【オートバイのあれこれ】カワサキが初めて作ったレプリカ。想像以上に「ガチ」だった!
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今日は「カワサキが初めて作ったレプリカ。想像以上に“ガチ”だった!」をテーマにお送りします。
1980年代にレーサーレプリカブームが隆盛してもなお、サーキット指向の強いバイク作りはしてこなかったカワサキ。
『GPZ400R』(’85年登場)や後継の『GPX400R』(’87年登場)は、そのカワサキのスタンスをよく表したモデルだったと言えるでしょう。
ただ、代謝の激しい時流の中にあって、そんなカワサキにも変化が見られました。
’88年(昭和63年)、レーサーレプリカ的要素を根っこに据えた『ZX-4』をリリースしたのです。
高回転高出力型のエンジンと高剛性のツインスパーフレームで武装されたZX-4は、それまでのGPZ/GPXとは一線を画するバイクとなっていました。
そして、そのZX-4のレプリカ的要素をさらに研ぎ澄まし生み出されたのが、’89年デビューの『ZXR400』です。
ZXR400は、排気量400ccの4ストローク4気筒エンジンを搭載したいわゆる「4ストマルチ」のレプリカで、このカテゴリーにはスズキ『GSX-R』やヤマハ『FZR400』等、すでに熟成の進んだライバルがいました。
しかしカワサキは大胆にも、それら強敵をもひと口で飲み込んでしまうほどのパフォーマンスを最初からこのZXRへ与えます。
一番の注目ポイントが、前輪に備わるサスペンション。
ZXRのフロントフォークには、公道向け市販量産車としては前例の無い倒立式フォークが採用されていました。
世間をブイブイ言わせていたGSX-RやFZR、また2ストロークのNSRやTZRでさえ正立フォークだったところに、カワサキはレーシングマシンでしか見ることのなかった倒立フォークをいち早く取り入れたのです。
倒立フォークは正立式よりも限界性能が高く(=より高負荷・高荷重に耐えられる)、当時のバイクファンはこの部分を見るだけで、ZXRが「サーキット走行やレースでの使用を明確に想定している」ことをひしひしと実感できたのでした。
フレームはZX-4から受け継いだツインスパータイプの『e-BOX』フレームで、エンジンのほうもZX-4のものをベースに改良が施されていました。
また、兄貴分の『ZXR750』や弟分の『ZXR250』も含め、ZXRシリーズに共通の特徴として面白いのが、『K-CAS』(カワサキ・クール・エア・システム)が採用されていたこと。
K-CASは温度の低い外気(=走行風)を積極的にエンジンヘッド周辺へ導き、エンジンの温度を安定させるための仕組みで、フロントカウル上部の導風口(穴)から取り込んだ外気を通すためのダクトがハンドルを跨ぐ形で設置されていました。
倒立フォークもそうでしたが、このK-CASのダクトも「掃除機のホースみたい」などと評判になり、ZXRを語るうえで外せないディテールとなったのでした。
ZXR400は、それまでレプリカブームに乗り気でなかったカワサキが開発したとは思えないほどの手の込んだ作りようで、発売後はサーキットにおいて抜群の戦闘力を発揮。
‘90年の全日本ロードレースでは、特別仕様であるRモデル(ZXR400R)ベースのTT-F3レーサーがチャンピオンを獲得するなど、ZXRは公のレースにおいても目を見張る活躍を見せます。
カワサキは、レプリカ戦線における他社への“遅れ”を、このZXRとともに一瞬で巻き返してみせたと言っていいでしょう。
画像引用元:カワサキモータースジャパン