ)、ミック・シューマッハ(アルピーヌ)ら元F1ドライバーが多数参戦を発表している他、LMGT3クラスには元MotoGPワールドチャンピオンにして2輪界の大スター、ヴァレンティーノ・ロッシ(BMW)まで参戦する。人気選手たちの参戦により、今シーズンは史上最も華やかなレースになることは間違いない。