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『まつもtoなかい』衝撃の初回放送、松本人志と中居正広の言葉から見えた「トーク番組をやる覚悟」

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:Splash/アフロ)

「なんかすごく(視聴者が)見てる感じがしますね、なに言われるんですかね」(中居正広)、「言われるとしたら俺やで。『松本うぜぇ』とか、『松本いらねぇ』とか。『#松本いらねえ』って」(松本人志)

4月30日にスタートした番組『まつもtoなかい〜マッチングな夜〜』(フジテレビ系)のトークパートは、MCの松本人志(ダウンタウン)、中居正広のこんな会話で締めくくられた。

同放送回には、中居正広とともにSMAPのメンバーとして活動していた香取慎吾がゲストとして出演することが事前告知され、早くから大きな注目をあつめていた。

同日21時、番組の幕が開けた。松本人志、中居正広はまず「この番組は毎回、ゲストのふたりをマッチングさせて、4人でトークをするコンセプト。それが初回から崩れた」と説明。さらに中居正広は「重い」とボソッと口にする。それは果たしてその場の空気なのか、それとも自分の気持ちなのか。そして香取慎吾が登場するが、彼はなかなか喋らず、余計に微妙なムードが広がる。ようやく口を開いたかと思えば、それは「中居さん、お久しぶりです」と他人行儀なものだった。

そもそも中居正広も、「今日のゲスト、香取慎吾さんです」と香取慎吾を呼び出して以降、気軽な接し方ができていなかった。公の場では「6年ぶりの再会」だったが、その空白だけが原因ではないようなぎこちなさがあった。『まつもtoなかい』というスターが揃った番組の初回放送にもかかわらず、華々しさは皆無。異例であり、そして異常なシビアさにつつみこまれ、視聴者もハラハラしたのではないか。

「実際にテレビの仕事がないなかで」香取慎吾が明かしたショッキングな現実

トーク内容も、緊張感のなかでの深掘りがすさまじかった。中居正広が病気で休養している期間、香取慎吾が毎日メールを送っていたこと。そのやりとりについて、香取慎吾と一緒に新しい地図として活動している、稲垣吾郎、草なぎ剛は知らないこと。毎日メールをした末に久しぶりに会うことになり、中居正広から「ランチでどこか店を知ってる?」と尋ねられた香取慎吾は、人目につかないように自分のアトリエへ招いたこと。驚くべき情報が相次いで、視聴者として興奮した。

特に印象的だったのは、SMAP解散後の香取慎吾の気持ちだ。

「SMAPが解散して、そこからそれぞれの道を歩むときに、テレビという場所でのお仕事が減ってしまうかもしれないなか、新しいことをやってみたいという方向に近かったのが3人(香取慎吾、稲垣吾郎、草なぎ剛)、中居くんはテレビのなかでやっていきたいという話があったので進む道が違うって。それで実際にテレビのお仕事がなかなかないなかで、テレビで活躍する中居くんを観ていたし。(自分も)話があればテレビも出たいという思いもありながら、だからちょっと(中居正広は)違うところにいるなという」と苦い現実について明かし、さらに番組後半の音楽コーナーのパートでは、中居正広がテレビに映っていると「チャンネルを変えたこともあった」と本音を漏らした。

香取慎吾の「テレビの仕事が減ってしまうかもしれない」「実際にテレビの仕事がないなかで」との発言も「芸能界の慣例」にかなり踏み込んでいて、あらためて聞くと非常にショッキングだ。そしてこれらは、中居正広、そして松本人志がいなければ語られることがない真実だろう。

松本人志の的確なリアクション「このテンポが取り調べ室みたい」

松本人志も珍しく、この初回番組の自分の身の置き場について「なにが正解なのか分からない」と戸惑っていた様子だった。

そんななかでも、中居正広と香取慎吾のぎこちない会話を「このテンポが取り調べ室みたい」とたとえたり、ふたりが実はメールのやり取りや再会を実現させていたことを初めて知って「6年くらい会ってないと思ってたから。(中居正広は病気の内容を)俺と香取くんにしか言ってないとか知らなかったので。一時、本当に心配になって、夜遅めに(笑福亭)鶴瓶さんに半泣きで連絡したことがあって。本当に中居くんどうなるんかなって。鶴瓶さんがいろいろ説明してくれて落ち着いたけど、あいつ何も知らんかったんや」と笑わせたり、松本人志らしい的確なリアクションが光った。

一方で、SMAPがいかに脅威的な存在だったかについて話す場面もあり、「エンターテイナーの本物がきた。敵はお笑い芸人じゃないぜって焦ったね」と、アイドルでありながらバラエティもバリバリとこなしていたその活動に唸る一幕も。

それらをトータルして松本人志がこの放送回で成し遂げたかったことは、中居正広と香取慎吾がもう一度、一緒になにかをやるきっかけを作ることだったように見えた。

番組はなにを達成しようとしているのか、求めるものは「人間同士の対話」

『まつもtoなかい』初回ゲストをつとめた香取慎吾
『まつもtoなかい』初回ゲストをつとめた香取慎吾写真:西村尚己/アフロスポーツ

『まつもtoなかい』はなにを達成しようとしている番組なのか。あくまで初回放送だけの感触だが、それはトーク番組は数あれど「ここでしか見聞きできない内容」を引き出すことだ。そのために、松本人志、中居正広、そして番組スタッフが熱くチャレンジしているように映った。ヒリつくほどの緊迫感がありながら、放送中はずっと胸が熱くなっていた。

なにより四角いテーブルに3人が座って、顔を突き合わせて「喋るだけ」という設定が興味深い。派手でもなく、地味でもないセットも効果的だ。番組序盤、香取慎吾が中居正広の方をあまり向かずに喋っている様子を見た松本人志が、「8:2で中居くんのことを見てない」とツッコミをいれたのは、このトーク番組が求めるものが「人間同士の対話」であることをあらわしているようだった。

その象徴のひとつとなったのが、中居正広と香取慎吾の名前の呼び方だ。番組前半は「さん付け」で呼び合い、探りさぐりだった。ただ話を進めていくなかで、ナチュラルに「中居くん」「慎吾」と私たちが知るかつての呼び方に戻っていた。それは徐々にお互いが向き合っていった結果ではないか。どこか生々しさがあり、トークドキュメンタリーと呼べるものだった。

「キリトリ」されることもはっきり念頭に置いた、本気のトーク番組

そうやって松本人志、中居正広、香取慎吾が次々と明かしていった「新事実」に、SNSやネットニュースが色めきだったのは言うまでもない。

松本人志は『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出演していた当時、自身の発言の一部だけがネットニュースとして取り上げられることに不快感を示し、「キリトリ記事禁止」と書いたボードを掲げていた。同番組の降板理由のひとつとして噂されているほどだ。

ただこの『まつもtoなかい』は、初回放送に関しては「キリトリ」されることを前提に考えているような内容だった。むしろ、「だったら、気が済むまで『キリトリ』をさせてやる」という姿勢すら感じられた。中居正広が「なんかすごく(視聴者が)見てる感じがしますね、なに言われるんですかね」と語り、松本人志も「言われるとしたら俺やで、『松本うぜぇ』とか、『松本いらねぇ』とか。『#松本いらねえ』」と明らかにSNSやネットニュースを意識した発言をしたのは、「キリトリ記事禁止」といった抗議ではなく、「『キリトリ』されようがお構いなしに、本気のトーク番組をやる」ということへの覚悟が感じられた。

もちろんこの初回放送は、ゲストが香取慎吾だからこそ神がかったような内容になったのは間違いない。2回目以降、どんなトークが繰り広げられるのか。ただ、そこは松本人志、中居正広のコンビである。きっとゲストに肉薄し、大いにSNSやネットニュースを騒がせていくことになるのではないか。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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