200年に一人の天才ボクサーが語る「井上尚弥はシュガー・レイ・レナードに匹敵するレベル」
現役時代、所属していた協栄ジム会長、故金平正紀に「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と絶賛された元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄。
本シリーズでお馴染みの彼に、WBA/IBFバンタム級タイトルマッチ、井上尚弥vs.マイケル・ダスマリナス戦について訊いた。
「井上尚弥はノニト・ドネア戦で眼窩底骨折していますよね。前回のアメリカでの試合は、問題無かったようですが、どこまで相手のパンチが見えるか? 遠近感に問題は無いかが気掛かりでした。
でも、まったく心配いらなかったですね。更に、進化した姿を見せてくれました。上手いし、ミスが無い。ボクシングが綺麗です。バランスが崩れないから、ひとつひとつの動きが美しい。空振りもほとんど無い。実に強いです。何も言う事はありません」
「ダスマリナスとは差があり過ぎましたね。井上自身、向かい合った瞬間にそれを感じたでしょう。余裕を持って、どのタイミングでKOするかを窺っていました。僕とアーロン・プライアーとの試合みたいなものですよ(笑)
あれだけ強いドネアをボディで倒していますから、今回もボディという思いがあったんじゃないかな。得意なパンチになりましたね」
「実際、最初に井上がダウンを奪ったパンチは左ボディでした。一流選手なら、同じパンチでは倒れないものです。ダスマリナスも警戒していたでしょう。それでも、二度、三度と左ボディを浴びせて仕留めるんですから、いかに井上が図抜けた男であるかを示していました。
3ラウンド、井上は左のガードを下げ、フリッカーにしました。フェイントと言うよりも、あれは余裕の表れ、遊びでしょう。それほど圧倒した訳です」
井上尚弥vs.マイケル・ダスマリナス戦と同じ日に、フロリダ州マイアミで予定されていたIBF/WBAスーパー/WBO/WBCフランチャイズ統一ライト級チャンピオン、テオフィモ・ロペス・ジュニアvs.ジョージ・カンボソス戦は、王者ロペスが新型コロナウィルスに感染し、8月14日に延期された。
メキシコ、ハリスコ州グアダラハラで催されたフリオ・セサール・チャベス・ジュニアvs.元UFC王者、アンデウソン・シウバ戦は、2.4パウンド体重をオーバーしたチャベス・ジュニアが、1-2で判定負けした。
そして、ご存知のようにWBCミドル級タイトルマッチでは、ジャーモール・チャーロがフアン・マシアス・モンティエルに判定勝ちして防衛を果たした。チャーロとモンティエルの実力差は、井上とマイケル・ダスマリナスのそれと同様だったように思う。
3度のダウンを奪い、3ラウンド2分45秒できちんと相手を倒し切った井上は、WBCミドル級王者以上のインパクトを、アメリカに残した。
「井上尚弥だから、バンタム級でもミドル級やヘビー級を喰えるんです。アメリカのファンは目が肥えています。重いクラスの迫力やパンチ力も確かに魅力的ですが、井上の高い技術に、ボクシングの醍醐味、芸術性を感じるのでしょうね」
「マーベラス・マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズらはアーティストでした。だから当時、ヘビー級以上の人気を得たんです。井上の才能を見た時、僕はレナードと同じレベルだと思います。間違いなく日本のボクシング史上最強ですよ。
ただ、レナードを超える俊豪だったのが、アーロン・プライアーですね。是非、井上には、あの域まで上ってほしい」
「ドネアは、井上とのリターンマッチを熱望していますね。あれ程の王者ですから、ベストコンディションを築くでしょう。しかし、井上の成長スピードは尋常ではありません。前回以上の差が付き、5ラウンドまでに井上がKOすると僕は思います」
「本当にマニー・パッキャオに続くアジア人スーパーチャンピオンになりそうです。どこまで伸びるのか、ワクワクしますね。何度も言いますが、金平会長が僕に付けた『200年に一人の天才』というニックネームは、井上尚弥こそ相応しいです」