補強ゼロのアスレティック。ハインケス政権を彷彿とさせる猛獣たちの逆襲。
バルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーの「3強」を退けて、首位に立った。
リーガエスパニョーラは9月24日時点で5試合を消化している。首位に立っているのが、アスレティック・ビルバオだ。開幕節で王者バルセロナを倒したチームが、勢いを持続してトップに躍り出た。
■今夏の補強人数は
今夏、アスレティックは補強を行わなかった。
2シーズン連続で欧州カップ戦出場権を逃した影響は大きく、加えてホス・ウルティア前会長と前理事会が残した負債、サラリーキャップ(2019-20シーズンは1億318万ユーロ/約121億円)の負担などが考慮されての決断だった。
補強だけではない。現在所属している選手たちとの契約延長を行えず、先日スペイン代表デビューしたウナイ・ヌニェスやイェライ・アルバレスといった選手の契約解除金は3000万ユーロ(約35億円)に設定されたままだ。
近年、アスレティックの選手を国内外のクラブが注視している。2018年1月にマンチェスター・シティが契約解除金6500万ユーロ(約76億円)を準備してアイメリック・ラポルテを、2018年夏にチェルシーが契約解除金8000万ユーロ(約94億円)を支払いケパ・アリサバラガを獲得している。それを顧みれば、イェライやヌニェスの契約解除金はあまりに安い金額である。
この夏にミケル・ベスガとクリスティアン・ガネアがレンタルバックで戻ってきた。そしてダニ・ビビアン、ガイスカ・ララサバル、アシエル・ビジャリブレ、オイアン・サンセがトップ昇格。彼らがアスレティックの「新戦力」あるいは「補強」として扱われた。ただ、ここまでのところ、彼らのプレータイムはチーム全体の1,3%だ。
19位レアル・マドリー(10,3%)、18位バジャドリー(13,7%)、17位バレンシア(13,8%)、16位バルセロナ(17,7%)と比較しても、アスレティックに到着した「新戦力」の出場時間の割合は圧倒的に少ない。
■ガリターノの就任と堅固な守備
2018年12月にガイスカ・ガリターノ監督が就任した。下降線を辿っていたチームが、彼の就任で一変。それ以降、29試合で15勝8分け6敗という成績を残している。
ガリターノ監督が就任してから獲得した勝ち点数は53に上る。その期間においてはバルセロナ(勝ち点66獲得)、アトレティコ・マドリー(61)、レアル・マドリー(56)に次ぐ数字で、バレンシア(49)を上回る。
アスレティックを支えているのは、今季のリーガ開幕から5試合で1失点という堅固な守備だ。欧州5大リーグで、同失点数はインテル(4試合1失点)のみ。リヴァプール(6試合5失点)、マンチェスター・シティ(6試合6失点)、パリ・サンジェルマン(6試合2失点)、ユヴェントス(4試合4失点)、ライプツィヒ(5試合3失点)、バイエルン・ミュンヘン(5試合4失点)とビッグクラブを凌ぐ数字である。
昨季序盤、エドゥアルド・ベリッソ前監督の下で3バックが使われた。ベリッソ前監督はゾーンではなく、マンマークでの守備を基本としていた。不慣れな戦い方に、選手たちは戸惑った。だがガリターノ監督の就任で、ゾーンで守る形に戻した。4-2-3-1というシステムを基本に、各選手がそれぞれの役割を理解した上で全うしている。
リーガ序盤の好成績は26年ぶりだ。その当時、1993-94シーズンにユップ・ハインケス監督率いるアスレティックはリーガを5位でフィニッシュしてUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)出場権を獲得した。
ロス・レオネス(アスレティックの愛称/ライオンの意)の逆襲が、始まった。本拠地サン・マメスで17試合無敗を貫く猛獣が、ファンの熱狂と共にリーガを沸かせている。