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箱根駅伝を制した青学の「ハーモニー大作戦」は、ビジネスでも通用するか?

横山信弘経営コラムニスト
第94回箱根駅伝は、青学の4連覇で幕を閉じた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

第94回箱根駅伝は、青山学院大学の4連覇で幕を閉じました。優勝の原動力になったのが「ハーモニー大作戦」です。

2017年12月、原晋監督は記者会見において、「オーケストラのような美しいハーモニーを奏でることができれば優勝できる」と言い、「ハーモニー大作戦」と名付けて、2018年の箱根駅伝をたたかうと宣言しました。

結局この「ハーモニー大作戦」、みごとに選手たちが監督の期待にこたえ、青学は優勝することになるのです。

さて、大成功した作戦は、はたしてビジネスにおいても通用するのでしょうか? 私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。事業目標を絶対達成させるうえで、この「ハーモニー大作戦」が有効かを検証したいと思います。

その前に、なぜ「ハーモニー大作戦」なのかについて、考えてみましょう。今回、原晋監督は突出した選手、スター選手がいないため「ひとりでも音程をはずした負ける」と考えました。だから美しいハーモニーを奏でられるよう、一糸乱れぬ完璧な演技をするシンクロナイズドスイミングような選手の活躍を願ったのです。

さて、それでは、ビジネスの現場でも「全員が音程をはずさぬ」ような「完璧な走り」「完璧な動き」「完璧な行動」をとることができるのか。結論から書くと「No」です。事業戦略に沿った行動計画(アクションプラン)どおりに、全員が完璧に動き、完全にマネジメントサイクルをまわし、美しいハーモニーを奏でろ、というのは、ビジネスの世界においては難しいと言わざるを得ません。

ここでは、前提知識が必要です。ビジネスとスポーツとでは、いろいろな視点において、かなり事情が異なる、ということです。

私は現場でコンサルティングしていますから、キレイゴトは書きません。箱根駅伝に出場できるような選手の精神レベル――トレーニングにかける心情、絶対に優勝するという気概――などといったものは、一般のビジネスパーソンのそれとは、比較にならないほど高いレベルです。ビジネスパーソンも、まじめに働いている人が大半ですが、極限にまで高められた緊張状態で、いつも仕事をしているわけではありません。(してもいけません)

「ハーモニー大作戦」という名称は美しく、ビジネスの現場でも使いたい作戦名です。しかし失敗が許されない「完璧さ」を求められる作戦、という意味では、使いづらい作戦と言えるでしょう。

組織には、経営者や上長の期待どおりに行動しないメンバーが、必ず一定量、存在します。全員を完璧な行動ができるように育成する、と息巻いても、一般企業では叶わぬ夢となって散るだけ。特に現代は、メンバーに「完璧さ」をもとめることは難しいでしょう。だからこそ、不十分なリソースでも、達成できる事業戦略、事業計画を立てなければならないのです。外部環境は、とてつもないスピードで変化しつづけているのですから。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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