紫陽花の煌めきと、清流の鮎釣り。人形町・壽堂さんの「紫陽花&釣天狗」で白餡の食べ比べ
ニッキの芳香と大きな暖簾、快活な女将も名物な人形町の老舗和菓子屋「壽堂」さん。
大きな暖簾をくぐる人は開店から閉店まで絶えず、銘菓の黄金芋だけではなく四季の上生菓子も人気です。
代々受け継がれていく細やかな気配りはお客さんだけにあらず。季節や節気の移ろいに合わせて、少しずつ細かく変化していく上生菓子のラインナップも楽しみのひとつ。
今回は新登場の「紫陽花」と「釣天狗」をご紹介。
夏の季語でもある紫陽花。四片、四葩(よひら)、七変化、あづさヰ(あづさい)など沢山の異名を持つ植物としても名を馳せ、練り切りなどの上生菓子でも多彩な菓銘やデザインが存在しています。
こちらの紫陽花は、芯の白餡に寒天菓子の錦玉羹を纏わせた一品。紫は紫でも、淡く儚げな色合いの紫陽花。キラキラと眩いきらめきを放ちながらも、どこか上品で落ち着いた佇まいは、お店と人形町の粋な雰囲気も一役買っているのでしょうか。
さらさらと舌馴染みの良い甘味と口当たりの錦玉の中には、これもまたねっとりと瑞々しい白餡が。この柔らかさの餡を芯にするのは、なかなか高度な技術を要するのではないでしょうか。
昔話に出てくるような魚籠(びく)を模した練り切り。「釣天狗」とは、釣の腕前を自慢する人のこと。鴨川や長良川では、絶賛鮎釣りシーズン真っ最中。膝まで水に浸かった釣り人の魚籠からこそこそっと逃げ出した鮎か、はたまた釣られまいと釣り人をおちょくりながら清流に身を躍らせる鮎か。河川の景色を彩る青紅葉が爽やかですね。
紫陽花に対してこちらの芯の白餡は、いんげん豆のほくほくとした素朴な味わいを堪能できる一品。ややぽってり仕上げられており、こちらはお薄と相性が抜群。
あえて今回は芯が白餡同士を選んだのですが、やはりお菓子ごとに調整を変えていくあたりはさすがの采配といえるでしょう。こういうところも、長年ファンが堪えない秘訣なのではないでしょうか。
紫陽花は雨、鮎は清流とどちらも「水」と縁が深い意匠。これから迎える梅雨のじめじめした湿気を、あえて瑞々しさで吹き飛ばしてしまうというのも、悪くないかもしれませんね。
<壽堂>
東京都中央区日本橋人形町2-1-4
0120-480-400
平日・土曜 9時~18時30分
定休日 日曜
東京メトロ半蔵門線「水天宮前」駅7番口目の前