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打ち上げ花火に名前があるって知ってた? 花火屋さんに聞いた“フィナーレ豪華花火”の意外な名前とは?

コティマムフリー記者(元テレビ局芸能記者)
花火大会/写真提供:(株)若松屋

 8月に入り、夏も本番。花火大会シーズンの真っただ中ですね。すでに東京都の隅田川花火大会も開催されましたが、これから各地の花火大会を楽しみにされている方も多いのでは?

 さて、みなさんが当たり前のように見上げている打ち上げ花火。実は、形によって名前があることをご存知でしたか? そして、クライマックスによーーく見かけるこちらの花火(写真)、何という名前かご存知ですか?

この花火は“柳”?/出典:フォトAC
この花火は“柳”?/出典:フォトAC

 上空でバーンと爆発した後に、伸びた炎がしなだれるように垂れるこの花火(写真)。花火大会のフィナーレなどで連続して打ち上げられ、雅で粋な表情を見せます。みなさん、こちらの花火の名前、なんとなくイメージから「柳」だと思っていませんか? 枝が垂れて風になびく柳の木を彷彿(ほうふつ)とさせる花火ですが、実は、違う名前なのです。

実は“柳”ではない花火/写真提供:(株)若松屋
実は“柳”ではない花火/写真提供:(株)若松屋

 今回は夏真っ盛りのこの時期にぴったりな、“花火の種類”についてご紹介。元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、東京・台東区にある花火屋・株式会社若松屋の広報・竹内直紀さんにお話を伺いました。(構成・文=コティマム)

玉の割れ方で分かれる花火の種類―“牡丹”や“菊”の『割物』、“柳”や“雷”の『ポカ物』

株式会社若松屋/筆者撮影
株式会社若松屋/筆者撮影

 若松屋さんは、愛知県岡崎市若松町で昭和12年に創業した老舗花火会社。現在は本社を同県西尾市に、東京支社を浅草橋に構えています。

2尺玉と3尺玉/筆者撮影
2尺玉と3尺玉/筆者撮影

 若松屋では、家庭で遊ぶおもちゃ花火(手持ち花火)や花火大会で使用する尺玉の他、飴玉や玩具お菓子など多種多様な商材を製造・販売しています。

シェアナンバー1を誇るおもちゃ花火/筆者撮影
シェアナンバー1を誇るおもちゃ花火/筆者撮影

ずらりと並ぶ玩具花火の打ち上げ花火/筆者撮影
ずらりと並ぶ玩具花火の打ち上げ花火/筆者撮影

 特におもちゃ花火では、日本でおもちゃ花火を扱う約20社の中でシェアナンバー1を誇ります。製造、販売、貯蔵、消費を取り扱う花火の総合会社として、そして火薬を扱う会社として、十分な保安体制をとりながら、花火の伝統を守り、花火の楽しさを広めています。今回は東京支社の竹内さんに“花火の種類や名前”についてお伺いしました。

若松屋の広報・竹内直紀さん/筆者撮影
若松屋の広報・竹内直紀さん/筆者撮影

――打ち上げ花火には、どれくらいの種類がありますか。

竹内さん(以下、竹内):打ち上げ花火は、打ち上がる玉の“割れ方”で分けると大きく2種類あります。ひとつは『割物(わりもの)』といって、 “星(ほし)”が球体で破裂するようにバーンッと割れるものです。一般的にイメージがしやすい花火です。もうひとつは『ポカ物(ぽかもの)』といって、玉が上空で“ポカっ”と割れて、中の“星”が落ちてくるものです。

――“星”とは、火薬のことでしょうか。

竹内:そうですね。“星”は花火の中に入っている『色がつく火薬』のことです。花火の玉の中には“星”と、“星”を割って爆発させるための火薬・“割薬(わりやく)”の両方が入っています。

花火の火薬・“星”/写真提供:(株)若松屋
花火の火薬・“星”/写真提供:(株)若松屋

――2種類の火薬が入っているのですね。

竹内:玉の中では、”割薬”の周りに“星”が並んでいます(写真)。

“星”と“割薬” ※玉のような丸い火薬が“星”/写真提供:(株)若松屋
“星”と“割薬” ※玉のような丸い火薬が“星”/写真提供:(株)若松屋

――“星”が破裂するように割れる花火が『割物』、玉がポカっと割れて“星”が落ちてくる花火が『ポカ物』ということでしたが、それぞれの花火の中に種類があるのでしょうか。

竹内:『割物』の中のスタンダードなものが、“菊”、“牡丹”、“冠(かむろ)”、“型物(かたもの)”です。『ポカ物』の中で一番メジャーなのは“柳”です。

――それぞれどのような特徴がありますか。

竹内:基本的に『割物』の花火は丸い形に打ちあがります。みなさんが見ている花火は、だいたい “牡丹”か“菊”です。“牡丹”“菊”も両方丸い花火なのですが、”牡丹”火花が丸く円の形に広がります(写真の絵参照)。

牡丹の花火/出典:イラストAC
牡丹の花火/出典:イラストAC

竹内:一方、”菊”は火花が円の形に広がっていく時に帯を持っています。“星”が尾を引っ張りながら放射線状に飛んでいくのが“菊”です(写真の絵参照)。

菊の花火/出典:イラストAC
菊の花火/出典:イラストAC

“柳”と間違われやすい「フィナーレのあの花火」は“冠”

花火大会/写真提供:(株)若松屋
花火大会/写真提供:(株)若松屋

竹内:“牡丹”“菊”は、丸か尾を引くかの違いなので、自分の目で花火を見ている時には違いが分かります。しかし写真で撮影した花火は、美しく撮るためにシャッタースピードを変えているので、“牡丹”でも尾を引いたようになってしまい、すべての花火が“菊”に見えてしまいます(笑)。絵の方が分かりやすいです。

シャッタースピードにより菊に見える牡丹/写真提供:(株)若松屋
シャッタースピードにより菊に見える牡丹/写真提供:(株)若松屋

――確かに、花火写真を見てみると全ての花火が“菊”に見えますね(笑)。一般人が写真から花火の種類を見極めるのは難しいかもしれません。では、“冠”はどんな形ですか?

柳と間違えられやすい冠/写真提供:(株)若松屋
柳と間違えられやすい冠/写真提供:(株)若松屋

竹内:“冠”は上空で爆発して花火が円の形で開いた後に、時間をかけて尾が降りてくる花火です。花火大会のクライマックスなどで連続して打ち上げられます。火花がしなだれて降りてくるので、この花火を“柳”と勘違いしている方が多いのですが、冠(かんむり)のように見えるので“冠(かむろ)”という名前がついています。

――まさに、このクライマックスの花火のことを“柳”だと思っていました!

竹内:よく間違えられます(笑)

――“型物”というのはどんな花火ですか?

竹内:ハートやスマイル、蝶々などの絵型の花火のことです。これも『割物』の分類に入ります。型物は、玉がクルクルと回転しながら上がります。客席に対して絵柄が正面を向かないと、絵が自分の方を向いているように見えません。どこの客席にいてもなるべく絵柄が正面に見えるように、打ち上げる際は同じ絵柄を何発も打ち上げます。

型物花火(スマイル)/出典:イラストAC
型物花火(スマイル)/出典:イラストAC

――どこから見ても絵柄が見えるように工夫されているのですね。

竹内:同じ絵柄を必ず何発か上げますが、もちろん、どこを向くかは分かりません。でも技術がある花火師さんの中には、絵型花火の打ち上げが得意な方もいます。玉がひっくり返らないように調整しながら上げることができるそうです。そういう、得意な方が打ち上げる時は、確かに絵柄が客席を向いていることが多いです。

――熟練の技ですね! では、『ポカ物』の花火はどのような形ですか?

竹内:『ポカ物』でメジャーなものが“柳”になりますが、この“柳”上空で弾が割れて、しゃらしゃらと垂れてくる静かな花火です。『割物』の“冠”を“柳”と勘違いしている方が多いですが、本当の“柳”は上空でバーンと円を描くものではありません。

――こちらが本物の“柳”なのですね!

“柳”花火/出典:フォトAC
“柳”花火/出典:フォトAC

竹内:それから、“雷(らい)”という花火も『ポカ物』の中でも有名です。よく、運動会などをする日の早朝や昼間に上がっている花火なので、ご存知の方も多いと思います。パンッ! パンッ! と音が鳴っているだけに見えますが、この花火も強い光を放っています。夜の花火でも、強い光がピカッと出ている花火は“雷”を使っていることもあります。

――あの運動会の日に聞く音も花火だったとは!

花火大会/写真提供:(株)若松屋
花火大会/写真提供:(株)若松屋

 いかがでしたか? 花火大会の時に何げなく見上げている花火にも、それぞれ種類や名前がありました。これから花火大会に行かれる方は、“牡丹”や“菊”、“冠”や“型物”、そして“柳”など、その名前と共に花火の形や見え方をチェックしてみてくださいね。

 言葉に関する記事については「”ゲリラ豪雨”は正式用語じゃない? マスコミの俗語が定着」もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。

※今回の記事は、若松屋さまに掲載の許可をいただいた上で公開しています。

フリー記者(元テレビ局芸能記者)

元テレビ局芸能記者で、現・フリーランス記者。現在は歌舞伎や舞台、企業・経営者を取材中。記者目線ならではの“言葉のお話”や、個人的に取材したおもしろ情報を発信していきます♪執筆記事1万本以上。取材は5000回以上。現在は『ENCOUNT』、小学館『DIME WELLBEING』、舞台評、出版社書籍要約、企業HP制作など多岐に渡り執筆中。過去媒体にテレ朝ニュース、キャリコネニュース、音楽雑誌『bounce』etc.

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