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「そうなったら意味がない」。20年を経て「スキマスイッチ」が「スキマスイッチ」であるために必要なこと

中西正男芸能記者
「スキマスイッチ」の大橋卓弥さん(左)と常田真太郎さん

「奏(かなで)」「全力少年」などのヒット曲で知られる「スキマスイッチ」。メジャーデビューから20年が経ち、7月には記念ベストアルバム「POPMAN’S WORLD -Second-」をリリースしました。10周年を迎えた大阪・梅田のウメキタフロアとの周年コラボ企画も展開するなど、常に歩みを刻み続ける大橋卓弥さん(45)と常田真太郎さん(45)。20年を噛みしめて語る「そうなったら、もう意味がない」の境地とは。

ウメキタフロアとのコラボ企画に掲出された、これまでの道のりを綴ったボード
ウメキタフロアとのコラボ企画に掲出された、これまでの道のりを綴ったボード

常田:もう20年も前のことになるわけですけど、今でも忘れられないのはデビュー当時のことですね。

僕らとしては、関西から存在を認めてもらったという意識がすごくあるんですよ。一つの原点となっているのがデビューの頃にタワーレコード梅田大阪マルビル店でやらせてもらったインストアライブでした。

それまでは集まってくださるのが40~50人だったところ、400人以上の方が来てくださいました。まずその数字に驚きましたし、それだけの人がわざわざ時間をかけて、お金を使って、僕らを求めて来てくださっている。この事実をスタッフさんらと共有した時のうれしさは忘れられないですね。

今でも、ステージに出る直前まで「お客さんが来てくださっているんだろうか」という不安は常にあります。特にいろいろなアーティストが出るフェスなんかは、会場をチラッと見に行って「あ、ちゃんといてくださっている…」と確認してから舞台に上がる感じでもあります(笑)。

あと、ここ3年ほどは新型コロナ禍でお客さんに来てもらいにくい状況になりました。来ていただけても、盛り上がってもらいにくい状況でもありました。

その中でもわざわざ来てくださる。さらに、拍手が解禁されたら力いっぱいの拍手を、歓声が解禁されたらありったけの声を振り絞ってくださる。これはね、もう感謝しかありません。本当に。

図らずも、コロナ禍で“当たり前”がはぎ取られました。だからこそ、改めて一つ一つの有り難さを痛感しましたし、今一度、デビューの頃の感謝を噛みしめることにもなりました。

大橋:20年でいくつかポイントがあったと思うんですけど、とりわけ大きかったのはデビューから5年ほど経った頃。アルバムを3枚出して、有り難いことに僕らの曲を知ってくださっているお客さんも増えてきた。お仕事もたくさんいただけるようになった時期でした。

皆さんの応援に反比例するというか、自分たちの精神力が追い付いていかない。プレッシャーもありましたし、正直な話、互いの思いにズレもあったと思います。

デビューからとにかくがむしゃらに走ってきたんです。走るしか方法がなかった。今だったらがむしゃら以外の選択肢もあると思うんですけど、当時はただただ全力で走り続けていました。

それがさらに進んでいくと、同時に二つの曲を作らないといけなくなったり、それぞれがそれぞれの動きをするようになって、二人で会話する時間も物理的に減っていったんです。

結成当初は、なんというか、常に一緒に並んで歩いている。何かあると話し合う。そんな関係性が徐々に変わっていきました。それがデビュー5年の頃で、そのタイミングで一度「スキマスイッチ」をリセットして、互いのソロ活動をやってみようとなったんです。

お客さんからしたら「え、ここでソロ活動?」というタイミングだったと思いますけど、僕たちとしてはそうするしかないタイミングでもあったんです。

1年間のソロ活動を経て、もう一回やろうとなった時に二人で話し合いました。1年で感じたこともあったし、それまでの思いもあったし、初めて激しく思いをぶつけ合いました。

東京・三軒茶屋の居酒屋さんだったんですけど、そこでの数時間があったからこそ今がある。心底、そう思いますし、そこがなかったら10周年も迎えてなかったと思います。

常田:僕としてはソロ期間が1年ということも当初分かっていなかったので「このまま卓弥が帰ってこないこともあるのか」とあらゆる方向性を考えました。

この先、自分はどうするのか。何がやりたいのか。色濃く考える時間になりました。そうやって膨らんだ思いをぶつけた“三茶の夜”を経て、関係性が変わったとは思いますね。純粋に、互いにきちんと話すようになりました。

大橋:20年経った今、改めて互いの関係性を考えると、何なんでしょうね。友だち、夫婦、兄弟、ビジネスパートナー…、全部に当てはまるし、全部違うし。20年経っても明確な答えは見出しにくい。それが現実なのかなとも思います。

ただ、間違いなく言えることは、音楽に関しては同じ方向を向いています。性格も違いますし、人間としてのタイプも違う。その二人がやっているユニットですけど、音楽に関してはリンクしている部分がすごく大きい。音楽に関しては、確実に、正確に、理解してくれている相棒だと思っています。

ユニットとしての幹がブレないというか。芸人さんのコンビなら「何を面白いと思うか」という部分でしょうし、僕たちの場合はそこが「音楽」なんです。ここってすごく単純なことなんですけど、すごく大切なことなんです。

常田:あと、関係性でもう一つあるとしたら“ライバル”でしょうね。(大橋から)提示されたものが良いものだったらすごくうれしい。でも、すごく悔しいんです。

だからこそ、こちらも「もっと良いものを作ってやろう」と思いますし、そのほとばしりみたいなものは全ての曲に入っていると思っています。

逆にいうと、それがなくなったら、もう一緒にやっている意味がない。それだったら大橋卓弥のソロプロジェクトでいいわけですしね。

大橋:まだまだ二人でやりたいことやアイデアはたくさんありますし、一つ一つ形にしていった先に30周年があってくれたらいいなと思います。

常田:ま、悔しいと思う時も多々ありますけど、逆に、こちらが全然アイデアが出ない時に良いものを出してくれると「助かったぁ~」となるのも事実です(笑)。ナニな話ですけど、純粋に「この人と組んで良かったなぁ」と思う時もあります。

なんとも複雑な関係なのかもしれませんけど、全て実際の思いばかりです。この二人だからこそ生まれるものを大切にしながら、これからも積み重ねをしていけたらなと思っています。

(撮影・中西正男)

■スキマスイッチ

1978年5月9日生まれの大橋卓弥と78年2月25日生まれの常田真太郎が99年に結成。ともに愛知県出身。2003年に「view」でメジャーデビュー。同年「全力少年」でNHK紅白歌合戦に初出場する。22年には「奏(かなで)」がBillboard JAPANチャートにおけるストリーミングの累計再生回数1億回を突破。先月、20周年記念ベストアルバム「POPMAN’S WORLD -Second-」をリリース。10周年を迎えた大阪・梅田のウメキタフロアとのコラボ企画も9月10日まで展開中。また20周年記念ライブツアーの集大成となる「POPMAN’S WORLD 2023 PREMIUM」を大阪城ホール(11月25日)、日本武道館(12月22日)で開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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