「アフリカ」が世界を支え始める日
先日、国連(UN)人口部は最新の「世界人口」について情報「世界人口推計2017年改訂版(PDF)」を公開した。それによれば、2100年までに世界人口は110億人を超えることが予想されるが、その多くはアフリカ諸国の人口増によるもの、ということだ。
国連は、発展途上国(the least developed countries、LDCs)として47カ国を指定しているが、そのうちの33カ国はアフリカにある。これらアフリカの発展途上諸国の人口は、現在の約10億人から2050年にはほぼ倍増の約19億人になり、さらに2100年には約32億人になるだろうと予測している。つまり、33カ国の人口は、2100年までに約3倍になるというわけだ。
ナイジェリアが世界第3位の人口大国に
アフリカの国々には、アンゴラ、ブルンジ、ニジェール、ソマリア、タンザニア連合共和国、ザンビア共和国などが含まれる。国連は、急激な人口増加に対し、諸国が経済的に発展すると同時に、それらの国の政府が貧困の根絶や格差是正、栄養失調や飢餓の克服、教育や保健衛生の整備などを実現させなければ大変なことになる、と警告する。
例えば、ナイジェリアもアフリカの発展途上国の一つだが、2050年までに同国の人口は3億人以上にふくれあがると予想されている。2050年には米国の人口を上回り、その時点で世界第3位の人口大国になる。イスラム過激派ボコ・ハラムの跳梁に悩むナイジェリア政府は、教育制度の整備に取り組んでいるが、特に高等教育に対する受け入れ準備が進んでいない。
国連は、2050年までに人口増大が集中する国を6つあげている。前述したナイジェリア、インド、コンゴ民主共和国、パキスタン、エチオピア、タンザニア連合共和国、米国、ウガンダ、インドネシアだ。この中でインドの人口は現在約13億4000万人とされ、中国の約14億1000万人よりも少ないが、2024年には中国と並び、2030年には約15億人、2050年には約16億6000万人になる、と予測している。中国は、2030年まで横ばいで、その後は緩やかな人口減少へ向かうようだ。
出生数の減少と高齢化
一方、世界的に平均出生数が大幅に減少している。1975年から1980年にかけての調査では、世界の1/4の地域で一人の女性は生涯に5人以上の子どもを産んでいた。しかし、2010年から2015年にこれが世界女性の約8%の割合に減り、2045年から2050年になると生涯に5人以上の子どもを産む女性は世界にほとんどいなくなる。その頃になると、世界の約69%の国や地域が平均2.1人未満の出生率になるだろう、と国連は予測している。
その反面、出生時からどれだけ長く生きられるかという平均余命のほうは、世界で大幅に向上している。2000年から2005年の調査から10年後の2010年から2015年の調査までの間に、世界の平均余命は3.6年長くなった。ちなみに、アフリカの平均余命は60.2年、アジア71.8年、中南米74.6年、ヨーロッパ77.2年、オセアニア77.9年、北アメリカ79.2年だ。
アフリカは「若い地域」で15歳未満の人口は約41%、15歳から24歳までの若者の人口は約19%(2017年)だが、世界では60歳以上の人口が年に約3%ずつ増加している。高齢者に対する若い世代の人数(65歳以上の人口に対する、それ以下、20歳から64歳の世代人口)で、アフリカは12.9人だ。一方、日本は2.1人となっている(米国やヨーロッパ諸国は約3.3人)。
世界は混沌へ向かうのか
国連は、将来こうした人口の不均衡が起きることで、人口移動への圧力が世界的に高まる、と予測する。難民問題が大きな課題になっているが、人口増加は必ず世界の不安定化の要因になる。発展途上国の経済的な自立と教育などのインフラ整備、戦争を含む治安悪化の防止などが絶対に必要だろう。
2050年までに世界人口は約22億人増加することが予測されているが、その半分以上、約13億人がアフリカで増える。この「若いアフリカ」が世界経済を支えるようになるか、それとも混乱と戦乱の根源になるか、世界規模での支援や対策の必要性が問われている。