最高裁国民審査の結果が出ました
衆議院総選挙の結果が大きく報じられる中、一緒に行われた最高裁裁判官の国民審査の結果もひっそりと明らかにされた。
投票総数は5654万295。衆議院比例選挙区の投票総数が5694万829だったので、40万534人が国民審査のみ棄権したことになる。このほか、176万7000票あまりが、無効票となっている。
なお、前回までは国民審査は投票日7日前の告示で、早い時期に期日前投票に行った人は国民審査ができなかったこともあり、棄権者数の増減を前回と比較することはできない。
結果は、以下の通り。
氏名 (小法廷) × ×率
小池 裕 (1) 4,688,017 8.56
戸倉三郎 (3) 4,303,842 7.86
山口 厚 (1) 4,348,553 7.94
菅野博之 (2) 4,394,903 8.02
大谷直人 (1) 4,358,118 7.96
木澤克之 (1) 4,395,199 8.02
林 景一 (3) 4,089,702 7.47
国民の関心は低調か
例によって、罷免となった裁判官はいない。
それどころか、前回より×の比率が少なくなっている。前回は5人の裁判官が対象となり、そのうち4人につけられた×率が9%を越えていたが、今回は9%越えはゼロ。これを、最高裁に対する国民の信頼が向上したため、とは必ずしも受け取れない。それは、投票日前の拙稿でも書いたように、無印の票は、信任票なのか、それとも「よく分からない」のでそのまま投じたものなのか、分からないからだ。
ちなみに、ネット上のアンケート調査では、「よく分からないので、何も書かない(全員信任)」と答えた人が46.1%と半数近い。「よく分からないので、適当に×をつける」が8.0%、「よく分からないので、全員に×をつける」が18.6%。有権者全体に比べると、このアンケートでは「分からないから×」の人がかなり多く出ている。国民審査に一定の関心を持つ者のみが、回答したからだろう。
実際には、9割以上が何も書かずに投票しているわけで、「よく分からない」からと白紙のまま投票した人が大半だったのではないか。とすると、×が少なかった今回は、人々の関心がかなり低調な国民審査だったと思われる。
林裁判官には一定の「信任」票
ただ、そんな中でも投票者の意思を感じた数字もある。それは、林景一裁判官の×が、他の裁判官に比べて明らかに少ないことだ。すぐ前に名前のある木澤克之裁判官に比べて30万余り、同じ第3小法廷の戸倉三郎裁判官よりも21万余り、×が少ない。
よく、リストの最初に名前が挙がった裁判官は最も×が多く、先に進むほど少なくなる、と言われるが、この説は根拠薄弱だ。少なくとも、ここ何回かの国民審査を見る限り、そうした傾向は見られない。たとえば前回、筆頭の裁判官は×が2番目に少なく、最後に名前のあった裁判官が2番目に×が多かった。前々回も初めの人が×が最も多かったわけではないし、最後の人が最も少なかったわけでもない。
では、今回の林裁判官の場合、なぜ×が少なかったのか。彼は、審査対象の裁判官の中で唯1人、昨年の参院選「一票の格差」を合憲とすることに疑問を呈し、「投票価値の平等…の追求は、民主主義の国際標準であり、国際的潮流である」とする意見を書いている。これをプラスに評価して、他の裁判官には×をつけたが、林裁判官には意識的に×をつけなかった(=信任した)という人たちが、一定数いたと考えるのが自然だろう。彼は今年4月に任命されたばかりで判断材料は少なく、ほかには林裁判官のみを「信任」する材料が見当たらない。
制度の改善を
それにしても、最高裁国民審査は国民にとって分かりにくい制度だ。信任は◯、不信任は×、分からない場合は無印というような、国民の意思を反映できるような制度に早く改善してもらいたいと、改めて注文をつけておく。