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Eー1選手権、優勝がかかる韓国戦で試されるのは国内組以上に、森保監督の采配か?

小宮良之スポーツライター・小説家
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「今日、こうしておけば、というのは全く思っていません」

 E―1選手権、スコアレスドローに終わった中国戦後、森保一監督はそう振り返っている。

 中国は試合前のウォームアップを見ただけでも、ゲンナリするほど技術は低かった。試合中もカンフーまがいのチャージで、どこか焦点がずれていた。フィジカル的には鍛えられているが、サッカーを掘り下げていないのだ。

 森保ジャパンはその相手に得点できず、引き分けた。それで後悔なし。「チャンスを作れたし、決められなかっただけで、それはサッカーではよくある話」という総括だった。

 7月27日、韓国戦で問われるべきは選手以上に、森保監督の采配だ。

適材適所の起用

 カタールW杯では、思いがけない事態がいくつも予想される。チームとして、それに対応できるか。結局はピッチに立つ選手の対応力になるが、準備や修正においては指揮官の決断が命運を分ける。

 その点、森保監督は現有戦力でしっかりと韓国を叩き、大会で優勝することが実務的積み上げになるはずだ。

「選手たちの生き残りをかけた大会」

 そう位置付けられてきたが、本来は指揮官も立場は変わらない。

 まずは、選手の能力を最大限に生かす布陣の採用が不可欠だろう。中国戦は、サンフレッチェ広島の選手が5人先発(一人は交代出場)だったが、そこまでこだわるなら、広島に近い3−5−2システムを採用すべきだった。不具合の理由は明白で、慣れないポジションを担当した広島の森島司、佐々木翔の左は終始、空回りしていた(横浜F・マリノスの宮市亮、小池龍太の右サイドの片翼飛行だった)。代表で採用している4−3−3、4−2−3−1でうまくプレーできないなら、別の選手を招集すべきだったのだ。

うまくいかないプレーの修正

 確かに、日本は前半から優勢に攻めた。いくつかの決定機を作り出している。どれかを決めていれば、楽な戦いになっていたことは間違いない。それでも、これだけ実力差がある相手を攻め崩せなかった事実の方が、ここでは重い。

「中国は5バックで分厚く守った」

 そんな意見もあるが、単なる人海戦術で、十分に予想できたし、工夫が乏しかった、と言うべきだろう。

 危ぶむべきは、うまくいかないプレーを修正できなかった点にある。中国戦は結局、後半途中まで放置。終盤、サイドを崩せる相馬勇紀をようやく投入して流れを変えたが、右サイドは本来サイドアタッカーではない満田誠を入れ、失速させた。交代のタイミングはあまりに遅かったし、システムに選手を当て込むだけでは、機能しないのは当然だ。

 また、代表デビューになったFW細谷真大は前線でボールを収められず、戦術的に機能していなかった。リズムを悪くしたことで、持ち前の決定力の高さも不発に終わっている。抜擢すること自体は悪くないが、何を期待して送り出したのか。後半途中、町野修斗を交代で入れ、ポストワークは改善し、チームは前がかりになったが…。

 自信を喪失させる使い方だと、ストライカーはイップスになりかねない。

4年間の代表監督の経験を糧に

 韓国戦次第で、中国戦の失態は取り返せる。もし取り返せないなら、指揮官としてW杯を戦う資質が疑われても仕方がない。格下相手に勝ちきれないのは、采配のどこかに問題があるからだ。

 欧州で長くプレーする選手たちは、ピッチの中で絶えず微調整し、最善のプレーができる。かつての長谷部誠、今の吉田麻也は、顕著にその適応力の高さが見える。戦術に縛られ過ぎないというのか、自らが戦術を運用できる。実質、日本代表はカリスマ的な監督に率いられるよりも、一部の熟練選手たちによって、どうにか勝ち進んできたのだ。

 森保監督が采配力を改めて証明するには、適材適所の起用でチームを勝利に導くことだろう。一つの大会をどうマネジメントするのか、それは一つの試練になる。例えば東京五輪ではメンバーを固定し過ぎて、決勝トーナメントでは失速させてしまっているのだ。

 4年間の代表監督の経験を、花開かせて欲しい。

 最後にもう一つだけ森保監督に苦言を呈するなら、プロサッカーは興行でもある。Jリーグ選抜での代表になった大会で、開催地の所属クラブ選手の起用をいくらかは考慮に入れるべきだった。地元クラブの選手がピッチに立てば、スタジアムには気運が生まれるものだが、今回はここまでそれがないに等しい。鹿島開催の香港戦は鹿島アントラーズの選手がゼロで、スタジアム入場者数が少なかったのは必然だった。

 韓国戦、日本代表は歓喜に沸くことになるのか?

 選手以上に、監督にとって試練だ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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