アリジゴクが木に登る天変地異?#アリジゴク
アリジゴクが木に登っているのを見たことがあるだろうか。モグラが地上に出てきたり、ナマズが暴れたりすると地震が起きるなどと言われるが、アリジゴクが木に登ったら、どんな天変地異が起きるのだろうか。
アリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)と言えば、地面にすり鉢状の穴を掘って、獲物が落ちてくるのを待っていることで知られる。ところが、アリジゴクの仲間の中には、木や壁に登って、そこで獲物を待ち伏せするものもいる。これはコマダラウスバカゲロウという名の、ウスバカゲロウに近い虫の幼虫だ。
この木登りアリジゴクの姿は、普通のアリジゴクにそっくりだ。しかしアリジゴクのように簡単に見つかることはない(アリジゴクは巣穴とその周辺のさらさらした土をふるいにかければ、すぐに見つかります)。
木登りアリジゴクは、地衣類や苔に覆われた岩壁や樹皮に張り付き、こうした地衣類のかけらを身にまとって姿を隠す擬態の名人。木登りアリジゴクはこうした擬態状態で越冬するので、冬の虫探しのターゲットにはもってこいだが、老眼の昆虫記者の場合は、「ここにいるよ」と指でさし示されても、どこにいるのか分からないほど見つけ出すのが難しい。
しかし、擬態のレベルが高ければ高いほど、やる気が出るのが虫好きのおかしな特徴。真冬に苔むした岩壁を凝視して木登りアリジゴクを探す者も少なくない(うそです。かなり少ないです)。
そして昆虫記者は今冬も、ロッククライマーでもないのに岩壁に挑む。1匹も見つけられず、敗北感に打ちのめされると分かっていても、探さずにはいられないのである。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)