なぜ五反田の居酒屋でガスボンベが爆発したのか?
五反田の居酒屋でガスボンベが爆発
23日午後6時10分頃、東京都品川区東五反田の雑居ビル1階の居酒屋で爆発が起き2人が怪我をした。店内にいた男性従業員がやけどを負ったほか、通行人の男性が飛び散ったガラスの破片で顔を負傷しているが、店内にいた約30人の客に怪我はなかった。警視庁大崎署の調べによれば、爆発の原因は調理中の熱によって近くにあったカセットコンロ用のガスボンベ1本が破裂したことによるという(参考記事:読売新聞 2019年1月23日)。
事故が起こった現場は、多くの飲食店が建ち並ぶJR五反田駅東口の歓楽街にある『大衆酒場BEETLE 五反田店』。開業は2016年12月で、運営は『株式会社プロダクトオブタイム』(東京都品川区)。2013年、従来のいわゆる大衆酒場をブラッシュアップした『大鶴見食堂』を開業したのを皮切りに、2015年には『大衆酒場BEETLE』の1号店を蒲田にオープン。以来、飲食業界における「ネオ大衆酒場」ブームの火付け役となった業態だ。
なぜ客は無事で通行人が怪我をしたのか
報道によれば店内客に怪我はなく、怪我人は店内にいた従業員と飛び散ったガラスの破片で負傷した通行人の2人だけであるという。この店舗の構造は奥に半クローズドのキッチンがあり、基本的に調理は奥で行われるため、客が怪我をしておらず通行人が怪我をしている状況からも、キッチン内での爆発は考え難い。
店内にはコの字型のカウンターが配されており、そのカウンターの中にはBEETLE名物の「モツ煮込み」の鍋やおでんの鍋が置かれている。カウンターの先端で客の目の前にある煮込み用の鍋は、この店のアイコンとも呼べる存在で、注文を受けると目の前にある鍋から煮込みをすくい提供するスタイルが人気を集めている。またメニューの中には卓上で調理する一人用の鍋などもあるため、これは推測の域を出ないが、状況や店舗の構造から考えても、店舗入口に程近いカウンター内の鍋の熱によって、ガスボンベが破裂してしまったと考えるのが妥当だろう。
手軽に使える分、扱いを正しく慎重に
かつて飲食店で鍋を提供する場合は、ガスホースに繋がったコンロで提供することがほとんどで、鍋専門店など一部の業態に限られたメニューであった。しかしガスボンベが小型化されて、1969(昭和44)年に「カセットコンロ」が発明されると、卓上や野外などでも気軽に鍋などの料理が楽しめるようになった。現在では家庭はもちろん居酒屋などでも、カセットコンロを用いて鍋を楽しむことがほとんどだ。
ガスボンベを原因とする爆発は、ボンベ内の圧力が高まり破裂して引火するケースと、ボンベから漏れたガスに引火するケースが考えられる。今回の事故はおそらく前者であると考えられるが、熱源のそばに長時間ガスボンベを置いておくのは非常に危険であることは常識であり、何店舗も展開する業態のオペレーションとして、そのような場所に置くことが常態化していたとは考え難い。おそらく置き忘れたか何かしらのイレギュラーな状態があったと考えられる。
カセットコンロやガスボンベの事故は後を絶たない。そしてその大半はコンロやボンベの使用法や保管方法に問題があって起こっている。居酒屋業態などの場合は知識や常識に乏しいアルバイトなども少なくない。また、これは飲食店のみならず家庭でも十分起こり得る事故なので、今いちど正しい使い方をしっかりと確認して安全に使って欲しい(参考資料:「カセットこんろ・カセットボンベの安全な使い方」日本ガス石油機器工業会ホームページ)。
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※写真は筆者の撮影によるものです。