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“シンプル・イズ・ベスト”の権化。

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今回は『“シンプル・イズ・ベスト”の権化。』をテーマにお話ししようと思います。

1987年(昭和62年)、レプリカブームが最高潮だった頃に、ヤマハは少々変わった2ストスポーツモデルをリリースしました。

その名も『SDR』。

▲SDR〈1987/画像引用元:ヤマハ発動機〉
▲SDR〈1987/画像引用元:ヤマハ発動機〉

TZR250』や『FZR400』等、カリカリのレプリカモデルで当時のブームに真っ向勝負をしていたヤマハでしたが、その一方では、“公道で映える”スポーツモデルにも力を入れていたのです。

その代表的存在のひとつが、このSDRでした。

SDR最大の特徴は、“とにかくシンプル”ということ。

▲余計なモノは完全排除。ストイックなモデルだ
▲余計なモノは完全排除。ストイックなモデルだ

まるで極限まで減量したプロボクサーのような、超絶スリム&プレーンな造りとなっていました。

これは、コストカットなどのような後ろ向きな目的ではなく、当時際限無く激化していたバイクのハイスペック化に対するアンチテーゼとしての設計でした。

ヤマハは、

「行き過ぎた高性能化はやがてライダーをおいてけぼりにする。ハイグレードなパーツも、結局は性能を持て余すことが大半。無駄に着飾るのではなく、もっとライダーに寄り添ったバイクを作りたい」

と考えたのです。

▲見るからにコンパクトな2スト単気筒エンジン
▲見るからにコンパクトな2スト単気筒エンジン

こうして、“シンプルであること”を徹底的に突き詰め、乾燥重量105kgというオフロードバイク並に軽い車体を手に入れたSDRは、結果的にユーザーフレンドリーなだけでなく、タイトな峠道やミニサーキットでは格上モデルをも「カモれる」俊敏性を発揮することにもなり、この「何気なく速い」キャラクターが一部のスポーツバイク好きから支持を集めました。

しかし、当時はやはり“スペック至上主義”の時代。

TZRやFZRのようなレプリカモデルと比べると、どうしても見劣りしてしまうスペックだったSDRはさすがに大きな人気を得ることができず、わずか2年ほどでカタログ落ちすることになってしまいました。

SDRは機動力に優れるオートバイという乗り物の醍醐味をよりダイレクトに味わえるバイクだったにもかかわらず、レプリカブームに飲まれ消えてしまった不運なモデルだったと言わざるを得ないでしょう。

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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