「秘訣やコツ」を知って成功する「秘訣やコツ」とは?
「秘訣」や「コツ」はメディア関係者が取材するときに使う
コンサルタントという職業をしていると、いろいろな方から「秘訣」とか「コツ」を尋ねられることがあります。
「目標を達成する秘訣はなんですか?」
「業務を効率化するコツを教えてください」
「秘訣」とか「コツ」を知りたがる人は多いと言えます。もちろん私もその一人で、たとえばマラソン大会に出場する前でしたら、
「長い距離を走っても疲れないコツがあったら教えてほしい」
と思いますから。
「秘訣」とか「コツ」を知ろうとする場合、ざっくりとした質問になることがほとんどでしょう。もともとメディア関係者が取材をするときに使用する言葉であり、取材された側も、ざっくりとした答えをするのがお決まりになっています。たとえば「嵐」の大野さんに、
「ダンスをうまく踊るコツは何ですか?」
と質問したら、
「毎日練習することだと思います」
といった返答をするもの。反対に、
「軸をぶらさずに踊ることが重要で、そのために体幹筋を鍛えることをお勧めします。体幹筋には、体を動かす表層筋と、体を支える深層筋があり、それぞれの筋肉を意識しながらのトレーニングがいいですね。僕はドローインを意識したサイドクランチを欠かさずにやっています」
といった具体的な返答をすると、取材した側はビックリします。そもそも「秘訣」や「コツ」とは、何らかの問題解決策のうち極意や奥の手、誰も知らないような秘策を指します。
AKB48やSKE48などのプロデューサーで有名な秋元康さんに「アイデアを生み出す秘訣は何ですか?」と質問して「あえて考え込まないことです」という返答が戻ってくる。このようなやり取りだとニュース性は高いし、いかにも「秘訣っぽさ」を感じます。しかし、小気味よい答えを返す機転はなかなか働かないもの。ほとんどの場合「ざっくり質問」には「ざっくり答え」になってしまうものです。
一般人はメディア関係者のインタビューはやめよう
私は年間100回以上、講演やセミナーを実施しています。講演やセミナー終了後、質疑応答の時間をとることがあります。そのときに、まるでメディア関係者のような質問をする人がいます。
「部下育成の秘訣はありますか?」
「お客様の心をつかむ、何かコツみたいなものはありますか?」
このような大きな質問を投げかけられ、たとえ頑張って答えたとしても相手の真の疑問にヒットすることは難しいと言えます。社内でもこういうメディア関係者のようなインタビューをする人がいます。上司が、よくできる部下に対して、
「君はいつも営業成績がいい。契約をとる秘訣をみんなに教えてやってくれ」
と無茶ぶりをします。そのように言われて、
「朝、誰よりも早く出勤している人と、いかに仲良くなるかですね」
というようなウィットに富んだ返答ができる人はなかなかいません。取材に慣れた芸能人ではなければ、「お客様のことを常に考えることです」とか「秘訣なんてありません。当たり前のことを当たり前にやってるだけです」などと答えるものです。
問題は質問のクオリティです。粗く、大ざっぱな質問を改善しないことには、期待した返答は戻ってこないものです。メディア関係者ではなく、具体的な解決策を知りたい人は「大きな質問」をするのはやめましょう。
成功者でなければ「秘策」「極意」を知っても意味がない
そして何より大事なのは、ニュース性の高い「秘訣」や「コツ」に再現性がないということです。先述した、秋元康さんのアイデアを生み出すの秘訣が「考えないこと」だとして、あなたはそれを真似したいと思いますか?
「なるほど! さすが秋元康だな。私も素晴らしいアイデアを生み出すために、とにかく考えないようにするぞ」
となりますか。単純に記事を目にして「へ~」とか「ふーん」「興味深い」という感想を持つ人がほとんどだと思います。
ここで「守破離」の思想を思い出してみます。師から教わった「型」を守り、繰り返し実践して体得してから、その「型」を破り、最終的には「型」から離れて自由になることを「守・破・離」と呼びます。
秘訣は、秘策や極意、という意味ですから、秘訣を知って参考になる人は、「守破離」の思想からすると、少なくとも何らかの成功法則、ルールを守って実践し、ある程度の成功を収めている人、となるでしょう。さらに結果を求めたい。さらなる効果効率をアップさせるためにはどんな「秘訣」もしくは「コツ」があるのか、を知りたくなるものです。やるべきこともやらずに「秘訣」や「コツ」を知ろうとしてもうまくいきません。
整理すると、以下の2点です。
● 質問する側は、一定の成功を体験していないと参考にならない
● 質問される側に、ウィットに富んだ「秘策」「奥の手」などを答えられる人は少ない
これらのことを頭に入れたうえで、「秘訣やコツ」を知ろうとしてみることが大事ですね。