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【年度内五冠ロード】先手番・藤井聡太三冠(19)相掛かりで広瀬章人八段(34)と対戦 王将リーグ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月4日10時。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲藤井聡太三冠(19)-△広瀬章人八段(34)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局がおこなわれるのは将棋会館5階、特別対局室。先に入室したのは藤井三冠で、床の間を背にして、上座に着きます。髪を切ったのか、頭髪がすっきりしたようにも見えます。多忙の中、散髪をする時間を取るのも大変なのかもしれません。本局が終われば、次戦はいよいよ竜王戦七番勝負第1局です。

 少しして広瀬八段が現れ、下座にすわりました。

 駒を並べ始める際には、上位者の藤井三冠がまず「王将」の駒を手にして、所定の位置に据えます。続いて広瀬八段が「玉将」。以下交互に「大橋流」で駒を並べていきます。

 定刻10時。

「それでは時間になりましたので、藤井先生の先手番でお願いします」

 記録係の合図のあと、両者「お願いします」と対局前のあいさつをしながら、深く一礼。持ち時間4時間の対局が始まりました。

 藤井三冠はいつもの通り、紙コップに注がれたお茶を口にしたあと、ていねいにハンカチで手を拭き、初手、飛車先2筋の歩を突きました。

 広瀬八段は2010年、23歳で初タイトルの王位を獲得。その頃には振り飛車穴熊のスペシャリストとして知られ「振り穴王子」とも呼ばれました。しかし現在は居飛車党へとモデルチェンジを果たしています。本局2手目、広瀬八段は8筋、飛車の前の歩を一つ進め、居飛車で臨むことを明示しました。

 進んで本局の戦型は相掛かりへと進みました。藤井三冠は最近、先手番でこの戦型を多く採用しています。

 25手目、藤井三冠は角を一つ上がります。広瀬八段は9分考えて角交換しました。

 本日は大阪・関西将棋会館で新人王戦決勝三番勝負第1局▲古賀悠聖四段(20歳)-△伊藤匠四段(18歳)戦がおこなわれています。

 棋譜は公式ページをご覧ください。そちらもまた相掛かりに進んでいます。

 伊藤四段は現役最年少棋士です。ABEMAトーナメントではチーム藤井「最年少+1」のメンバーとして大活躍しました。

 新人王戦の参加資格は原則的に、26歳以下、六段以下です。

 藤井現三冠は2018年のトーナメント進行中に15歳で七段に昇段し、次期からは参加できないことが決定。16歳で迎えたラストチャンスで史上最年少優勝を果たし、新人王戦からは卒業となりました。

 現役で2番目に若い藤井三冠は、伊藤四段と同学年でまだ19歳なのですが、史上最年少で七段、八段、九段と昇段しています。藤井三冠が先行しすぎていてちょっとよくわからないことになっていますが、伊藤四段、古賀四段ともに有望すぎる新鋭。そう遠くない将来、両者が藤井三冠とタイトルを争う日も訪れるかもしれません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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