松江藩主も愛した銘菓はふたつの食感「若草」はしゃりっとした衣ともっちりとした求肥が織り成す歴史の味
日本三大和菓子処のひとつ、島根県松江市。京都にほど近い奈良県や江戸幕府がひらかれた東京ではなく、島根県?という方もいらっしゃるかと思いますが、それにはきちんと理由があるのです。
大福やどら焼きといった、コンビニでも手に入るようなおやつとしての和菓子だけではなく、選りすぐりの茶器にてお茶をたてるお茶席などの茶の湯文化が栄えた地域では、見目麗しい数々の上生菓子やお干菓子の技術が発展していきました。島根県松江市も例外ではありません。松江藩七代藩主・松平治郷公(不昧公・ふまずこう)が十代より茶の湯を学習しはじめたということもあり、大名茶人ともいわれるほど。
そんな松平治郷公が愛したお茶菓子のひとつ「若草」。松江市の和菓子屋さんでも製造なさっているところが沢山あるのですが、今回は1890年創業「風流堂」さんの若草をご紹介。
ふわふわと柔らかな新芽のような衣を纏った求肥菓子。名は体を表すといいますが、まさにその言葉が相応しい風貌だと思うのです。そして独特のしゃりっ、とろっとした二つの食感のハーモニー。表面に塗されている若草色に染め上げられた寒梅粉とお砂糖をたっぷりと纏わせ、ふんわりと。ちなみに寒梅粉は焼きみじん粉ともいわれ、蒸しあげたお餅を色が付かないように焼き上げ粉末にしたもの。
一度アルファー化したものですので、寒梅粉をそのまま口に入れてじっとしていると、香ばしいおかきのような風味としっとりとした口当たりになってきます。それを白玉粉や餅粉を練り上げた求肥とあわせるのですが、口いっぱいに広がる様々な表情を見せてくれる糯米の旨味とふくよかな甘味に思わず目を閉じて、うんうん。と。
その後さらりと広がるお砂糖の甘味を感じたら、一口抹茶を口に含んで。ほろ苦く甘い、まさに新しい命が芽吹く春に相応しく、治郷公が愛したというのも納得です。
そういえば、かつては蓬の葉で染め上げていたのだとか。より一層大人の余韻に浸れるような和菓子だったのですね、きっと。
<風流堂・本店>
公式サイト(外部リンク)
島根県松江市寺町151
0852-21-3241
9時~18時
定休日 元旦