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子育てがしやすい国ノルウェーで働く女性リーダー 15時以降は社員が続々と退社、生産性が高い働き方とは

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
15時を過ぎたら子どもを幼稚園までお迎えに Photo:Asaki Abumi

女性にとって働きやすい国、子育てがしやすい国など、世界ランキングで上位を独占する北欧各国。ノルウェーでは、女性たちはどのようなライフスタイルを送っているのでしょうか?今回は、北欧で最大級のIT企業のひとつであるEvry社で、女性リーダーとしてノルウェーの首都オスロで働く方にお話しを伺いました。

スペイン生まれでノルウェー育ちのイヴォン・リヴェーラさんは、チリ人のパートナーと一緒に、7才と16才の子どもを育てています。

イヴォンさんの1日のスケジュール

  • 6:15 息子を起こし、服を着せ、朝食を食べさせる
  • 7:00 メールの返事、コーヒーを飲む(朝食はあまりとらない)
  • 7:30 幼稚園に息子を預ける
  • 7:50 会社に到着
  • 10:30~11:00 早めのランチ、20分間ほど(ノルウェーでは、多くの人のランチ時間は短い!)
  • 15~16時 息子を幼稚園にまで迎えに行
  • 16:30~17:00夕飯を作るのはパパ、その間イヴォンさんは身体を鍛えるためにトレーニング。夕食
  • 17:00~19:00 イヴォンさんのルール「この時間帯は電話に出たり、仕事のメールの返事をしない」。子どもにシャワーを浴びせたり、夜食を食べさせたり、本の読み聞かせをする
  • 20:00 息子が寝る時間。夜は家で仕事をすることもある
  • 週末のルール:土曜日は何も仕事をしない日。日曜日は重要案件のみ仕事をする

※ノルウェーでの労働時間は週40時間

待機児童数がゼロのオスロ!

働く親たちを支えるのは、育児支援に積極的な政治家による様々な政策支援。現在のオスロは待機児童数が事実上ゼロとなっています。

「現在のオスロでは、1才になってからではないと公立幼稚園には入園できないようですが、規則変更前は、私の娘は生後10か月で、息子は1才で入園できました。ラッキーでしたね」。子どもたちが小学生の頃は、放課後に学童保育所も積極的に活用。

効率の良い働き方をするための、上司としての心得。残業は何かがおかしいことのサイン

「上司は、部下の仕事内容を把握していることが大事。もし、部下が何日も残業をしていたら、なにかがおかしいということです。その時、上司にできることは、部下に話しかけ、課題の優先順位を変えたり、いくつかの作業をあえて手放すこと。私は、過剰な残業が正しいとは思いません。その管理をするのが上司の仕事です」。

「メールの返答の期日を伝えておくことも手助けになります。社員の多くはすぐに返事をしなければいけないと思ってしまいがちですからね」。

ノルウェーにもまだまだ改善すべき点はある。集まることが大好き?

「私が知る限りでは、ノルウェーの人々はやけにミーティングが好きですね。この習慣にはもっと批判的になるべきだと思います。同じことを話していてばかりで、先に進まないことも。“本当に必要な集まりなの?予定表を見ても、目新しいことはないけれど。話し合うべきことがあるの?”と、思い切って声を出すことも大事です。ミーティングばかりでは、メールの返事をするなど、ほかの作業ができず、非効率的で、悪循環になってしまいがちです」。

イヴォンさんの会議が多すぎるのではという指摘は、筆者も同意する部分。政治家の大規模なカンファレンスを含め、同じことを繰り返すことが多く、お金と時間をかけて開催する必要があったのかな?と思うことがあります。みんなと集まりたがる傾向は、普段はシャイなノルウェー人が人脈を広め、連帯感を強めたいとする土地柄が関係しているのかもしれません。

イヴォンさんにとって、効率的に働くということは?

「何もしない日があることが重要。カレンダーに空欄があること。その時間帯に、静かに座って、プロジェクトのことなどを考えることができます」。

Evry社の広報であるミロス・ラドス氏はこう付け加えます。「仕事場にいるとき、社員は100%全力で生産的な仕事をします。そのあとは、フリータイム。しっかりとエネルギーを充電してもらいます。仕事場でも頭を休憩させることは大事です。もし、毎日遅くまで仕事をしていたら、私だって疲れてしまい、生産的な仕事をすることはできないでしょう」。

15時以降には社員の多くは帰宅!

Evry社での一般的な就業時間はどうなっているのでしょう?

「オフィスに必ずいなければいけない時間帯は9:00~15:00。加えて、柔軟に時間を調節できる時間帯が7:00~19:00。例えば、7:00に出社して15時に帰宅することなど、自分で労働時間は調節できます。Evry社では、15時以降になると、社員の多くが帰宅していますよ」。

そんなに早く帰宅して、しっかり仕事をしているのか誰も気にしないのでしょうか?ノルウェーは、他国と比較しても、他者への信頼度が非常に高い国だとイヴォンさんは話します。

「私は、15時以降には子どもを幼稚園に迎えにいく必要があります。だからといって、私がちゃんと仕事をしているか、上司がチェックするということはありません。この国では、自分の日常は自分で管理します」。

ノルウェーは女性に働くチャンスを与える国。選ぶのは女性

女性を上司に割り当てるなどのクオーター制度についてはどう思っているのか聞いてみました。「いいとは思いますよ。もし、それを女性が望んでいるのであれば。ノルウェーは、働くという選択肢を提供する国です。このような“選ぶチャンス”は、どこの国にでもあるというわけではありません」。

「ノルウェーでは、女性がたくさん働き、そしてママになることが可能です。子どもをもつのは女性だけではありません。パートナー同士が一緒に子どもを育てるのです。ノルウェーでは、男性がもっと育児に関わりたいと自ら望んでいます。もし、日本の男性にも考え方を変えてもらいたいと思うのであれば、女性もその意思表示をしなければいけません。男性はもっと女性と仕事を分担するべき。男性が、本当に子どもと良い関係を築きたいと思っているのであれば」。

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Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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